ただでさえ昭和の岩屋堂で再び昭和の観光ブームを呼び起こせ - 現身日和 【うつせみびより】

ただでさえ昭和の岩屋堂で再び昭和の観光ブームを呼び起こせ

岩屋堂昭和風景-1

Canon EOS 20D+Canon EF50mm f1.8II / SIGMA 18-55mm f3.5-5.6



 岩屋堂は昭和である。そう断言してしまってもかまわない。昭和で時を止めたまま、なし崩し的になじめない平成の中で生きている。いや、そんなことはないぞ、これでもずいぶんモダンになったんだと岩屋堂で暮らす人は言うかもしれない。でも、名古屋近郊の観光地でいまだにこれだけ昭和の香りをたたえている場所は他にない。ただ古いというのではなく、昔懐かしい観光地の風情が色濃いのだ。その飾らないレトロ感が岩屋堂の素敵なところだということを岩屋堂自身は自覚してないだろうけど。
 今日はそんな岩屋堂の昭和っぷりを中心に紹介したいと思う。まずその前に岩屋堂について軽く復習してみよう。
 奈良時代の725年、病気になった聖武天皇の回復を祈るため、僧の行基がここの洞窟内で三体の仏像を彫った。どうしてこの場所を選んだのかは定かではない。その後聖武天皇の病気は無事治り、彫った仏像のうちの一体、薬師瑠璃光如来を本尊として岩屋山薬師堂が建立された。今も行基がこもっていたとされる洞窟はそのまま残っている。岩屋堂というのはその洞窟のことで、一般的にはそこを中心とするこのあたり一体の呼び名ともなっている。
 上の写真は岩屋堂の入り口にある浄源寺というお寺さんだ。行基が彫った内の一体である白衣観世音菩薩を本尊として1430年に建てられた。ここの紅葉は趣があっていい。春先にはセリバオウレンが咲く。
 時代は一気に昭和に飛ぶ。その間、岩屋堂がどういう変遷をたどっていったのかはよく知らない。おそらくは紅葉のちょっとした名所として観光に訪れる人がそれなりにいたのだろう。愛知高原国定公園に指定されのはいつなのだろう。たぶん戦後だとは思うのだけど、そのへんも詳しいところもよく分からない。昭和の時代はなかなかの賑わいを見せたのだろうと思う。現在もそのときの名残がいくつか見られるから。
 復習はこれくらいにして、そろそろ奥に向かって歩いていくとしよう。タイムトンネルを通って昭和へ。

岩屋堂昭和風景-2

 いきなり昭和の洗礼の右ストレートが飛んでくる。心の準備ができてないのでよけようがない。左ジャブ抜きでノーモーションが右がテンプルにヒットして、一瞬クラッとする。とても現役の観光地とは思えない荒れっぷりだ。最初に見たときは、思わず、すごいなと小さくつぶやいてしまったほどだ。昭和から平成になるのを拒んでそのまま古い時代に殉じて朽ちていったのだろう。写真の建物は店舗兼住居だったのだと思う。かつてはこのあたりがメインストリートだったに違いない。
 道路にしても階段にしても、もはや化粧直ししようという意志はまるで感じられない。田舎で暮らす一人住まいの老人宅のようだ。どこから持ってきたのか、まるで統一感のないベンチも、履き古したジーンズでも座るのがためらわれる。
 今更リニューアルしても客を呼べそうもないから、このまま放置しておくしかないという判断なのだろう。建物だけ取り壊してしまったら、それはそれで違和感がある。むしろ22世紀までこのままでいて欲しい。

岩屋堂昭和風景-3

 ここで暮らす人の中には、昭和のままではいけないという強い決意を持って平成へと踏み出そうという勇気ある人もいる。このように新しい店もできていたりして、少し安心する。夏休みと秋の紅葉だけで一年分稼げるのかと心配にもなるけど、なんとか頑張って欲しいところだ。まさか、前の鳥原川でうなぎは獲れないだろう。自力で食材を調達できるならなんとかなるかもしれない。

岩屋堂昭和風景-4

 私が行くときはいつも閉まっている屋台。夏と秋だけの臨時開店なのだろう。店には「準備中」という張り紙があった。長い準備になりそうだ。
 前に見たときより小綺麗になっていたような気もする。お品書きなんかを新しく書き直したのだろうか。氷の旗も真新しい。この夏新調したか。
 どこを見ても完全なハンドメイドと分かる屋台は、風情というべきか、温もりと表現すべきか。細かいところを見ていくと、苦労が忍ばれてちょっと微笑ましい。
 それにしても昭和だなぁ。

岩屋堂昭和風景-5

 夏の間だけオープンするプールもある。確か無料だったはずだ。
 これもシーズンオフしか見てないので、いつも水がすごい色をしている。深緑色で、顕微鏡で見たらいろんな生物が見えそうだ。息継ぎのときに飲んだら25メートル先でおなかが痛くなりそう。
 でも、夏シーズンの写真を見るときれいな水色をしてるから大丈夫だ。大丈夫じゃなければ困る。

