白いヤツは人知れずローカルな池で量産型になっていた

野鳥(Wild bird)
ミコアイサ-1

OLYMPUS E-510+Super Takumar 300mm f4



 ひょっとしたら今年は来ているかもしれない。おととし初めての遭遇に興奮し、去年はついに再会を果たせなかった白いヤツ。今年も一度は空振りに終わった。でも今度こそ。
 淡い期待を抱いて向かった近所の雨池。あ、あれはもしかして!? 白いゴミが浮いてるだけ? いやいや、間違いない、白いヤツだ。静かに近づいて確認してみると、紛れもなくミコアイサのオスがそこに浮いていた。おー、やったね。ホントにいたんだ。よかった。
 ここ数年の雨池は、夏場に浮き草が大量発生して水面が見えないくらいになっていたから、生態系が崩れてしまったのではないかと心配していた。光が入らずに水中の生物にも悪影響が出てしまったんじゃないかと。秋になって水温が下がると浮き草は枯れてしまったけど、もうミコアイサは戻ってこないのではないかと半ばあきらめていた。それがまた戻ってくれたとは嬉しい限りだ。それにしてもどうしてもミコアイサはこの池を選ぶのだろう。
 ユーラシア大陸北部で繁殖した彼らは、冬になると暖かさを求めて南へ下る。日本には冬にやって来て越冬していく。北海道では一部が繁殖するそうだ。
 その数は他のカモと違ってかなり少ない。少し古い調査資料によると、シーズン中に確認できたのは日本全国で2,500羽ほどだったそうだ。それが何故、こんな無名の小さな池を選ぶのか、その理由がよく分からない。他にもカモがたくさん集まる池はいくらでもあるのに。名古屋では牧野ヶ池が有名で、尾張旭の森林公園にもいるらしい。けど、そうめったに見られるものではなく、一般的な知名度はかなり低い。実物を見たことがある人はほとんどいないんじゃないかと思う。もちろん、鳥の人は別にしてだ。
 雨池での報告例は数年前からちょくちょくあるにはあった。ただ、今回更に驚いたのがその数だ。ざっと見たところ、8羽は確実にいた。もしかしたらもう少しいたかもしれない。こんなに一度に見たのは私も初めてだ。おととしは2羽か3羽くらいだった。
 雨池は他のカモには人気がないところだから、ミコアイサにとっては静かに過ごせていい環境なのだろうか。

ミコアイサ-2

 かなり用心深い鳥で、なかなか接近させてくれない。池のちょうど中央付近にいることが多くて、少しでも距離を詰めるとさりげなくすーっと遠ざかっていく。露骨に飛んだり逃げたりはしない。でも、しっかりこちらを見ていて、距離をしっかり保とうとする。
 フォーサーズの2倍換算600mmレンズでもここまで近づくのがやっとだった。できればデジスコを使いたいところだけど、この池で鳥撮りをしている人は皆無なので、持っていても撮れるかどうか自信が持てない。周回コースをたくさんの人が歩いたり走ったり犬の散歩をしたりしているから、写真を撮ってるだけでかなり恥ずかしい思いをするのに。何撮ってるんだこの人みたいな目で見られまくる。鳥に姿を悟られないようにする前に、通行人から身を隠したいくらいだ。迷彩のテントに潜んで鳥撮りなんてしてたら通報されてしまうだろう。

ミコアイサ-3

 まったくアップ写真が撮れなかったんで、少しトリミングした。
 これくらい大きく見えれば、このカモがパンダガモと呼ばれるゆえんが分かってもらえるだろう。白黒ツートンの姿は、鳥の人の間ではパンダガモの方が通りがいい。
 これはオスで、メスはもっと地味な姿をしている。下の写真がそうだ。ただ、冬の始めに渡ってきたばかりの頃は、オスもメスと同じような姿をしているから見分けが難しい。冬が深まるにつれて白黒の羽に生えかわっていく。

ミコアイサ-4

 ミコアイサの魅力はなんといっても白黒のオスなので、メスのことはついおそろかになりがちだ。オスにばかり目がいって、メスを撮るのを忘れていた。帰ってきてから写真を確認したところ、まともに撮れてるメス写真が一枚もなかった。ありがちなことだ。
 手ぶれ写真の中からなんとか救い出したのが上の一枚だ。ちょっとボケていて分かりづらいけど、一番左がメスになる。
 ミコアイサは通常女性上位でメスの数の方が多いというのだけど、雨池の場合は逆になっていた。オスが7羽くらいでメスが1羽か2羽という比率だった。
 普通のカモとは逆に、ミコアイサはメスが先に渡ってきて、遅れてオスがやってくる。そして、オスが先に帰って行って、あとからメスが渡っていく。メスの方にいろいろな決定権があるのかもしれない。日本では小さな群れで行動する。
 体長は40センチちょっとで、ミコアイサの名前は、白い姿を巫女に見立ててつけられた。アイサの意味はいくつかの説があって、秋が去った頃に飛んでくるところから来ているというのが一般的な解釈だ。
 他のカモと違って、ほとんど鳴かないというのも一つの特徴となっている。まれにククッと小さく鳴くらしい。
 他に仲間はおらず、この一種でカモ目カモ科ミコアイサ属を形成する。
 潜水ガモで、甲殻類や貝、魚などを食べる動物性だ。長く潜水することができて、潜水範囲も広い。いったん潜ると思いがけないほど遠くで顔を出す。

ミコアイサ-5

 今回は曇り空の日没前ということで、光の少ない暗めの写真になってしまった。せめて最後に映り込みの彩りがある写真を載せておこう。
 ミコアイサが渡っていく3月まであとひと月。それまでにもう一度撮りに行きたいと思っている。次はもっと条件のいいときを選ぼう。そのときもいてくれるだろうか。まったくいないときもあるというから、どこか他にも飛んでいっているようだ。運が良くないと会えないのは残念ではあるけど、会えたときの喜びも大きい。
 近くの方は一度見にいってみてください。白いヤツは意外なところに出没するのです。
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