花が少なくなった初夏の海上の森には深い緑の大正池がある

森/山(Forest/Mountain)
初夏の海上の森-1

PENTAX istDS+TAMRON 28-200mm(f3.8-5.6), f8.0 1/50s(絞り優先)



 2ヶ月ぶりに訪れた海上の森は、すっかり夏の装になっていた。学生の制服が冬服から夏服に替わるみたいに劇的に。4月に行ったときはまだ少し桜も残っていて春のまっただ中だったけど、今はもう田植えも終わって梅雨前の穏やかな里山だった。
 それにしてもめっきり花が少なくなっていて寂しかった。もうそんな季節なんだとあらためて思い知る。夏鳥たちの声は聞こえても、生い茂る葉で姿は見えず。初夏の森は意外と撮るものが少ない。
 今回は海上の森の標準コースである四ツ沢から集落、大正池までをのんびり歩いた。駐車場から往復で1時間半コースだ。時間があれば湿地まで行きたかったのだけど、あちらを組み込むと2時間半コースになるのでやめておいた。物見山まで入れると時間以前に体力的な問題が出てくる。湿地から物見山へ行く場合は、赤池近くの入口近くに車をとめて歩いた方が無駄がなくて近い。

初夏の海上の森-2

 集落のあたりに少しアジサイがあって、そろそろ咲き始めていた。半ば野生化して西洋アジサイ。集落の誰かが植えたものだろう。日本原産のアジサイはガクアジサイだから。
 アジサイというと梅雨のイメージだけど、実際は梅雨入りよりも前に咲き始めて、のんきに構えていると見頃を逃してしまう。6月の半ばくらいには最盛期を迎えるから、私もぼやぼやしていられない。そろそろアジサイ巡りを始めなければ。
 今年は鎌倉一本勝負でいきたい。蒲郡の形原温泉はまた来年の課題としよう。桑名のなばなの里にも日本最大級のアジサイ園ができたけど、アジサイはやっぱりまわりの景色や咲いている場所と絡めてこそだ。植物園のようなところでいくらたくさん集めてもあまり魅力的ではない。激混みと分かっていてもみんな鎌倉へ行ってしまうのは、アジサイだけを見たいからではなくて、あのロケーションでアジサイを見たいからに違いない。坂の上から海をバックに満載のアジサイを見られる場所というのはごく限られている。

初夏の海上の森-3

 こちらはコアジサイ(小紫陽花)。ガクがないからガクアジサイの終わったやつみたいに見えるけど、これが普通の姿だ。関東から西のやや暗い湿ったところに自生している。東北の人には馴染みがないかもしれない。街中でも見かけないから、案外知られてないかもしれな。森や山を歩いているとわりと当たり前のようによく見かける。
 アジサイよりももっと繊細な感じで、なかなか悪くない。派手さはないけど、日本人好みだ。

初夏の海上の森-4

 初夏を代表する花のひとつ、ホタルブクロ。紫色のものもある。個人的には白の方が風情があって好きだ。
 海上の森でもホタルがたくさん舞うという話だ。けど、あんな森の中、日没後に行くのは危険すぎる。真の闇となって10センチ先も見えない。どうしても行きたければ満月の夜にした方がいいだろう。逆に言えば、街中で暮らしていると本当の暗闇ということがどういうことなのか分からないから、一度くらいは体験してみてもいいかもしれない。私は子供の頃田舎で経験した純暗闇の感覚を忘れていない。目を閉じているのとも違う、不思議な真っ黒さだ。見ようとして何も見えない恐怖は怖さを通り越して笑えてくる。
 森に入り込まなくても、森の周囲の民家がある田んぼにもたくさんいるそうだから、そっちで見るのも手だ。そろそろゲンジボタルもピークが近づいてるんじゃないだろうか。

初夏の海上の森-5

 野草がほとんど咲いていないこの時期にやっと見つけたのがこいつ、キキョウソウだった。本家のキキョウよりずっと小さいけど、花の色と形はよく似ている。小型のキキョウではヒナギキョウというのもあって、そちらは日本原産で茎の先に一つの花を咲かせる。ヒナギキョウは段々にいくつもの花をつける。別名をダンダンギキョウともいう。
 こんな小さくて可憐な花なのに原産は北アメリカ。いつの間にか日本にやってきて帰化してしまった。アメリカではこんなささいな花は大事にされなくて、大切にしてくれそうな日本に渡ってきたのかもしれない。道ばたに咲いてると目立たないけど、近づいてよく見てみると清楚な紫のきれいな花だと気づく。個人的にはヒナギキョウの方が好みなのだけど。

