
PENTAX K100D+smc Takumar 50mm f1.4 + Close-up No.5
カメラ関係の小物類を放り込んである棚の中を探っていたら、Close-up No.5レンズが出てきた。そういえばだいぶ前に買ったんだったな。全然使わなかったからすっかり忘れていた。寄れないTakumar 50mm f1.4をなんとかマクロ的に使えないかと思ったのだ。けど、No.5は寄れすぎてしまって自由度が低いから、すぐに使わなくなってしまったんだった。No.3くらいにしておけばよかった。
部屋の中で使ってみると、倍率は低くて大写しはできないものの、かなり寄れることを再発見した。もう一回試してみて、使えそうになければ手放してしまおうと思い、こいつをつけて森林公園へ行ってきた。
桜に気を取られている間に春がすっかり深まっていた。今が野草の花盛りだ。これから5月にかけてが一番賑やかになる。暑くなるとまた花は減っていく。
今日のテーマはクローズアップだ。上も前も見ず、下ばかり見て歩く。このときの私の後ろ姿を見たら、落とし物を探しているか、ものすごく落ち込んでいる人に見えただろう。独り言をつぶやいていたら危ない人だ。
そんなわけで今日は、花のクローズアップ写真をお届けします。普段は気づかずに見過ごしている足下の春は、こんなふうになってますよということで。立ち止まり、しゃがまないと見えないものもある。
一枚目は、カラスノエンドウにとまるナナホシテントウだ。
テントウムシも昔に比べると見なくなった。生活圏の中で空き地や草むらなどがなくなったことで普段見かけなくなっただけで、いるところには今でも普通にいるから、数はそんなに減ってないのかもしれない。
カラスノエンドウは、この時期あちこちでよく咲いている。道ばたの街路樹の下などという条件の悪いところでもよく咲く。
完全な雑草扱いで、見ても気にとめる人は少ないと思う。エンドウ豆に似た実は食べられるそうだけど、とって食べる人もめったにいないだろう。
エンドウは分かるとしてカラスはどこから来たんだと思ったら、これに似てもっと小さいスズメノエンドウというのがあって、それより大きいからカラスになったんだとか。かなり安易なネーミングだ。それならハトエンドウの方がよかった。

このあたりの野草は、毎年春に再会したとき、ああ、これなんだっけなぁと思う。名前が思い出せなくて、調べて、ああ、そうだった、そうだったと覚え直して、また来年になると忘れているという繰り返しだ。
これはたぶん、トキワハゼだ。いつもムラサキサギゴケと迷う。花の形はよく似ていて、ムラサキサギゴケの方がもっと全体的に紫色をしている。
ムラサキサギゴケは4、5月しか咲かないのに対して、トキワハゼは4月から11月くらいまで咲いている。漢字で書くと常磐爆というのだけど、この常磐は長い期間という意味で、爆は籾付きの米を炒って爆ぜた形に似ているところから来ているそうだ。現代人からすると分かりづらいネーミングだ。

こっちがムラサキサギゴケでいいと思うんだけど、自信がない。
花の上唇が反り返るという特徴を持っている。この写真ではちょっと分かりづらい。
シロバナのものはただのサギゴケと呼ぶから、ムラサキサギゴケはその紫版ということだ。コケというのは、別にコケ類とかではなく、地表をびっちり覆う様子をコケにたとえたのだろう。
いずれにしても、花の形はあまりサギには似ていないと思う。

白い小さな野草の区別も苦手だ。似てるのが多くて見分けるのが難しい。
バンザイした先に手が付いていたらぺんぺん草のナズナで、手がなければタネツケバナというふうに覚えている。他にも似たやつがいたとしたら私がお手上げだ。
タチタネツケバナとか、ミチタネツケバナとか、オオバタネツケバナとかの類似種もあるというけど、そこまで見分けられるようになりたいとは思わない。
この花が咲いてきたら、そろそろ種籾を水につけて田植えの準備を始める時期が来たことを意味するというところから、タネツケバナと名づけられたそうだ。

またやっかいなのにぶつかった。おまえはジロボウエンゴサクかムラサキケマンか、そのどっちででもないのか言ってみろ。名を名乗れ、このやろうと思う。ヤマエンゴサクではあるまいな。
まあたぶん、ジロボウエンゴサクでいいだろうということにしておく。
延胡索は、地下の茎を中国では薬用に使っていてその漢方名で、スミレを太郎坊というのに対して伊勢地方の子供たちが次郎坊と呼んでいたところから来ているらしい。花の後ろのくいっと曲がっている部分を引っ掛けて、二人で引っ張り合いをする遊びをしていたんだとか。

こんなところでヒトリシズカと出会えるとは思ってなかったので、ちょっと嬉しかった。初めて見たのは、おととしの松平郷だった。あそこはヒトリどこか集団で咲いていて逆に風情がなかったから、これくらいの方が名前と合っている。ただ、残念ながら花の状態はよくなかった。本来はもっと白いブラシのようにきれいに咲く花だ。
シズカは、義経の愛人の静御前から来ている。静御前が舞う姿にたとえたのだろう。