岩屋堂昭和風景-6

 思いがけないものを発見してのけぞった。おでん缶自販機がこんなところに!? 秋葉原名物であそこしかないかと思ったら、全国展開だったのか。いや、でも、ここ以外では見たことがない。かなり珍しいんじゃないかと思うけどどうなんだろう。
 それにしてもなんでここでおでん缶という選択だったのだろう。ここのオンシーズンは夏と秋だ。逆に言えばそれ以外の時期に訪れる人はめったにない。夏場におでんは厳しい。冷たいってことはないだろうから、やっぱり熱々なのだろう。夏のおでんは6畳一間で関取と同居するくらいうっとうしい。試しに買ってみればよかったなと思ったのは、岩屋堂をあとにしてからだった。衝撃が大きすぎて、その場で買って食べてみようなどという発想は出なかった。証拠写真を抑えることに気を取られて。
 もしかすると、人が少なくなる冬場に人を呼ぶための起死回生として放った一手だったのだろうか。そろそろ寒くなってきたから岩屋堂でおでん缶買いに行こうぜ、なんていう会話が交わされることを夢見たか。今はおでんを買いたければコンビニに売ってる時代なにに。あるいは昭和の方が売れた可能性がある。お汁粉缶よりも、コーンポタージュ缶よりも魅力的に思えたはずだ。おでん缶自販機は遅れてきたヒーローと言えるかもしれない。
 次に行ったら動揺せず買って食べてみよう。

岩屋堂昭和風景-7

 遠くから離れて見ると風情がある朱色のくれないばしだけど、近づくほどに安さがバレてしまう。神社仏閣のような本物感はどこにもない。これもここの人がペンキを買ってきて手で塗ったおそれがある。ちゃんと業者に発注しただろうか。ペンキ塗りが趣味の私に頼んでもらえれば喜んで塗り直したい。
 昭和三十八と書かれてあるから、ここが公園として整備されたのもそのあたりだったのだろう。とすれば、賑わいのピークは、昭和40年代から50年代にかけてだろうか。あの頃はまだみんなそれほど遠くへ気軽には行けなかったから、こういう近場の行楽地が人気だった。たった30年や40年でここまで時代が変わってしまうとは、あの頃は想像できなかったに違いない。

岩屋堂昭和風景-8

 奥の方へ行くと、旅館が並んでいる。ここもかつての賑わいの名残だ。半分は営業してないようだけど、残りはまだ開いてるように見える。そのへんの境目もよく分からない。ただ、マイクロバスなどもとまってるから、小規模の社員旅行などもあるのだろうか。個人や家族で、シーズンオフに好きこのんでここに泊まりがけ来ようという人はめったにいない気がする。それとも、静かで落ち着ける場所として私の知らないところで密かな人気を呼んでいるのだろうか。
 夏場はバンガローも営業しているようだ。そのあたりも昔なら子供会などで利用されただろうけど、今はどうだろう。マスの釣り堀など、一通りの施設は整ってはいるものの、現状どこまで稼働していてどこから停止してるのか見極めが付かない。一日中うたた寝をしている老人のようだ。

岩屋堂昭和風景-9

 滞在1時間半の間に5人の人を見た。駐車場の車の方に戻っていった3人組のおじさまおばさまたちは何をしに来ていたのだろう。観光というふうでもなかったし、山登りでもなかった。カメラも持っていなかったから、泊まりか食事か。あとの2人組もなんとなく分かりづらかった。向こうは向こうで一人でカメラを持ってうろついている私のことを不審に思っていただろう。森や散策路などですれ違うときは自然と挨拶したり会釈したりするものだけど、こういうひなびた観光地で出会うとお互いにどう反応していいのか戸惑う。何気なくすれ違うには他に人影がなさすぎて不自然だし、声を掛け合うには仲間意識が持てない同士なので照れくささもある。結果、探り合いをしつつ見て見ぬふりのようになってしまう。
 こんな岩屋堂だけど、実は年間の観光客は40万人を超えるんだそうだ。本当だろうか。信じられない。私は年に5回くらい行くけど、全部あわせても30人も見かけない。夏と紅葉のシーズンは私が思っている以上の混雑を見せるのだろう。一度そんな岩屋堂の姿を見てみたら、私の認識も大きく変わることになるかもしれない。
 それでも、今のところ、私の中の岩屋堂は純昭和だ。純喫茶よりも昭和的とさえ言える。こうなったら居直って、もっと昭和色を濃くしてみたらどうだろう。お土産物屋でペナントやキーホルダーを売って、店先ではグリーンティーを置くのだ。当然、絵はがきやしおりも必須アイテムだろう。事情が許すなら木刀も揃えたい。
 この時代だからこそ、あえて岩屋堂昭和化計画でいこうではないか。逆転の発想で。いまさら中途半端に取り繕っても魅力的な観光地にはならない。おでん缶は方向性としては間違ってると思う。今、昭和ブームは来ている。ブームに乗り遅れるな岩屋堂。平成なんてどこ吹く風と、岩屋堂はもっと岩屋堂らしくあって欲しい。私はこれからも岩屋堂を応援していきたい。
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コメント
非公開コメント

>左ジャブ抜きでノーモーションが右がテンプルにヒット

これはききますねwww

2007-09-17 19:44 | from ただとき | Edit

しっかりガードを固めて

★ただときさん

 岩屋堂というところは、何の予備知識もなくシーズンオフに行くと、脳が揺れます(笑)。
 クラッときて、そのまま二発目を食うと危険なので、しっかり踏ん張らないといけません。
 もし行くようなことがあれば、しっかりガードを固めてから行ってくださいね。(^^)

2007-09-18 06:46 | from オオタ | Edit

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