溢れかえる人混みと小さな奇跡の2年目神宮外苑いちょう並木

東京(Tokyo)
2年目の神宮外苑-1

PENTAX K100D+SIGMA 17-35mm f2.8-4



 うわっ、なんだこりゃ。それが私たちの第一声だった。
 思い起こせば去年のこの日、12月8日の朝7時、神宮外苑のいちょう並木から我々の東京巡りが始まった。ちょうど一年後の同じ日、同じ場所に舞い戻った私たちを待ち受けていたのは、お祭り会場と化した神宮外苑だった。いやはや、びっくり。人はいるだろうとは思ったけど、まさかこれほどとは想像してなかった。今になってみれば、あの日のこの場所は奇跡のように無人のいちょう並木だったのだ。
 それは平日の朝7時だったからだろう。この日は土曜日の午後3時、そりゃあまあ人が多いに決まっている。東京を侮っちゃいけない。
 入り口からすでに石焼き芋の屋台カーが何台も並び、はとバスまで入り口に横付けしている。無数のカップルに親子連れ、老夫婦に女の子たち。ちびっこはあたりを駆け回り、落ち葉を集めてばらまき、犬の散歩人たちが犬談義に道をふさぐ。駐車場の入り口では警備員がスピーカーでがなり立てている。一周年の感慨も何もあったもんじゃなかった。
 それでもせっかく来たのだからとなんとか気を取り直して、奥まで歩いてみることにする。人波に飲み込まれながら。

2年目の神宮外苑-2

 今年は紅葉も全体的に遅かったけど、イチョウも例外ではない。去年の写真と見比べてみると、明らかに今年の方が残っている葉っぱが多い。去年はかなり落ちていて、多くの枝が顔を出していた。その分しっかりイチョウの絨毯ができていてよかったのに、今年の見頃はまだこれからだ。
 ただ、気候が原因なのか、色づきがよくない。本来はもっと明るい黄色になるはずが、なんとなく黄土色のように濁っていて鮮やかさが足りない。夕方近くで曇り空だったこともあるにしても、本来のイチョウの葉色ではないように感じた。秋口に暖かい日が続いたのが色づきの悪さにつながったのだろうか。紅葉は寒暖の差が激しい年ほどきれいに染まる。

2年目の神宮外苑-3

 まだまだ葉の落ちる量が少ないのと、夕方のこの時間でこの人出では踏み荒らされ、蹴散らされてしまって黄色の絨毯は望めない。行くならやはり早朝に限る。前回は深夜バスで朝っぱらに東京に着いたから朝一見物が実現したのだった。
 神宮外苑のいちょう並木については、去年の12月9日の記事(日付は12月10日)で詳しく書いたので繰り返さない。興味のある方は読んでみてください。私もあらためて読み返してみたけど、あの頃は今よりずっと一所懸命にいろいろ調べて力を入れて書いていたんだとあらためて思った。写真の腕はともかく、文章の内容に関しては今の私は去年の私に負けている。もっと頑張らねばと思った。

2年目の神宮外苑-4

 噴水前まで行くと、ずっこけそうなくらいにすごいことになっている。再びなんじゃこりゃと私たちは顔を見合わせて笑うことになった。
 周囲を屋台がぐるりと取り囲み、完全にお祭りムードに包まれている。その屋台の顔ぶれもとりとめがない。どういう基準で選定したのか謎なのだけど、山形名産やら京風たこ焼きやら長崎、新潟、埼玉などの物産展の様相を呈している。肝心の東京名物は見あたらない。ミスタードーナツの出張店があったけど、あれの本社はダスキンで大阪だ。何故か風林火山の旗まで立っていた。あの屋台のチョイスがよく分からなかった。

2年目の神宮外苑-6

 どれも観光地価格で高い中、私たちが選んだのは山口代表の「昭ちゃんコロッケ」だった。NHKのコンクールで金賞を受賞したとかで日本一のコロッケを自称していたのに惹かれた。200円というのは冷静に考えるとコロッケとしては安くないだけど、こういうところでは冷静な判断力は失われがちだ。
 何を持ってして日本一とするかの判断は難しいところだけど、肉コロッケで柔らかくて美味しかったので満足だった。日が落ちかけて寒くなってきたところでコロッケの温かさがおなかに染みた。ちょっとおすすめしたいと思ったら、いちょう祭りは12月9日で終わってしまったらしい。山口まで行ったときはぜひ食べてみてください、昭ちゃんコロッケ。山口県でどれくらいの知名度なのかはまったく不明だけど。

2年目の神宮外苑-5

 絵画館の前にもこんな無粋な看板を立てられてしまって、どうにもならない。どう考えてもここに設置しちゃあ駄目なことは分かりそうなものだ。左右は屋台に阻まれてフェンスに近づくことさえできない。絵画館を撮るのを楽しみにしてた人もいただろうに。
 今日からはこの看板も取り外されただろうから、ここ数日の朝っぱらが神宮外苑いちょう並木の一番の見頃ということになるかもしれない。

2年目の神宮外苑-7

 感傷に浸るまもなく日が落ちてあたりが暗くなり始めた。帰りは反対側を歩いて帰ることにした。こちらを歩くのは初めてだ。去年は噴水広場から神宮球場の方に歩いて抜けた。
 夕方が近づいても人混み具合は衰えず、勤め帰りの人も参戦して賑わいは夜まで続いたのだろう。
 写真を撮るには日没後は厳しい。シャッタースピードが上がらずに歩く人がブレてくる。