地味な黄色い花のハハコグサ。目立たない雑草だから、これが春の七草の一つ、御形(おぎょう)だと知る人は少ないかもしれない。若い茎や葉を食べる。
古くは草餅の材料にされていて、明治時代に入ってからヨモギが使われるようになっていった。
漢字は母子草を当てるものの、昔は御形だったわけで、白いうぶ毛に覆われていることからほほけ立つ草でホホケグサと呼ばれ、それがなまってハハコグサになったという説がある。
あるいは、白い毛で覆われる様子が母親が子供に暖かい服を着せるのをイメージさせるから母子草になったなんて説もある。
チチコグサもあるけど、もっと地味な姿をしている。

湿地はこの花を見ないと春が始まった気がしない。好きな花は何ですかと問われたときすぐに思い浮かぶのがこのハルリンドウだ。何よりも、非常に冴えた独特のブルーがいい。まだ枯れ色が残る湿地に爽やかなブルーがよく映えるのだ。
南門近くの湿地にたくさん咲いていた。今日は時間がなくて木道の方には行けなかったのだけど、あっちにも咲いていただろうか。岩本橋近くの湿地では見かけなかった。
これを見るともう、春というより初夏を予感させる。湿地もいよいよ野草シーズン開幕だ。海上の森にも行かないといけない。

喜んでハルリンドウをたくさん撮ったからもう一枚。
今日は夕方まで日差しがあったので、よく花を開いていた。日が陰るとすぐに花を閉じてしまう気むずかし屋さんでもある。
今日は白花のハルリンドウも見つけた。海上の森にはピンク色のハルリンドウも咲いているそうだ。まだ見たことはない。今年は見られるだろうか。

マツバウンランは北アメリカから来た帰化植物で、ここ数年で急速に勢力を伸ばした感がある。少し前まではあまり一般的な花ではなくて、私が持ってる2001年発行の山渓「野に咲く花」他、どのポケット図鑑にも載ってない。今や、公園の片隅や河原など、他の野草が育たないような悪条件のところでも生えているから、新しい図鑑には載っていることだろう。
最初に発見されたのは60年ほど前の京都で、中部から関東に進出してきたのは、けっこう最近のことのようだ。
もともと日本にはウンラン(海蘭)という花があって、それに似ていて、茎が松の葉のように細いからマツバウンランと名づけられた。
一見すると雄しべも雌しべもない不思議な形をしているけど、白く盛り上がった部分の中に隠れている。

黄色い花の見分けも苦手だ。白も苦手で黄色も苦手なら何が得意なんだといわれると、得意なものはない。基本的に全部苦手意識がある。それだけ野草の区別はやっかいということだ。
これは葉っぱが少ないからニガナだろうか。葉っぱが多ければジシバリのはずだ。でも半端に多いのはハナニガナだったりヤマニガナだったりするから油断はならない。ヤクシソウとか、コオニタビラコとか、似てるやつもけっこうある。
名前は、食べると苦い味がするからだそうだ。花の名前を味で決めて欲しくなかった。

できれば見なかったことにして通り過ぎたいスミレ。今日のテーマはクローズアップだったから、見分けは保留とする。
スミレの場合、家に帰ってから調べるためには葉っぱまでちゃんと撮っておく必要がある。花の色や形だけでは見分けられるものではない。花の後ろの部分とか、葉の裏とかまで撮っておくと、見分ける手がかりとなる。

少し離れて撮っても、やっぱり分からないものは分からない。マルバスミレかなとも思いつつ、ツボスミレかもしれないし、全然違っている可能性もある。アオイスミレでもないか。
スミレは毎年春に頭を悩ませる存在だから、いつか克服してスミレを見ても目をそらさずに済むスミレに強い人になりたいと思う。山渓ハンディ図鑑の「日本のスミレ」を買うしかないか。2,000円という痛みを伴わないといつまで経っても覚えられない気がする。覚えたスミレのページは食ってしまうくらいの意気込みが必要だ。
今日のところは、地面に生える野草を集めてみた。木に咲く花も撮ってきたので、春のクローズアップ第二弾もある。
クローズアップレンズは、まずまず使えるとも言えるし、使いづらいとも言える。被写体との距離感が決まってしまうから、自由度が低くなる。タムロン90mmのように近づいてよし離れてよしというわけにはいかない。
使い方としては、50mmレンズでスナップを基本としつつ、道ばたの花なんかを撮りたいときに付けて撮るといった感じだろうか。普通のレンズのように荷物にはならないから、持ち歩くときに苦にはならない。
久しぶりにマクロ中心に撮って、けっこう新鮮だった。たまには面白いものだ。もう少しすると虫も増えてくるから、花と絡めて撮ればもっと楽しくなる。
桜が終わってのんびり場合じゃない。季節はどんどん先へ行ってしまうから、遅れずについていかなくては。明日にでも桃を見に行って、次はもう藤の季節が近づいている。花は待ったなしだ。ちょっと気持ちが焦る。
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