
人は他人の褒め言葉によって縛られる。
予言や占いのように。
たとえば、そのワンピース似合うねとあなたが何気なく言ったとする。
それを聞いた彼女は、このワンピースを次も着るべきかやめておくべきか迷うことになる。
似合うといいうなら着た方がいいのか、あまり続けて着ると相手に合わせすぎているようで嫌だし、あえて着ないようにすべきなのか、などと。
一度聞いた言葉は聞かなかった以前には戻れない。褒め言葉を踏まえた上でどうするか決めなくてはいけなくなる。
子供の頃から可愛い可愛いと言われ続けると、可愛い前提で生きなければいけないと思い込む。
冴えない男が珍しく誉められたりすると、その相手に固執するということもある。
積極的に誉めた方がいいという考え方もあるけど、私は賛同できない。
無責任に誉めることは相手のためにならないこともあるからだ。
特に日本人は言霊思想があるからその傾向が強い。
言葉は支配と被支配を生み出す。
たとえ我が子であっても誉めるときは慎重にした方がいい。
傷とは違う形で褒め言葉は一生つきまとうことになる。