
PENTAX K100D+smc Takumar 50mm f1.4 + Close-up No.5 /smc Takumar 135mm f2.5
今日は昨日の続きで、森林公園の花アップ写真第二弾になる。今回は木に咲く花を中心に集めてみた。木の花は地面の野草以上に手強いので、最初から半分あきらめている。木の花まで全部覚えようとすると収拾がつかなくなる。似たものもけっこうあって、数が多い。野草の場合は同じものをあちこちで見る機会があるのに対して、木の花は単発だから反復記憶ができない苦しさがある。一度読んだ本の内容を全部覚えられる人の脳ならいざ知らず、私の脳はそんなふうにはできていない。
最初から言い訳がましくなったけど、とにかく見切り発車で出発して、分かる範囲で書いていこうと思う。私が分からないものに関しては各自の宿題とします。明日までに調べてくるよーに。
一枚目は、たぶん、コバノガマズミでいいんじゃないかと思う。これより葉が大きいガマズミという可能性がなくはないけど、一応コバノガマズミということにしておく。コバノガマズミは春の花で、ガマズミは初夏の花という違いがあるから、4月に見たらたぶんコバノガマズミだろう。
花と葉っぱだけを見るとアズキナシにも似ているものの、あれは高い木だから違う。他にもこういう白くてコチョコチョっとした花はたくさんあるから、花の姿だけで覚えていると見分けがつかなくなる。
コバノガマズミの分布は関東より西というから、東北地方の人には馴染みがないのかもしれない。狭い日本でも、気候が違えば咲く時期だけでなく花の種類そのものが違ってくる。当たり前だけど、考えると不思議な気もする。ガマズミは日本全国に分布するというから、面白い。
ガマズミは莢迷という字を当てるのだけど、名前の由来はよく分かっていないらしい。赤い実を神棚や仏壇への供え物にしたから神つ実でそれがなまったものとか、赤編に赤という字で「かが」と読んでかが之実でガマズミになったとか、いろいろな説がある。

ツツジもまた頭が痛い花だ。ツツジはツツジだろうと普通の人は言うだろうけど、ツツジを甘く見てはいけない。日本には50種類からのツツジがあって、園芸種は2,000種類以上もある奥深い花なのだ。
シャクナゲもツツジの一種だし、サツキもツツジだ。もうその時点で逃げ出したくなる。まずはヤマツツジとミツバツツジとに分かれ、サツキはヤマツツジの中の一種になる。ヤマツツジにはモチツツジ、コメツツジがあって、さらにその先に種類が分かれている。ね、絶望的でしょ?
とりあえず覚えておくこととしては、落葉樹がツツジで、常緑樹がシャクナゲということだ。あとは、ヤマツツジとミツバツツジとに大きく分けられるということくらいまでは押さえておきたい。その先はマニアの世界だ。踏み込むなら覚悟がいる。
園芸種の代表的なものとしては、キリシマツツジとか曙とかがあって、知らない間にどこかで見ている人も多いと思う。
上の写真はコバノミツバツツジだ。小さい葉っぱのミツバツツジということで、当然のことながら普通のミツバツツジもある。違いは葉の大きさというか小ささだ。並べてもらえば分かるけど、それぞれ単独だとよく分からない。
山や雑木林のようなところでたくさん咲いているのは、たいていコバノミツバツツジだ。
分布は静岡より西ということだから関東ではまったく見かけないのだろうか。

レンギョウは丈夫で育てやすいので、街路樹として植えられていることが多い。この時期鮮やかなこの黄色をよく目にする。公園や民家の庭先にも植えられている。
一般的には鮮やかな黄色のチョウセンレンギョウが多い。レモンイエローのようなレンギョウは、シナレンギョウだ。他にも数種類ある。
原産は中国で、日本には平安時代にはもう来ていたという。
漢字で書くと連翹で、これを音読みしてレンギョウとしたのだけど、本来この字はトモエソウやオトギリソウのことを指す言葉だった。日本で間違われて使われて、以来そのままになってしまった。
高村光太郎がこの花が好きだったというのはちょっと意外だ。光太郎の命日を連翹忌というのはそのためだ。太宰治は桃の花が好きだったから桜桃忌というのも有名な話。夏目漱石は木瓜(ボケ)が好きだった。

なんだか知らないけど、その年最初にヤマブキを見ると焦る。わっ、もうヤマブキの季節になってしまったんだ、と。春に咲く花で季語も春なのに、私の中では初夏をイメージさせる花だから。
八重のヤマブキを詠った太田道灌の歌はよく知られている(七重八重 花は咲けども 山吹の 実の一つだに なきぞ悲しき)。日本人に昔から愛された花で、万葉集などでも詠まれている。
高校のとき、友達のてっちゃんが1万円もするデザイナーズブランドのトレーナーを買うのを見て、そんなもの買うなら清水屋でトレーナー10枚買えるからやめた方がいいと言って止めたのを覚えている。あれはメンズバツかどこかの山吹色のトレーナーだった。ヤマブキはそのときの記憶とも結びついている。

この時期になる赤い実は珍しい。秋はこんな赤い実ばっかりで区別する気力も湧かないけど、春の赤い実はちょっと気になる存在だ。これは何の実だろう。
今のところ分からないので保留にする。

