フィルムの功罪とデジの良し悪し ---フィルムで切り取る6月の風景第一弾 - 現身日和 【うつせみびより】

フィルムの功罪とデジの良し悪し ---フィルムで切り取る6月の風景第一弾

フィルムの6月

Canon EOS Kiss3+TAMRON SP 90mm f2.8+Kodak ULTRA COLOR 400UC



 たまにはフィルムで写真を撮ろうと、EOS Kiss3を持って海上の森へ向かった。しかし、相変わらずの貧乏性で、一枚撮るのにえらく時間がかかって、しまいには指が震える始末。固まった指が動かない。それが手ぶれを生み、貧乏的な失敗を何枚か重ねつつ、結局36枚撮りフィルムの半分しか撮れずにすごすご帰ってきてしまったのだ。貧乏は人をダメにする。貧すれば鈍するというのは本当だ。
 貧乏はともかくとして、やはりフィルムは1枚の重みが違う。失敗できないと思うと、シャッターが切れなくなる。構えてファイダーをのぞいてはやめて、またカメラを向けてはこんなもの撮ってる場合じゃないと思いとどまる。デジならとっくに10枚は撮ってるシーンで1枚も撮れないなんてこともある。
 逆にいうと、日頃自分がいかに適当にシャッターを切っていたかが、フィルムを使ってみると思い知る。デジの1枚は、いかにも軽い。メモリが大容量になって余計にそうなった。いくら撮ってもタダで、200枚でも300枚でも撮っていいとなれば、何も考えずにバシャバシャ連写してしまうのも無理はない。しっかり狙う前に、とりあえず押さえておこうという心理が生まれる。そして、気持ちのこもっていない写真になる。そんな自分を戒めるために、たまにフィルムで撮るのはいいことだ。初心に返ることができる。

 デジとフィルム写真の一番の違いは何かといえば、単純に言って質感ということになるのだろう。立体感とか奥行きとかいう言葉を使うこともある。少し前まではフィルムの方が解像感が上と言われていたけど、最近のデジは解像感でもフィルムに追いついた。場合によっては追い越している。そういう点では、はっきりとしたフィルムの優位はなくなったのかもしれない。
 それでもフィルムで撮りたいと思う人の気持ちは分からないでもない。趣味的なこだわりと言ってしまえばそれまでだけど、CDよりもレコードの音の方が好きだというのならそれはその通りなのだろう。他人がとやかく言うことではない。写真に関しても、やっぱりフィルムにはフィルムの味のようなものが確かにある。はっきりと違いを言葉で説明することはできなくても、違うことだけは分かる。
 たとえば上の写真なんかも、パッと見てデジではなくフィルムで撮った写真だなと思う。どこがどう違うのかと訊かれると困るけど、デジの写真ではないから消去法でフィルム写真だと思う。フィルムの方が柔らかいという表現をする人もいる。デジで同じシーンを撮ってもこういう写り方にはならない。好き嫌いは別にして。
 池に浮かんだ水草が、森の木々を反射した水面から浮き上がっているように見える。ちょっと不思議な感じがする。

フィルムの6月-2

 フィルムの難しさは、露出の難しさだ。デジは普段RAWで撮ってるから露出に関してはほとんど意識していない。オートで撮ってあとからPCでいくらでも調整できる。コントラストの強いシーンの白飛びだけ気をつけていればいい。けど、フィルムの場合はカメラに任せっきりでは失敗の確率がかなり高くなる。ネガはある程度調節がきくとはいえ、現像はカメラ屋の機械任せだから好みの仕上げなんて注文はできない。どちらかというとアンダーよりもオーバー気味に現像を出してくる。現像の段階で飛んでしまうと、もうお手上げだ。jpegデータになってしまった画像はあまり直しがきかない。
 上の写真も飛び気味で適正露出とは言えない。コントラストがかなりきついシーンだからフィルムでも厳しいとはいえ、もう少し撮る段階でマイナス補正するべきだった。このときは特に、画面左よりのクモの巣を被写体として撮りたかったのに、飛んだというか潰れたというか、ほとんど消えかけていてしまっている。実際は光に反射してとてもきれいだったのに。
 フィルムで撮っていると、あらためてピント合わせと手ぶれと露出という、写真を撮る上で最も大切な三要素を思い出さずにはいられない。