初夏の海上の森-6

 これは分からない。初めて見た。民家の庭と空き地の間に咲いていたから野草なのか園芸種なのかも判断できなかった。木なのか草なのかさえ。そもそもこれは花なんだろうか。パッと見た感じはいいなと思って目を惹いた。

初夏の海上の森-7

 雑草の中の雑草としてほとんど人にかえりみられることなく咲いてる草がたくさんある。野草好きでも名前を気にしないような草が。それでも全部ちゃんと名前を持っていて、その存在はこの世界で認識されている。私たちが知らないだけで。
 これはなんだろう。こういうやつは驚くほど種類がたくさんあって見分けるのが難しい。なんとかガヤとかガリヤスとかそんなような名前のついたイネ科の植物だとは思う。イネ科の草は世界で1万種もあるそうだ。
 夕方の柔らかい日差しに染められながら風に吹かれていたので、絞り開放で一枚。

初夏の海上の森-8

 夏の大正池は、緑が深くて素晴らしく幻想的だ。冬場は水が抜かれてしまうただのため池なのに、この時期だけは美しい緑色になる。どういう作用でそうなるのだろう。水平から見るとこんな色には見えなくて、上から見下ろすとこう見える。深くてきれいな川だけが持つこの緑色をなんと名づけよう。これを見るためだけでも夏の海上の森を訪れる価値があるというものだ。

初夏の海上の森-9

 海上の森にも日没が近づいた。この日は雲が多くて夕焼けは期待できそうになかったので、ここで切り上げることにした。この場所から見る夕焼けがいいのは秋だ。夏はあまりきれいに染まらない。赤く染まった空と大正池を撮りたいとずっと思っているけど、いまだに念願は叶わない。今年の秋こそ見られるだろうか。

 花の少なくなった今の時期の海上の森は、あまりおすすめできない。何度も行ってる人はいいけど、初めて行くには適してない。なんだこんな退屈な森なんだという悪い第一印象になってしまう可能性があるから。一番いいのは春で、次が秋だ。秋になって涼しくなると野草も戻ってきて、山の紅葉も見ることができる。田んぼの稲穂とコスモスの取り合わせも田舎風情があっていい。運がいいと夕焼けも見られるだろう。真夏はベテランさん以外は避けた方がいいと思う。とにかく激しいクモの巣攻撃に晒されて気が滅入るから。言うまでもなく、デートで行くところではない。
 私は次は夏の終わりあたりに行こうかと思っている。ひぐらしが鳴く頃の海上の森もちょっとけだるくて素敵なのだ。夏休みの終わりが近づいた夕暮れどきのような気分になる。
 最初は相性の悪さを感じてなんとなくしっくりいっていなかった海上の森も、10回以上通うようになってからはすっかり打ち解けておなじみさんとなった。まだ親友とまでは言えないけど、顔見知りよりは近しい関係だ。今後も仲を深めていきたい。
 そんな初夏の海上の森であった。
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コメント
  • ヒメコバンソウ (姫小判草)
    2018/05/25 13:11
    こんにちは!
    昨日、海上の森を歩きましたが・・・名前が判らない野草があり、ネットで検索して居ましたら 貴ブログの『コアジサイ』がヒットしました。
    名前が判り 助かりました m(_ _)m

    >なんとかガヤとかガリヤスとかそんなような名前のついたイネ科の植物だとは思う。

    私は野草は 殆ど知りませんが・・・これは ↑↑
    『ヒメコバンソウ (姫小判草)』ではないでしょうか??
    https://matsue-hana.com/hana/himekobansou.html
    間違って居たら・・・すみません^^;;


    また・・・
    >民家の庭と空き地の間に咲いていた・・・

    「ナワシロイチゴ」かも知れませんね♪(^^) 

  • ご無沙汰の海上の森
    2018/05/25 22:13
    >白竜さん

     こんにちは。
     コメントいただきありがとうございます。

     これまた懐かしい記事です。もう11年近く前になるんですね。
     ここ2、3年、ちょっと海上の森から遠ざかってます。以前は一年を通じて出向いていたのですが。
     もうハッチョウトンボも飛び始めたでしょうか。

     分からなかった野草、なるほど、ヒメコバンソウで間違いなさそうですね。
     どうもありがとうございます。
     コバンソウは分かりやすいけど、ヒメコバンソウはあまり小判っぽくないような。

     今年はバラも撮らないまま季節が過ぎていきそうです。
     ハナショウブも例年より早く咲き出してるようですね。
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