
ペイフォワードという言葉を初めて知ったのはテレビで観たアメリカ映画のタイトルからだった。映画の日本公開が2001年だから観たのはその数年後だろう。
pay it forwardという言葉は原作者のキャサリン・ライアン・ハイドの造語なのか、もともと英語表現としてあったものかは知らない。直訳すれば、前に払うという意味だ。
映画の中で主人公の少年は社会科の授業で世の中を変えるためには何をしたらいいだろうという課題に対して、自分が受けた善意を相手に返すのではなく別の3人に渡すことを思いつく。
それがどういう結果をもたらしたのかなど、細かいストーリーはすっかり忘れてしまったけれど、ペイフォワードという言葉だけは今も心の中にずっと残っている。
人に受けた恩をその人に返したらふたりの間で完結してしまってそれ以上広がらない。3人と言わずとも別の人に返すということをみんなが実践していけば善意はつながり広がっていく。
それはあまりにも理想的すぎるし世の中はそんなふうにできてはいないといえばそうなのだけど、善意の先送りという発想はこの世界を少しだけ良くする可能性を持っている。
ボランティア活動をしようとか募金に協力しようとかそういうことではない。心持ちの問題で、人に親切にしてもらったらその分だけでも他の人に親切にしようということだ。
お金にたとえた方が分かりやすいかもしれない。たとえば親にもらったお金は子供に返せばいい。子供がいなければ友人でも知り合いでも募金でもいい。
ペイフォワード。前に払うという直訳こそがこの言葉の本質といえる。