6月の長谷寺は新宿駅よりも混雑し、ディズニーランドよりも並ぶのだ

鎌倉(Kamakura)
長谷寺門前

PENTAX istDS+smc PENTAX-DA 18-50mm(f3.5-5.6 AL), f10 1/32s(絞り優先)



 6月の鎌倉。アジサイの時期の長谷寺は新宿駅並みに人が多い。門前からしてすでにこの状態。入口に近づくほどに人口密度が高くなる。あまりにも人が多いのでちょっと笑ってしまうくらいだ。世の中には自分と同じことを考えてる人がこんなにも大勢いるんだなぁとあらためて思う。
 このとき午前10時前。開門が8時半だからすでに出遅れた感がある。ただ、ここから昼にかけてますます混雑が増していくので、ぎりぎり間に合ったといったところかもしれない。ゴールデンウィークも混んでたけど、ここまでではなかった。とにかくどれくらいの待ち時間になるのか状況がまったく読めなかったので、とりあえず入口付近まで近づいてみることにした。
 入場券を買うのに並んだのは5分かそこらでそんなにたいしたことはなかった。そこからさらっと入れてしまって、なんだこれは、大丈夫じゃん、全然待ちなんてないじゃんと拍子抜けしてしまった。待ち時間が3時間なんて大げさだなぁ、はは。と、ここまでは余裕だった。というか、全然分かっていなかったウブな私たち。行列は今ここにある危機ではなくこの先に待ち受けていたのだった。境内の混み具合はそれなりで、渋滞しているというほどではない。人をよけつつそれなりに自由が利く。
 長谷寺は前回見て回っているので途中は飛ばして、すぐに上に登ってアジサイの小径へ向かうことにした。今回の目的はそこだけだったから。



青いアジサイを取り囲む人々による撮影会

 と、その前に、入ってすぐのところに何やら人だかりができていた。何かを取り囲んでみんなで写真を撮っている。誰か有名人でも来ているのかと思ったらアジサイだった。なんだそりゃ。アイドルの撮影会に来ているカメラ小僧たちみたいで、なんとなくおかしかった。このあと別の場所でどこかのおじさんが口にした言葉が思い出される。
「人が撮ったところはたいていいい場所だからそこで撮ればいい」
 確かにその通り。みんな撮るところはだいたい決まっていて、そこはやっぱりよくて、みんな同じところで撮っていく。我々もまた、例外ではなかった。



青紫の紫陽花

 みんなが撮っていたのがこのアジサイだ。変わった形のガクをしていて、紫色にも品がある。なるほど、これはいいねと一目で思う。たくさんあるアジサイの中でも第一印象でハッとさせるものはどこか他のものとは違っている。クラスの中でみんなの注目を集めるアイドルがいるようにアジサイの中にもアイドルは確かに存在する。
 新種のアジサイで「かまくら」と命名されたと書かれていた。作出は加茂花菖蒲園。静岡県掛川にあるここはアジサイ作りにも力を入れているようで、ネットで調べたらアジサイの通販もしているようだ。このアジサイは鎌倉名物として定着していくだろうか。



アジサイの小径の渋滞

 結局、待ち時間というのはアジサイの小径に入るためのもので、入場券に押された整理番号によって入場制限がかかるために待ちが出るのだった。番号でグループ分けして、順番が来るまで入れない仕組みになっている。私たちの番号は1時間待ちだった。やっぱりか。この時期の長谷寺が5分くらいの待ちで入れるほど甘いものではなかった。私が間違ってました。
 ただ、長谷寺のいいところは、入場券に再入場許可のハンコを押してもらえばいったん外に出てもまた入れるというシステムになっているところだ。なので我々のように近くの光則寺へ行ったり、この時間を利用してお昼を食べたりなんてことができる。自分たちの番号が解禁になっても、そこから行列に並ばなければいけないから、実質的な待ち時間はもっと増えることになるのだけど。
 上の写真はようやくアジサイの小径の入口を入ってアジサイ群生が始まったところだ。最後までこんな調子で行列に並びながらゆるゆると進むことになる。基本的には追い越し禁止。たまに写真を撮ったりしていると追い越されてしまったりもしつつ、後半はルーズになっていく。いったん入ってしまえば時間制限はないからいつまでいてもかまわない。



斜面に咲くアジサイの定番カット

 ここのアジサイは、山の斜面にややワイルドな感じで咲き乱れている。見渡す限りのアジサイというのは小さな写真ではちょっと伝わりづらい。実際のアジサイ群生は、わぁーっと声が出るほどきれいだ。
 この時間帯は日差しが最高潮のときで、アジサイ撮影には厳しい条件だった。光と影のコントラストがきつすぎてアジサイのしっとりとした風情はない。梅雨時の花でもあるし、照りつける太陽は似合わない。
 とはいうものの、40種類以上、約2,500株のアジサイはなかなかに素晴らしい。こりゃすごいと素直に感動する。
 長谷寺が裏山に本格的にアジサイを植え始めて散策路を整備したのは2002年頃からだそうだ。その前にも境内にアジサイはあったのだろうけど、長谷寺がアジサイ名所となったのは最近のことのようだ。明月院の方は戦後1950年(昭和25年)くらいからすでにアジサイ名所となっているから、歴史はずいぶん違う。
 この散策路が去年、ちょっと問題になった。許可を得ずに勝手に拡張整備したとして県の調査が入ったのだ。どうやら古都保存法に抵触してしまったらしい。あの問題は結局どうなったんだろう。最悪、元の自然な状態に戻されるという話だったのだけど、今年見た限りではそんな様子はなかった。話し合いで解決したのだろうか。長谷寺としてはアジサイシーズンは1日に1万人を超える観光客が訪れるかき入れ時だから、下手に横やりを入れられちゃたまらないといったところだろう。お寺が一日に拝観料だけで300万円も稼ぐというのも問題な気がするけど、あの散策路はあれでいいだろう。あれ以上狭くなったらますます渋滞がひどくなって待ち時間もとんでもないことになるし、危険でもある。むしろもっと広げて欲しいくらいだ。



薄紫のアジサイ

 長谷寺ではアジサイの景観ばかり撮っていて、花をほとんど撮ってなかったことに帰ってきてから気がついた。これはその中の数少ない一枚だ。この日の私は、青や紫の微妙なニュアンスの違いに心惹かれていたらしい。撮った写真は青や紫の花が多かった。



手前のアジサイと遠くに海を見るカット

 長谷寺で一番撮りたかったのがここ、山の上からアジサイの向こうに見える由比ヶ浜の風景だった。もうひとついいポジションがなくて、手前のアジサイも好みではなかったのだけど、ここはやっぱり絵になる。テレビ版の「世界の中心で、愛をさけぶ」の紫陽花の丘を思い出した。
 アジサイと海のとりあわせでは成就院がロケーションとして最高なのだけど、前年の大雨による被害と補修工事で、今年はまったく駄目だったようだ。来年は復活するのだろうか。

 鎌倉のアジサイのよさは、それぞれの場所でそれぞれの味わいがあって、一日でいろいろな楽しみ方ができるところだ。明月院には明月院の味わいがあり、長谷寺には長谷寺のよさがある。同じ食材でも調理方法が変わればいろんな美味しさがあるのと同じだ。特に明月院と長谷寺は対照的なので、両方巡るとそれぞれのよさが分かっていい。
 鎌倉アジサイシリーズはこのあと、古陶美術館編、御霊神社編と続きます。もう少しおつき合いください。

 北鎌倉のコトー美術館の狭い裏庭に珍しいガクアジサイあり
 
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