フィルムの6月-3

 フィルムでタムロン90を使うと、デジ以上に極薄ピントになって、難しくて面白い。ファインダーは銀塩カメラの方がクリアで見やすいから、マニュアルでピントを合わせるのは楽だ。ただ、虫なんかの動きがあるものはフィルムでは連写ができないから(機能的にはできるけど金銭的に無理)、デジよりも成功する確率はぐんと減る。飛んでるところを狙って下手な鉄砲も数打ちゃ当たる的な撮り方は決してできない。このあたりもフィルムからデジに移行して大きく事情が変わった点の一つだ。かつてはプロカメラマンがテクニックとフィルムを惜しまない財力でして撮り得なかったシーンを、今は一般人がデジで撮れるようになった。それはとても大きなことだと思う。
 このトンボは私の財力を見抜いたのか、長い時間かけて一枚撮るまでじっと動かずにいてくれた。偉いぞ、トンボくん。
 カワトンボの仲間だと思うんだけど、ニシカワトンボじゃないのか。シオカラ色でもなく、緑でもないから、ニシカワくんじゃなか。トンボの見分けも難しい。今年は少しくらい成長するだろうか。

フィルムの6月-4
Canon EOS Kiss3+SIGMA 70-300mm f4-5.6 APO

 この時期の海上の森の湿地帯に行くとよく出会う、ムカシヤンマだ。普通のトンボとは動きがずいぶん違うから、名前や知識がなくても、こいつなんか変わったやつだなと思うはずだ。飛び方がゆっくりでぎこちなくて、そもそも飛ぶのが好きでないらしく、いつも止まっている。ちょっと飛んだかと思うとすぐに止まってしまう。使えないバイトみたいなやつだ。人なつっこくもあって、よく人間の服や足もとなんかにもぶら下がって止まる。物怖じしないというか、根っから飛ぶのがイヤなのか。
 見た目はオニヤンマやコオニヤンマにちょっと似ている。サナエトンボかと思ったりもする。違いは、目が緑ではなく黒で、離れているところだ。口は黄色い。
 ムカシヤンマという名前の通り、大昔から地球で暮らしている大先輩だ。2億年前のジュラ紀の時代から恐竜と共に生きていた。その頃の遠い遺伝子の記憶を持っている彼らにしてみれば、人間なんて小さくて恐怖の対象ではないといったところかもしれない。
 幼虫はきれいなわき水のしみ出ている土やコケの下にトンネルを掘って、そこで小さな虫などを捕らえて食べながら5年ほどかけてゆっくり成長する。
 生息域はごく限られているから、街中などでは決して見ることはできない。そのへんの山道を歩いててふいに出てくるようなトンボでもない。いるところに出向いていかないとなかなか見るのが難しい。曇りの日はほとんど出てこず、日差しがあるときだけ飛ぶ。海上の森の湿地ならたぶんいるはずだから、ぜひ見に行って欲しい。近づいていけばきっと自分に止まってくれる。

フィルムの6月-5

 ハッチョウトンボの後ろ姿。ふわ~んと撮れるのもフィルムの味。少しオーバー露出気味に。

フィルムの6月-6

 湿地に行くまでハッチョウトンボの季節になっているとは思ってなかった。そういえばもう6月も終わりだから、ハッチョウトンボも飛び始める季節だ。まだ数は少なかったけど、今年も海上の森の湿地にハッチョウトンボが生まれていた。それが嬉しくもあり、ホッともする。
 体長2センチにも満たない、日本で一番小さなトンボは、矢田の八丁目(今の名古屋市矢田川あたり)で見つかったからハッチョウトンボと名づけられた。だから、私にとっては地元のよしみみたいな親しさを感じる。生息地は本州から九州にかけてで、名古屋地方特有というわけではないのだけど。
 湿地帯へ行けば見ることができるトンボなので、それほど珍しいものではない。でも、初めて見るとあまりの小ささに感動すると思う。人は大きいものにも感動するけど小さいものにも感動するのだ。

フィルムの6月-7

 日本で一番小さなトンボがハッチョウトンボなら、日本で一番赤いトンボがこのショウジョウトンボだ。体だけでなく、目や鼻や口まで真っ赤に染まっている。にもかかわらず、こいつは赤トンボの仲間ではない。いわゆる赤トンボと呼ばれるアキアカネやナツアカネがアカネ属なのに対して、ショウジョウトンボはショウジョウトンボ属になる。仲間は、アジアだけでなく、中東、アフリカ、アメリカなどに広く分布している。
 猩猩(しょうじょう)というのは、人間の言葉を理解して大酒飲みでいつも真っ赤な顔をしているという中国の伝説上の生き物のことだ。このトンボは、その姿の赤さからショウジョウと名づけられた。

