
わたしが赤い公園(オフィシャルサイト)のことを知ったとき、赤い公園はすでに解散した後だった。
今年2021年5月28日に中野サンプラザで行われたライブが最後となった。
最終シングルは『オレンジ/pray』で、発表されたのは2020年11月25日。そのときはもう、リーダーの津野米咲(つのまいさ)はこの世にいなかった。
2020年10月18日。津野米咲、急逝。享年29。自殺だったとされる。
赤い公園『オレンジ』
新規開拓のためにYouTubeを見回っていたとき、初めて当たったのがこの曲、『オレンジ』だった。最終シングルとなった一曲だ。
最初の印象は、ボーカルの押し出しが弱い、というものだった。
そのときは特に引っかかることなく、曲も最後まで聴かずに飛ばしてしまった。
赤い公園というのは変わったバンド名だなと思ったくらいで。
赤い公園 『pray』
赤い公園との次の出会いは、最終シングルのもう一曲、『pray』だった。
これはけっこういい曲だなと思ってお気に入りリストに入れた。
そのとき、曲を聴きながらYouTubeのコメントを読むと、ラストライブとか、津野がどうしたとか、涙がといったコメントが並んでいて、ん? どういうことだ? と興味を惹かれた。
そこでネットを検索したところ、解散したことや、バンドの中心だった津野米咲が亡くなったことなどを知ったのだった。
もうひとつ分かったことは、ボーカルはもともと違うメンバーだったということだ。
赤い公園 『今更』
もともとボーカルだった佐藤千明が脱退したのが2017年8月31日。
それ以前の古い曲の中で印象的だったのが『今更』だった。
これを聴いたとき、なるほど、この声だよねと納得した。津野米咲が作る楽曲に合うのはこのボーカルに違いないと確信した。
佐藤千明脱退後に加入した元アイドルの石野理子が好きという人もたくさんいるだろうけど、赤い公園のボーカルはやっぱり佐藤千明だと思う。
赤い公園はリーダーでほぼすべての楽曲を作る津野米咲のバンドといっていいのだけど、実は津野米咲が作ったバンドではなく、津野米咲は後から加入したメンバーだった。
高校の軽音学部だったベースの藤本ひかりとドラムスの歌川菜穂(うたがわなお)が軽音学部の仲間と作った4人組のバンドだったのが、ボーカルが抜けたため、藤本が同級生で友達だった佐藤千明に声を掛けてボーカルとして入ることになり(身長が173センチあってバドミントン部だった)、更にギターも抜けたため、一学年上の津野米咲が加わることとなったという経緯がある。
津野米咲が加入して以降は、ほぼすべての作詞作曲やプロデュースを津野米咲が担当することになる。
デビュー前から赤い公園の存在は業界関係者の間で話題となり、レコード会社の争奪戦となった。
2012年、EMIミュージック・ジャパンからメジャーデビュー。
一般の知名度よりも業界での評価が高いバンドという言い方ができるかもしれない。
佐藤千明は脱退理由として、津野米咲が要求するボーカル像と自分の中のイメージのギャップが埋めがたいものになったとインタビューで答えている。
赤い公園 『恋と嘘』
津野米咲が作る楽曲はかなり幅広い。作風を決めない自由な楽曲が自分の特徴だと津野米咲は言っている。
SMAPの『joy!!』は津野米咲が楽曲提供したものだ。
赤い公園について少し知った上であらためて『pray』を聴いてみると、心にぐっとくるものがある。
MVの中で津野米咲はひとりだけ車から降りてこない。レストラン(喫茶店?)では、こちらを振り向いて何か言いたげな表情をする。
「それじゃあ、またね。君の旅がどうか美しくありますように」
この曲を作ったときにはもう心は決まっていたんじゃないだろうか。
自分が先に旅立つのではなく、自分はもうここに残って仲間やリスナーが未来へ向かう旅立ちを見送るような気持ちだったかもしれない。
この曲を歌う石野理子はとてもいい。新規加入したときは17歳だった石野理子も20歳になった。自分で申し訳なく思っていたとも語っているけど、津野米咲もその成長を感じていたはずだ。
しかし、津野米咲がいない赤い公園はすでに赤い公園ではなくなっていた。解散は必然だったのだろう。
チアキ 『traffic jam』
2018年に脱退した佐藤千明はその後、チアキ名義で少しだけ活動している。
この声はやっぱり好きだなと思う。
解散したメンバーもまだ20代だ。音楽を続けていればまたどこかで再会できるだろう。
今はYouTubeで昔の映像を見ることができる。ありがたくも嬉しいことだけど、ときどき切なくもある。
2015.12.07 プレミアMelodiX! 赤い公園
2020.04.21 プレミアMelodiX! 赤い公園
津野米咲の訃報を受けた各番組
亡くなった後にその人のことを思うことが無駄だとは思わない。思い出すことが一番の供養になると私は信じている。
曲はいつまでも消えずに残る。