人工で天然で真面目で笑わせる、その名も吉良ワイキキビーチ - 現身日和 【うつせみびより】

人工で天然で真面目で笑わせる、その名も吉良ワイキキビーチ

吉良ワイキキビーチ




 はるばる来たぜワイキキビーチ。家から車で1時間半くらいかかっただろうか。しかし、最近はワイキキもずいぶん近くなったもんだなぁ、車で来られるようになったとは。
 察しのいい方はすでに気づいてると思うけど、ここはオアフ島のホノルルではない。ワイキキはワイキキでも、愛知県の吉良町にある吉良ワイキキビーチだ。その海岸を一目見て、誰もがその大胆なネーミングに驚く。まさかこれがワイキキか、と。
 最初にそういう話が出たとき、周りは説得して止めるべきではなかったのか。町長、さすがにそれはちょっとまずいのではないでしょうかと。しかしこれがかなり本気のようで、勢い余ってハワイ州まで飛んで名前の使用許可を取ってきてしまったというからびっくりだ。心の広いハワイアンにも感心する。
 そんなわけでここは正々堂々、本物のワイキキビーチなのである。誰がなんと言おうと、吉良町とハワイがそう言うんだから間違いない。ウワサによると、吉良町の職員は役場で全員アロハシャツを着ているらしい。もはや似てるとか似てないとかそういう次元の話ではないのだ。椰子の木だって、ダイヤモンドヘッド風の小山だって、海の家だってある。見れば見るほどワイキキ風ではないか。ホノルルに海の家があるかどうかは知らないけれど。



吉良海岸

 今回、7、8年ぶりの再訪となった。前回訪れたのは確か5月だった。愛知県にあるワイキキビーチというものはどんなものか、自分の目で確かめたくて。
 断片的に覚えてる光景もあり、こんなふうだったかなという戸惑いもありつつ、懐かしい気持ちで吉良ワイキキビーチに降り立った。そうそう、ここ、ここ。海岸に立てばあのときの記憶が鮮やかによみがえる。昔に比べるといくぶん荒れたような印象を受けたのは、夏の終わりだったからだろうか。前はもう少し砂浜がきれいだったような記憶がある。
 吉良ワイキキビーチという名前は、吉良町が主張してるだけで実は正式名称ではない。だから、地図には載ってない。地図上では宮崎海水浴場と恵比寿海水浴場と出てる海岸が吉良ワイキキビーチということになる。
 沖合に見えている島は、無人島の梶島(かじしま)だ。春の潮干狩りシーズンのときだけ、漁船に乗せてもらって行けるらしい(もろもろ込みで2,300円)。海岸から1キロくらいだから、遠泳ができる人なら泳げなくはないかもしれない。
 9月の日曜日、ポツリ、ポツリと人が訪れていた。釣り人を別にすればバーベキューをする人などをあわせてざっと30人くらいだったろうか。ここは8月の海水浴シーズンでも芋洗い状態にはならないそうだから、海でゆっくりしたければここはよさそうだ。夏休み期間中に内海の海水浴場なんて行くとひどい目に遭う。



海に入る母子

 この日も30度を超える暑い日だったけど、さすがに泳いでる人はいないだろうと思ったら、ツワモノのお母さんとちびっこが海の中に入っていた。すごい親子だ。雲が多くて太陽が出たり隠れたりだったので、海日和というほどでもなかった。寒くなかったのだろうか。
 それから、海に入っていたのを感心したのはもう一つ理由があった。それが下の写真だ。



海岸のあおさ

 あおさというんだろうか。緑色の海草がグロテスクなほど海岸に打ち上げられていた。えげつない量だ。とても海水浴場の海岸風景ではない。ここは地形的に奥まったところで周りを半分囲うように仕切ってあるから、漂流物がたまりやすいのだろう。木片やゴミなども相当浮かんでいた。いくら暑くてもこの海に入るには勇気がいる。平成13年には環境省選定「日本の水浴場88選」に選ばれたというのは、にわかには信じられない。私が前に訪れたときは、こんなことはなかった。あれは5月で、今は9月ということもあるのだろうか。それとも、この前の台風の影響なのか。
 これだけの量を味噌汁に入れて食べようと思えば、毎食食べても3年くらいかかりそうだ。これがホントにあおさなら食べられるはずだけど、そんなまっとうな食材ではないのかもしれない。地元民も拾ってる様子はない。