2年目の神宮外苑-8

 メインストリートにはイチョウの落ち葉もまばらだけど、少し中に入るとけっこう落ちていていい感じだ。やっぱりイチョウの黄葉の楽しみの半分以上は黄色の絨毯にある。これがあるから絵になるのだ。ただイチョウ並木があるだけでは面白みがない。モミジの紅葉はグラデーションの変化なども楽しめるけど、イチョウの黄色はそれだけでは単調だ。

2年目の神宮外苑-9

 夕方のカフェ前。歩く人の像が流れ始める。三脚があれば、もっとスローシャッターにして、移動する人を線のようにすると面白い写真になる。背景の動きを止めて前を横切る人の影だけが動く写真は、状況によってはいい写真になる。たとえば駅の構内や交差点などによく使われる。

2年目の神宮外苑-10

 信号が青に変わって横断歩道を渡り始めた人が真ん中で立ち止まって、一斉にカメラを構えて写真を撮り始める姿がおかしかった。みんな考えることは同じだ。ここからなら一番奥の絵画館まで一直線に見渡せる。車が走っている間は撮ることができないから、信号を渡るときしかチャンスがない。望遠レンズを使って圧縮効果を狙っても面白そうだ。
 逆の目線から言えば、車の信号待ちで車の中からいちょう並木を撮る人を撮るのも面白い。

2年目の神宮外苑-11

 名古屋に戻ってきてから、イチョウの葉を拾ってくるのを忘れたことに気がついた。去年のブログの最後の締めくくりに、ゲーテの話とイチョウの葉のことを書いた。イチョウの葉はもともと二枚だったのが一枚になったのか、一枚だったのが二枚に分かれたのだろうかとゲーテは若い恋人にあてて詩を送った。そして、私も次に訪れたときはイチョウの葉を拾ってこようと思っていたのに、すっかり忘れていた。
 家に帰ってバッグの中身を出して整理をしていたら、底に一枚のイチョウの葉を見つけた。ああ、なんて粋なことをするんだと思う。嘘みたいにできすぎた演出だけど、小さな奇跡は確かに起こった。ハラハラとイチョウが舞い落ちる並木を歩いている途中でヒラリと一枚の葉がバッグの中に入ったのだろう。まったくの偶然だけど、こういうことがあるからこの世界は面白い。
 このイチョウの葉は大事な本の間に挟んでおこう。二度と読み返さないような作品がいい。ずっとあとになって見つかったとき、そういえばこれはあのときのと思い出せるように。
 去年と今年は違う年だ。私自身も同じではいられない。変わらないものなど何もないし、思い出さえも変質してしまう。けど、いつだって12月8日は忘れずにいたいと思う。また来年、ここへ戻っていこう。一日いちにちを重ねていくことが未来につながっていくのだと信じて。
 そんな2年目の神宮外苑いちょう並木だったのでした。
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コメント
  • 2007/12/12 00:26
    あぁ、やはりこの週末は大変な人ごみだったんですね。仰るとおり状況さえ許せば、今週平日の早朝なんかが一番いいのでしょう。
    私も去年訪れたので確認してみたら、11月29日に行っています。この頃は落ち葉はまだほとんどなく、黄:緑=7:3くらいで、それはそれで綺麗なグラデーションができていました。
    で、同じく広場の喧騒には閉口して、神宮球場の方を通って新宿御苑に抜けました。新宿御苑にはイチョウはほとんどありませんが、有料な分人は少なめで落ち着けます。散歩するにもちょうどいい距離ですので、3年目の上京には是非。
  • たまたまベストタイミングだった1年目
    2007/12/12 06:33
    ★QingZuiさん

     こんにちは。
     神宮外苑いちょう並木は、想像以上の激混みでした。(^^;
     いちょう祭り最後の週末と見頃が重なったからでしょうね。
     それでも、落ち葉の絨毯重視なら見頃はもう少し先になるのかも。
     イチョウの黄葉も見頃を見極めるのがけっこう難しいですね。

     一年目は何の予備知識もなく、たまたま朝っぱらに行っていいタイミングだったのでした。
     なかなかああいうタイミングには巡り会えないだろうなぁ。
     あの場所はテレビドラマでもしょっちゅう出てきますね。
     今日も「暴れん坊ママ」で出てきてました。まだ色づき終わる前のロケだったみたいだけど。

     去年は私もいちょう並木から新宿御苑に流れていったんですよ。
     けど、時間が早すぎてまだ開園してませんでした。(^^;
     その後、何回か行こうとしたんだけど、結局いまだ行けずじまいです。
     あそこは里桜の種類が充実してるようだから、来年の4月終わりくらいに行けたらいいなと思ってます。
  • 2007/12/13 08:27
    おはようございます。
    やはり東京は凄い人なんですね。
    先週出張に行った友人が「あんなとこには住めん」と言ってました。

    最後の1枚、バックの中のいちょうの葉がまたいいですね。
  • 人混みも慣れるもの
    2007/12/14 05:57
    ★みかんさん

     こんにちは。

     東京はそうですね、どこへ行っても人がいっぱいです。
     休みの日に人の集まるところへのこのこ出向いている私にも原因があるんですけどね。(^^;
     東京といえども、いない時間帯にいないところでは他の街と同じです。人っ子一人いないところもたくさんあるし。
     住んでしまえばたぶん大丈夫。人間、たいていのことには慣れますからね。私もこの一年月に一度くらい通ったおかげでだいぶ慣れました。
     あれだけ人が多いと、没個人となって逆に気が楽ってこともあるのかなぁとも思ったり。
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