
今回の勝手に発表シリーズは(最近間隔が短くなっている)、「紹介したい実力派アーティストたち」と題してお送りします。
前回の「最近聴いている女性アーティスト編」の姉妹版といった位置づけとなっている。
近頃は女性アーティストの曲しか聴きたくない気分で、男性アーティストはほとんど聴いていない。これが逆になることもある。心理的に何かあるのかもしれない。
坂道グループやジャニーズやダンスチームに乗っ取られてJ-POPから気持ちが離れてしまった人も少なくないだろうけど(私もそう)、J-POPはまだ健在だった。
ここ数年で実力者たちが次々に出てきている。YouTubeなどの動画サイトによって歌い手側も聴き手側も裾野が広がったことがひとつ大きな要素としてあるだろうか。
そのあたりは前回も書いたのだけど、広がりという点からいうと、今は動画が世界中と直接つながるようになって一昔前と比べてJ-POPを聴く外国人が飛躍的に増えているという現実もある。J-POPの素晴らしさに世界の人たちが気づいてくれているようで、それはとてもいいことだと思う。
2010年代までは伝統に則った曲本位のアーティストが認められて売れるという傾向が残っていたのが、2010年代後半から2020年代にかけてヴォーカルに焦点が当たる傾向が強まっているように感じる。
その要因はいろいろあるのだろうけど、誰もが歌い手になり得る環境が整った中で、より良い歌い手が求められるようになった時代性というものがある。
いい曲を作れる人間ももちろん敬意を表されるのだけど、単純に歌が上手いことが尊敬や憧れの対象になり得るということだ。
今回紹介するアーティストたちは特にその傾向が強いように思う。まず歌唱力があって、その上で曲もいいという順番で、その逆じゃないことが多い。
J-POPに失望して離れてしまった人たちにこそ、今回のアーティストたちを紹介したい。まだまだJ-POPは死んでないですよと。むしろ進化しているし新しい才能の登場にワクワクするはずだ。
私もたいがい後れを取っているけど、遅くなってもかまわないではないか。数年前のヒット曲でも自分が今出会ったなら自分にとっては新曲だ。出会いは遅くなっても出会わないよりずっといい。
いつも書いているように、これは勝手に発表なので必ずしも共感は求めていない。でも、曲と誰かの橋渡しになれればいいなという気持ちは持っている。
Ado 『うっせぇわ Piano Ver.』
オリジナルバージョンはこちら。
去年の年末頃に社会現象といっていいほど話題になったので知っている人も多いだろうけど、私は食わず嫌いもあって一度も聴いたことがなかった。
YouTubeを回っているときに一度くらい聴いておくかと聴いてみたら、なるほどこういうものだったのかと妙に納得してしまった。
曲としては面白い。ヴォーカリストとしてはすごい。
作詞作曲は、syudou。
何がどうすごいのかは、おしらのリアクション解説動画を観るとよく分かると思う。
超テクニシャンで他に類を見ないアーティストだ。誰にも似ていないし誰も真似できない。椎名林檎に似ていると感じる人もいるようだけど、歌い方や方向性はやはり全然違っている。
何種類もの声色を使い分けるというのが一番の特徴で、今までここまで意識的にそれをやったアーティストはいなかったと思う。
デビューが17歳の高校3年生のときで、曲を録音するのは一人でディレクションを受けていないとインタビューで語っていたので、本格的に音楽の勉強をしたわけでもなく、プロデューサーと二人三脚でキャラとして作り込んだというわけでもない。ということはナチュラルな才能ということだ。ギフトという言葉が思い浮かんだ。
さきここのリアクション解説動画も分かりやすくて勉強になる。
ボイス&ヴォーカル・トレーナーはやはり聴きどころが違うんだなとも思うし、再現度の高さは見事。
海外の反応も面白い。
ニキ、外国人JD、Litze music、ぎゅいch。
Ado 『ギラギラ』
「うっせぇわ」が駄目だった人はこちらはどうでしょう。
作詞作曲は、てにをは。
曲調はまったく違うけどAdoの実力がよく発揮されている。
これで駄目ならAdoは諦めるしかないかもしれない。
LiSA 『炎 / THE FIRST TAKE』
『鬼滅の刃』(Web)の主題歌ですっかり時の人になったLiSAだけど、もちろんそれだけではない。鬼滅の一発屋で終わる人ではない。
このTHE FIRST TAKEは圧巻だ。
さきここ解説。