フィルムの6月-8

 湿地の夏といえば、このモウセンゴケも主役の一つだ。珍しい食虫植物で、葉っぱの毛先に付いた水滴から甘い匂いを出して虫を誘い、虫がとまったらくっつき虫のようにピタリを付いて取れなくなるから、そうやって捕まえて食ってしまうのだ。残念ながらまだその決定的なシーンは見たことがないから、いつか一度は見てみたいと思っている。
 モウセンゴケには、大きめのモウセンゴケと、小さめのコモウセンゴケの他に、東海地方特有のトウカイコモウセンゴケというのもある。写真のものは、コモウセンゴケか、トウカイかどちらだろう。
 トウカイコモウセンゴケはピンク色のとてもかわいい花を咲かせる。ただし、花は午前中だけで昼からは閉じてしまうため、行動時間が夕方の私は開いている花を一度も見たことがない。花が咲いてて虫を捕まえて食べているところが見られたら一番いいな。
 モウセンゴケ以外にも、イシモチソウやナガバノイシモチソウなどの食虫植物が日本に自生している。

フィルムの6月-9

 たぶん、ノイバラだと思うけど、自信はない。違うかもしれない。バラ科には違いないけど。花の感じはちょっとツバキっぽいか。でも、ナツツバキとは違うようだ。
 ノイバラとすれば、日本の野バラの代表選手だ。こんな野生のバラが、私たちの見慣れたバラになるのだから不思議というか、人間はちょっと花をねじ曲げすぎているかもしれない。
 ヤマイバラ、テリハノイバラなど、日本には十数種類の野生のバラがあるそうだ。よく観察しなかったけど、もしノイバラならちゃんとトゲも香りもあったはず。花を区別するときは、花だけではなく茎や葉や香りにも注意しないといけない。

 フィルムで撮る6月第一弾はここまで。36枚フィルムはこの時点ではまだ半分残っていた。あと半分は、日を改めてグリーンピア春日井に行ってきたので、そのときの様子はフィルムの6月第二弾で紹介したいと思っている。
 たった36枚撮るのに、ずいぶん時間と手間がかかってしまった。そして現像代とCD-R書き込みで1,160円。フィルム代を合わせると1,300円。日常的に写真を撮るとしたら、これは高い。10本も現像したら、ちょっとした中古のデジが買えてしまう。デジは一度揃えてしまったらどれだけ撮ってもタダというのが魅力だ。タダの代償があるにしても、フィルムのプレッシャーにはそうそう耐えられないものがある。こんな窮屈な撮影スタイルはイヤだ。趣味の写真なんだから、もっと気楽にいきたい。フィルムは3ヶ月に一度くらいにしよう。
 結論、貧乏性にフィルム写真は向かない。
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コメント
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自分の写真

デジにしてから、写真が下手になったように感じる

”気”が入っていないような・・・・

2007-06-29 22:29 | from ただとき@オッスw | Edit

金に糸目をつけなければ?

★ただときオッスさん

 こんにちは。
 フィルムとデジはやっぱり姿勢が違ってきますよね。良くも悪くも。
 デジになるとどうしても軽くなるんだけど、フィルムになると重くなりすぎる。(^^;
 撮るべきシーンで撮れずにずいぶん多くの写真を逃すことになってしまう。
 無尽蔵にフィルムを使えるなら、それが一番なのか?(笑)

2007-06-30 05:30 | from オオタ | Edit

はじめまして!
履歴から おじゃましました~
といっても 
お友達のRIRICOさんちからも 
時々お邪魔していました。
この記事の トップの菱かな? 水草の作品に引かれて 記事も読ませていただきました。
フォルムとデジを使う感覚が なんとなく同じかなあ~なんて こちらに 初コメントさせていただきました。




2007-07-03 14:16 | from kokage | Edit

両方のよさを楽しみに

★kokageさん

 はじめまして、こんにちは。
 以前からちょくちょくお邪魔してたので、はじめましてという感じではないのですが。(^^;
 kokageさんもフィルムの方ですよね。
 ここ一発というときはフィルムで撮りたいってときがありますね。逆に、ここはデジの方がいいだろうってこともあって、どっちもいいところ不便なところってあるんですよね。
 でも、それを難しさと思わず、楽しみと思えばいいのかもしれない。
 失敗できないプレッシャーと、失敗してもいい気軽さと。

 中国奥地の写真、すごいですねー。(^^)
 テレビでは何度か見てるけど、実際に見たらどんな感じがするんだろう。
 あそこをフィルム一本勝負となると、厳しそうです。指がつりそう(笑)。
 いつか私も見てみたいし、撮ってみたい。

2007-07-04 03:48 | from オオタ | Edit

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