海岸のホテル

 吉良ワイキキビーチの背後には、居丈高な感じで巨大なリゾートホテル三河湾リゾートリンクスがそびえ立っている。この風景にはそぐわないほど威風堂々と。ワイキキビーチとセットで観光の目玉として建設したのだろう。
 しかし、このホテル、見た目とは裏腹に意外と庶民向けのようだ。1泊2食付きで13,000円~と高級価格ではない。民宿でも8,000円くらいはするから、せっかくだからこちらにしておこうかという家族も多そうだ。あまり高いと泊まる人もないだろうから、こんなものか。けど、800名宿泊可能という規模がすごい。夏のピーク時でもとても埋まるような気はしないけどどうなんだろう。
 吉良には天然温泉も湧いてるから、そちらのお客が目当てなのかもしれない。他には、吉良観光ホテル竜宮ホテル、旅館、民宿などが十数軒ほどある。観光の呼び物がほとんどない吉良町にとって、ここの発展に期待をかけてる部分が大きいのだと思う。忠臣蔵の敵役で有名な吉良上野介の地元といっても観光資源といえるようなものは少ない。
 それらを考えると、ワイキキビーチのネーミングは苦し紛れでも成功だったというべきだろう。もしここが元の宮崎海水浴場という名前のままだったら、私のような興味本位で遊びに来る人間が今よりもっと少なかったに違いないから。少々笑われてもそれで人が来てくれるならそれでいいと、そこまで計算しての名前だったとしたら、なかなかにしたたかだ。



海岸の二人

 夏の終わりの海岸にたたずむオヤジが二人。これはこれでちょっと絵になる光景だった。



浜辺のカップル

 オヤジさん二人も悪くなかったけど、海といえばやっぱりカップルだ。特に夕暮れ時がいい。
 今の季節は太陽が山の向こうに沈んでしまうから、海に沈む夕陽を見ることはできないのが残念だ。5月はここから見て右端の方の海に沈んでいく太陽を見た。夕焼けシーズンの秋はどこへ沈むのだろう。
 この場所は、メジャーすぎずマイナーすぎず、年間を通して釣り人がいるから、ふらりとやって来るにはいいところかもしれない。いつ行っても賑やかすぎず寂しすぎない。
 ただ、鉄道の駅から歩くには遠すぎて、バスもないのが難点だ。


夕暮れのマリーナ

 夕陽を見るために、隣接する漁港の方に歩いて移動した。夕暮れ時の港の風情も味がある。一日の終わりというものを素直に実感できる。街で暮らしていると、暗くなればすぐに灯りがともって一日はまだまだこれから残り半分だなんて思ってしまう。
 こちらでは釣り人がたくさんいた。釣り上げてるところも見かけたし、そこそこ釣れるのだろうか。
 夕陽はこのあと厚い雲に隠れてしまって、夕焼け空を見ることはできなかった。それでも、太陽が見えなくなるまでこの風景を見ていた。



イルミネーション

 日が暮れると、とても中途半端なイルミネーションが輝き始める。実物はもう少し華やかなのだけど、この時期に海岸沿いで見るイルミネーションは、なんとなく間が抜けていて脱力感を誘う。メキシコあたりのモーテルみたいだ。メキシコのモーテルなんて泊まったことがないけど、そんなイメージだった。
 駐車場の方にももっと派手なイルミネーションがあって、頑張ってるんだなぁと思わせる。努力の方向性はそちらでいいのだろうかと言いたくなるのは余計なお世話というものだ。帰る前に心を和ませてくれることは確かなのだし。
 吉良ワイキキビーチは作られた人工の海岸でありながら、その演出は計算ではない天然のよさがある。決して笑わせようとかそんなことを思っているわけではない。
 今回の再訪で吉良ワイキキビーチを前よりも好きになった。あともう一、二回行けば虜になってしまうかもしれない。なんといっても面白い。当たり前すぎて面白みのない海水浴場よりもずっと楽しい。いろんなところに意外性があって退屈させない。去年はウミガメが産卵に訪れたんだそうだ。たぶん、海道に迷ったウミガメだろうけど。
 最近では毎年ハワイアンフェスティバルというのが行われて、年に一度、全国からフラダンス愛好家が集まってフラを踊りまくるのだとか。
 吉良ワイキキビーチは、いろんな意味でオススメします。彼氏はウクレレを持って、彼女はフラダンスのスタイルで、夕陽をバックに「憧れのハワイ航路」を歌い踊って欲しいと思う。
 
【アクセス】
 ・名鉄蒲郡線「三河鳥羽駅」下車。徒歩約30分。
 ・タクシー利用の場合は、「吉良吉田駅」で下車。車で約10分。
 ・無料駐車場 あり(夏シーズンは1日800円)
 
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