最後はもらい泣きしがちなので注意。
YOASOBI『夜に駆ける / THE HOME TAKE』
優しい彗星
群青
知っている人にしたら今更かよと言いたくなるだろうけど、私は最近ようやく知ったので新鮮だ。
話題になっているのはかろうじて知っていたものの、YOASOBIってなんだよと名前で拒否反応を起こしてしまっていた(すみません)。
ボーカロイドプロデューサーのAyaseとシンガーソングライターのikura(幾田りら)による2人組の音楽ユニットで、ソニーミュージックが運営する小説&イラスト投稿サイト「monogatary.com」に投稿された小説を音楽にするプロジェクトから誕生。 以降、同サイトに限らず様々な小説、タイアップで新たに書き下ろされた小説などから楽曲を発表。 (wikiより)
このボーカロイド(Web)、通称ボカロというのもひとつの重要なキーになっていて、Adoなどもその系列に連なっている。
YAMAHAが開発した歌声合成技術(ソフト)で、PCの中のキャラが歌う初音ミク(Web)なら知っているという人はけっこういるんじゃないかと思う。
このソフトを使って楽曲を作る人をボカロPなどと呼んでいて、そうやって作られた曲を人間が歌うことをやっている。Adoは小学校のときにボカロの歌い手に出会ったことが歌手を目指すきっかけになったと語っている。
YOASOBIのAyaseはボカロ界では知らない人間いないくらいの人で、「うっせえわ」を作詞作曲したsyudouもボカロPだ。
前回紹介したLiSA×Uru - 再会はAyaseが作詞作曲、プロデュースを行って二人のために書き下ろした曲だ。
YOASOBIならびにikuraのすごさはおしらの解説にお任せしよう。
Adoが17歳で若いと評判になったけどikuraもまだ20歳の若さだ。
曲の元になった小説「タナトスの誘惑」を読んでから聴くとまた違った印象を持つはずだ(短いので1分で読めます)。
yama『春を告げる / THE FIRST TAKE』
オリジナルはもっとハイテンポ。
顔を出さず、素性に明らかにしないアーティストとして知られていたyamaが仮面をつけてとはいえTHE FIRST TAKEに登場したことに驚いた人も多かっただろう。
THE FIRST TAKEの目の付け所はたいしたもので、THE FIRST TAKEを追っていけば間違いないとさえ言える。
yama名義として初のオリジナルのこの曲も、ボカロPのくじらと組んだものだ。
ボカロPとスーパー・ヴォーカリストとの組み合わせは最近の流行というだけでなくこれからのスタンダードになっていきそうだ。
「真っ白」も。
インタビュー動画はこちら。
緑黄色社会 『Shout Baby / THE FIRST TAKE』
今回一番紹介したいのがこちら。緑黄色社会。
名古屋出身の男女4人組のバンドで、知っている人はとっくに知っているのだろうけど、AdoやYOASOBIなどと比べるとそこまでメジャーでもないと思う。
名古屋にこんな実力派バンドがいたとを知らなかった(今も名古屋在住?)。名古屋市は観光大使にするなり何なりして今のうちに良好な関係を築いておくべきだ。河村たかし市長、当選したら頼みます。
紅白に出てから頭を下げていたのでは手遅れだ。
おしらの解説。
外国人の反応がこちらも面白い。
こちらとか、こちらとか、こちらとか。
緑黄色社会 『Mela! , LADYBUG / THE FIRST TAKE FES vol.2 supported by BRAVIA』
ヴォーカルの長屋晴子に目が行きがちなのだけど、ギターもベースもキーボードもレベルが高い。高校(中京大中京といわれている)のバンド研究会で組んだメンバーで、もともとドラムがいたのだけど脱退して今は4人になっている。
個人的に穴見真吾のベースプレイが好きだ。
楽曲はすべてメンバーが作っていて、主にヴォーカルの長屋晴子が担当している。長屋晴子は曲によってギターも演奏する(上の動画の2曲目がそう)。
美貌で抜群の歌唱力があって曲も作れて楽器もできてモデルもやっていたって、そんなスーパーな女子が名古屋にいたとは驚きだ。
緑黄色社会『sabotage / THE FIRST TAKE』
ヴォーカルとキーボードだけでここまで表現できるのか。
緑黄色社会はMVよりも生歌・生演奏の方が魅力的だ。
私の知らないすごいアーティストが日本にはまだまだいるであろうことを思うと、J-POPも捨てたもんじゃない。日本の底力をここにも見た。