
夜空に浮かぶ十三夜の月の前を、ちぎれ雲が次々と横切っていく。そのとき雲にも色があることを知った。雲自身の色なのか、月の光の色なのか、何かの反射光なのかは分からないけど。
満月が近づいてくると心が少し波立つような浮き立つような感じがする。満月を見てそうなることもあれば、そういう感覚に気づいて空を見上げると満月だったということもある。月が人体に与える影響は決して小さくないと私は信じている。あんな大きな海でさえ月(と太陽)の力で潮ちたり干いたりするのだから、人の中でも同じような影響があるに違いない。満月のときは出血すると止まりにくくなるともいう。
出産が増えるのも満月のときだし、事故や事件、自殺が起きやすいという統計もある。切り裂きジャックやボストンの絞殺魔なども満月や新月の夜に多くの事件を起こしてるし、阪神淡路大震災も満月だった。人間の血も引力に引っ張られて頭に血が上り、海だけじゃなく地面も持ち上げられて地震や思いがけない事故が起こったりする。
だから私は、満月のときはなるべく慎重に行動するようにしている。車の運転は飛ばさず割り込まれても怒らず、人の多いところは寄りつかず、海へも行かない。海へ行くとウミガメと一緒に産卵してしまう恐れがあるから。
……。
どこまで本気なんだか。なんにしても、狼男にも月光仮面のおじさんにもなれそうにないことは確かだ。
満月はかなり明るいように感じる。都会ではそれほどでもないけど、田舎の暗いところへ行くと煌々とした月明かりという言葉がなるほどと思うほど明るく感じるものだ。しかし、実際の明るさは0.2ルクスくらいしかなく、とても本を読めるような明るさではない。消えかけた小さなろうそくの灯りくらいだから。頑張れば写真集くらいは見えるかもしれないけど、月明かりの下で写真集を見てニヤついてるところを人に見られると、それがたとえヨン様の写真集であったとしても社会的地位を大きく落とすことになりかねないので気をつけたい。インリン・オブ・ジョイトイだとしたら致命傷だ。
星の明るさを表す等級でいうと、満月はマイナス13等級となる。等級は数字が小さいほど明るいので、一等星のの約40万倍の明るさに相当する。太陽はマイナス27等級で、金星がマイナス4.6等級になる。
日本には月の呼び方がたくさんある。昔から日本人は月に対する思い入れが強かったのだろう。
新月(1日目)、繊月(2日目)、三日月(3日目)、上弦の月(7日目)、十三夜月(13日目)、小望月(14日目)、満月(15日目)、十六夜(16日目)、立待月(17日目)、居待月(18日目)、寝待月(19日目)、更待月(20日目)、下弦の月(23日目)、有明月(26日目)、三十日月(30日目)。
この他にもいろんな別名がある。満月の十五夜もそうだ。これ以上は長くなるので以下省略。ただ書くのが面倒になっただけなんじゃないのか、などと疑ってはいけない。
外国で月はどう呼ばれているかというと、ラテン語の「luna」が元になっているところが多い。フランス語の「lune」、イタリア語の「luna」、スペイン語の「luna」、ポルトガル語の「lua」と、ヨーロッパ圏はどこもよく似ている。ドイツだけが英語の「moon」からきた「mond」で、ロシア語も「ルゥナー」だ(表記できず)。中国語は「月球」または「月亮」で、単に月だけだと通じないらしい。
他の国もいろいろ調べたかったんだけど面倒だったので(ついに認めてしまった面倒だと)、続きは各自でお願いします。調べがついたら私にも教えてください。
きれいな月が出てる夜は、月光浴をしながら少しゆっくり歩いてうちに帰ろう。中原中也にならって湖に舟でこぎ出すのもいいだろう。満月の夜にサーフィンするのも楽しそうだ(サーフィンなんてやったこともないけど)。イルカに乗った少年になるというのもありだ。
夜空を見上げて月を見ている私たち。同じように向こうでもこちらを見上げていたりするんだろうか。太陽に照らされて輝いてる地球を見て、彼らは何を思い、何を話してるのか。向こうでは地球がどんなふうに詠われているんだろう?
いつか遠い未来で、月地対抗歌合戦が開催されたら素敵だ。お互いを詠った歌で勝負するのだ。地球が負けることはないと思うけど、向こうもけっこうやるんだろうか。なかなかに興味深い対決になりそうだ。
ただし、司会をみのもんたにするのだけはやめておこう。