こういう黄色い花を見ると、反射的にヘビイチゴだろうと決めつけてそれ以上深く追求しないことにしている。もしかしたらミツバツチグリかもしれないし、キジムシロだったりするのかもしれないけど、深く考えてはいけない。まさか、オヘビイチゴじゃないよね? と、誰にともなく訊ねてみる。
これはたぶん、ヤブヘビイチゴでもなく、普通のヘビイチゴでいいと思うんだけど、どうだろう。
見分けるポイントは葉っぱだったりすることが多いから、スミレに限らず自信のないものは葉っぱまで含めて記録しておく必要がある。

ド近眼的な写真ばかり続いて疲れたので、たまには遠くを見たくなった。近くを見て遠くを見て、また近くを見て遠くを見て、視力回復トレーニングみたいに。
しかし、遠くを見てもまた分からない花が目に飛び込んでくる。近くを見ても分からず、遠くを見ても分からず、じっと目を閉じるとスミレが思い浮かぶなんて、花ノイローゼか。
湿地帯に咲いていたこの花は何だろう。初めて見る花だ。花じゃない? 遠くてよく見えなかった。写真でも分からない。ほかっておこう。
って、もしかして、ほかっておくって名古屋弁? そんなもん、ほかっとけ、みたいな使い方をする。ゴミを捨てるとかではなく、放り出しておくみたいな意味だ。放置する、無視するというニュアンスも含んでいる。

知ってる花に出会うとホッとする。高校に入学して同じ中学だったやつに会ったみたいに。
これはコバノミツバツツジ。アップ写真とはずいぶん印象が違う。街路樹に植えられているツツジとも感じが違うことが分かると思う。

ヤグルマギクの青は、自然が生み出したとは思えないような青色だ。人工的に作り出された色みたいに見える。
この花の青は奇跡的な青で、バラと同じアントシアニン色素を持ちながら、鉄とマグネシウムとカルシウム、そしてフラボンという有機物が結びついて青になっているという。青いバラが作り出せないのは、バラはこの結合ができないからだそうだ。ただ、このヤグルマギクの構造が解明されたことが青いバラのヒントとなって、それに近いものが近年作り出されつつある。サントリーが作った青いバラは、まだまだうっすら青い灰色という程度だったけど、もしかしたら近い将来、このヤグルマギクと同じくらい青いバラが登場するかもしれない。ちょっと楽しみなような、青いバラは不可能のままであって欲しいようなだ。
ヨーロッパの麦畑で当たり前に咲く雑草だったものが、あまりにもきれいな青なのでやがて園芸種として育てられるようになった。今はピンクや白など、様々なヤグルマギクがある。
ノヴァーリスの小説『青い花』はこの花がモデルだったようだ。ドイツの国花にもなっている。
日本に入ってきたのは江戸時代の末で、矢車というのは鯉のぼりの上で回っているあれのことだ。
矢車草とも呼ばれることがあるけど、ヤグルマソウという別の花があるので、間違えないようにしたい。

大阪造幣局の通り抜けの桜がそろそろ満開を迎えたとのことだ。あれはサトザクラだからこんなに遅い。森林公園の中や外でもサトザクラがよく咲いていた。
ソメイヨシノの魅力には遠く及ばないものの、アップにしたときの写真写りはいい。濃いめのピンクのヒラヒラが華やかだ。
サトザクラは交配によって作り出された桜の総称で、たくさんの品種がある。でも今日のところはそういう話はもうやめておこう。読むのも疲れてしまっただろうし、私もくたびれた。

遠くの月でも見て目と心を休めよう。
手前は散った桜だ。ソメイヨシノじゃない。ヤマザクラだろうか。まだ少し花がついていた。

今回は135mmとC-PLフィルターの組み合わせの試し撮りというテーマもあったのだけど、それはあまり撮れなかった。最後に一枚だけ載せておこう。場所を選べば水面の映り込み写真として面白いものが撮れるかもしれない。
花の名前や区別ばかり気にしていると花の美しさの本質を見落とすことになる。それでは本末転倒だ。とはいえ、気になり出すと気になるもので、分からないと胸のモヤモヤが消えずに残って気持ち悪い。分かるようになったからといって誰に自慢できるというわけでもないけど、自分自身のためにすっきりしたい。パッと見て、スッと分かって、ササッと流せるようになればどんなにいいか。分かるようで分からなくて思い煩うのが嫌だ。だから、もっと勉強して分かるようになりたい。
野草に興味を持って撮るようになって、今年で5シーズン目ということになるだろうか。そう考えるとあまり勉強が進んでいるとは言えない。毎年しっかり覚えていっていれば、今頃はスミレでもある程度の区別くらいはつていたはずだ。
ただ、一足飛びにはいかないから、毎年少しずつ知識を積み重ねていくしかない。季節が春から初夏に変わる頃までには、少なくとも去年の自分を上回っていたい。
図鑑を見ているだけではなかなか覚えられるものではないから、やっぱり写真に撮るのが一番だ。たくさん撮って、帰ってきて調べて、一つずつ覚えていこう。私のザル記憶ではたくさんこぼれてしまうだろうけど、こうしてブログに書いておけばデータベースになる。
次の花目標は藤だ。4月の終わりにはもう咲き始める。油断しているとゴールデンウィークのうやむやに飲み込まれてしまう。5月になればカキツバタ、バラと続いていく。あらためて今自分が春の中にいることを実感するここ最近なのであった。
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