
岐阜県各務原市にある苧ヶ瀬池(おがせいけ/地図)は非常に古い池とされる。
東の愛宕山(268.5メートル)と西の各務山(170メートル)に挟まれた谷間にあり、4キロほど南を木曽川が流れている。
奈良時代前期に一晩でできたという伝承を持ち、竜神や竜宮城の伝説が彩る池だ。
かつて人を殺す竜女がこの地にいて、江戸時代後期に尾張の福富新蔵の矢に射られて傷を負い、山に逃げ込んで心を入れ替えたという話が伝わっている。竜女の白髪が苧(お)に似ていたことから苧ヶ瀬の地名は来ているともいう。
実際のところ、苧は麻の古名であり、「からむし」とも読み、イラクサ科の多年草のことなので、苧がたくさん生えた土地だったことが地名の由来と考えるのが合理的だ。茎の繊維を編んで織物にした。
麻我瀬や麻綜とも表記した。
ついでにいうと各務原は「かかみがはら」と読み、江戸時代までは各務郡(かかみぐん)といっていた。これは、この地に銅鏡などを作る鏡作部(かがみつくりべ)と呼ばれる技能集団がいたことから来ているという説がある。詳しくは村国神社のところで書こうと思っているのだけど、もしかすると苧ヶ瀬池もその一族が築造したものかもしれない。だとすると、「おがせ」の由来はまた別とも考えられる。
池に浮かぶ八大竜王堂の他、池の周辺には八大竜王本殿、八大白龍大神、神明神社、苧ヶ瀬神社、薬王院などが鎮座している。

日光の中禅寺湖をぐっとコンパクトにしたような風景だ。
苧ヶ瀬池は「岐阜県新八景」の第1位らしいのだけど、他の七景については調べがつかなかった。
桜や藤、蓮などが咲く花名所でもあるようだ。
訪れた日は雨降りだったのだけど、それはそれで風情があって悪くなかった。

鯉がワシャワシャいる。老夫婦と孫がエサをあげていて大変なことになっていた。

右手前が愛宕山ではないかと思う。その向こうは御坊山、向山、権現山あたりだろうか。
池の北2キロほどのところに古墳と窯跡から成る天狗谷遺跡がある。そのあたりも鏡作部の一族と関係がありそうだ。

「八大龍王本殿」とあるけど、ここは仏のようだ。
釈迦が霊鷲山で法華経の説教をしたとき集まった八部衆(天・龍・夜叉・乾闥婆・阿修羅・迦楼羅・緊那羅・摩睺羅伽)のうち、難陀・跋難陀・娑伽羅・和脩吉・徳叉迦・阿那婆達多・摩那斯・優鉢羅を八大龍王という。
法華経の守護神なので、天台宗か日蓮宗が関わっているだろうか。

「龍王殿」か?




【アクセス】
・名鉄各務原線「苧ヶ瀬駅」またはJR高山本線「各務原駅」より徒歩約15-25分
・駐車場 あり(無料)
<2>に続く。
記事タイトルとURLをコピーする