
FUJIFILM FinePix S2 pro+Nikkor 35mm f2D
これまた変わった魚だなぁ。って、海女さんじゃん。いきなり何の前触れもなくこの水槽の前に出たら驚く。どうして海女さんが魚たちと一緒に泳いでいるんだと。でもこれは、ただ泳いでいるわけではない。魚のエサやりをショーにしているのだ。1時間に一回くらいという頻度で海女さんによる餌付けショーというのが行われているのだった。
海女さんというと二見というイメージがあった。二見浦での海女さんショーは名物の一つとなっていて、私も子供の頃に見た。伊勢志摩ではどこでも海女さんが海に潜ってアワビなんかを獲っているのだろう。だから驚くことはない。
志摩マリンランドの海女さんは専属なのか、ヘルプなのか、交代制なのか、そのあたりの詳しい事情まではよく分からない。けっこう大変そうだけど、一般的な海女さんの仕事と比べたら、一日に5回だか6回くらい水槽でエサやりをするのは楽かもしれない。かといって引退したおばさま海女ではショー向きとはいえない。このときの女の人もわりと若手のようだった。案外、水族館の飼育員が海女さんに扮しているだけだったりするのか。水槽の中からときどきこっちに向かって手を振ってくれるのでちょっと照れる。

回遊水槽の中では、ブリやマダイ、カンパチなんかがぐるぐる止まることなく泳ぎ続けている。サメまでいるけど、きっとおとなしい性格のやつなのだろう。凶暴なやつなら海女さんがピンチだ。サメvs海女さんのショーなど誰も見たくない。コブラとマングースの決闘じゃないんだから。
エサは何種類かあるようで、魚によって与えるものを変えていた。ショーとはいえ、魚の健康管理を考えなくてはいけないわけだから、適当にやっていいというわけではないだろう。ちゃんとまんべんなく行き渡るように気遣う必要がある。やっぱり仕事の種類としては海女さんよりも飼育員のやることだ。

みんなはこんなふうな感じでベンチに座って見学している。ガラス面に張り付いて見ていると海女さんとの距離が近すぎて、お互いに恥ずかしい。
光の加減もあるのだろうけど、回遊水槽はやっぱりきれいなもんだ。ぐるぐる泳いでる魚は泳ぐことに飽きそうなものだけど、魚はどんなものだと思っているのだろう。どこまで泳いでも辿り着けないような感覚はあるのだろうか。

何しろこのときはお客さんが少なくて、人が入った写真を撮るチャンスがほとんどなかった。これは数少ないシャッターチャンスの一つだった。
女の子二人組でけっこう盛り上がっていて、ちょっとうらやましかった。やっぱり水族館は一人で行くと寂しい。動物円以上に一人向きのスポットではないとあらためて思い知る。

こちらは親子二人組。冬休みということで子供連れのお客さんが何組かいた。長期休みではない期間の平日はこれ以上に少ないはずで、一体どんな感じなのだろうと思う。
入館料の1,250円は高いと思うけど、これ以上安くしてもお客は増えないだろうし、これでも赤字なのかもしれない。近鉄株主優待券の招待券が100円以下でたくさん出回っているので志摩マリンランドとしてはますます苦しいところだ。

熱帯魚が泳ぐ水槽も少しだけある。これらは入り口付近にあって、中に進むほど地味になっていく。
館内は螺旋状になっていて、それはアンモナイトの貝をイメージして作られているんだそうだ。でも、そんなものは入ってしまえば分からないし、上から見られる場所もないので、ほとんど意味はない。スペースの有効利用としては理にかなっていそうだ。

地味水槽を過ぎて奥へ進んでいくと、この水族館最大の売りであるマンボウがようやく現れる。おー、マンボウか! と驚く人はあまりいないと思う。マンボウってそんなにインパクトのある魚じゃないし。むしろコミカルな風貌が笑いを誘って脱力感に襲われる。マンボウはマンボウで何の不満があるのか、常に口を尖らせて何か言いたげだ。まったくとぼけたやつだ。
マンボウの体はまん丸かと思っていたら、思いのほか細身だ。横から見ると四角くて太っているようだけど、正面から見ると妙に平べったい。なんかおかしい。
きょとんとした目と口はフグの仲間であることを表している。でも何故かこんな平べったい体になってしまった。おちょぼ口はエサを捕るのに向かなくて、それも水族館には向かない理由の一つとされている。
マンボウは人工飼育が難しい魚で、だから全国的にも少なくて、志摩マリンランドが自慢したくなる気持ちは分かる。5頭くらいいただろうか。エイとの混泳は悪くないんだろうか。
メスは一度に3億個の卵を産むらしい。産みっぱなしなのでほとんどが海に漂って他の魚に食べられてしまう。生き残るためには大いなる幸運が重なる必要がある。自然界で稚魚の姿は誰も見たことがないとか、マンボウの生態はいろいろ分からないことが多いという。

この時期の特別展示として、今年の干支にちなんで「ネズミコーナー」というのが設けられていた。ネズミの名が付いた魚やら、ネズミに似てるやつやらが強引に集められている。淡水の熱帯魚であるミッキーマウスプラティなんかも応援として呼ばれていた。確かに一応ネズミといえなくもない。
壁には凧も飾られていてお正月気分を演出していた。新年に伊勢志摩へ観光に行った人を呼び寄せることに成功しただろうか。福田首相や小沢一郎もここに寄っていって欲しかった。

館内の一角には、クレーンゲームなどを置いたゲームコーナーがある。子供たちに楽しんでもらおうという気持ちは理解できるけど、この発想は昭和だ。機関車の乗り物とか、古いゲーム機に昭和の名残を感じる。
これだけのスペースがあればもっと水族館らしい展示水槽が置けるのに。こんな使い方はもったいない。水族館へ行ってゲームをしようと考える人はほとんどいないと思うし、子供のことを思うなら、タッチ水槽でも置く方がよほど有意義だ。

これまた中途半端な娯楽施設だ。いまどきデパートの屋上でもこんなものは置いてない。名古屋港のシートレインランドでは見たけど、あそこは例外だ。
まあ、懐かしいといえば懐かしいから、お父さんやお母さんの方が喜びそうだ。
このあたりのちょっとピントがずれているあたりも、志摩マリンランドの愛すべきところといえるのかもしれない。

外のペンギンプールの近くに、干潟を再現したところがあった。どれどれ何がいるのかなとのぞき込んだら、「ただいま冬眠中」というプレートが出ていた。なるほど、そういうこともあるか。みんな砂の中に潜っているようで、何一つ見ることができない。

志摩マリンランドを楽しむためには、まず好意的である必要がある。ここに最新式の水族館と同程度のクオリティを求めてはいけない。イルカのショーもないし、天井の上をペンギンが飛ぶなんてこともない。ここはじっくり噛みしめてしみじみとした味わいがある水族館だ。地味生物の充実度はなかなかのもので、他では見られないようなやつもいる。そういうのを楽しめる人なら、ここまで足を伸ばす価値があると思う。小ネタをたたみかけて笑わせるコメディ作品のような水族館という言い方もできるかもしれない。
三重県のこのあたりには、全国区のメジャーな鳥羽水族館と二見シーパラダイスもあるから、それらをはしごして見比べてみるのも面白そうだ。私も二見シーパラダイスはまだ行ったことがないから、いつか機会を見つけて行きたいと思っている。鳥羽水族館も。
そんなこんなの志摩マリンランド紹介でした。機会があれば一度行ってみてくださいと言いたいところだけど、くれぐれも期待しすぎないようにと念を押しておきます。
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