
PENTAX istDS+Super Takumar 50mm(f1.4), f2.8, 1/40s(絞り優先)
最近は隔週になっているサンデー料理も、けっこう回数を重ねて60回かそこらにはなっただろうか。同じものをなるべく作らないという決め事に縛られて、最近はメニューを決めるのにかなり苦心するようになっている。今日などは決まるまでに1時間以上もかかってしまった。レストランの客なら追い出されてるところだ。
けど、考えてみると60回ということは、毎日作ってる人の2ヶ月でしかないわけで、新婚2ヶ月で夕飯作りに行き詰まった新妻のような状態に陥っているということになる。それはいくらなんでも行き詰まるのが早すぎないか、私。もう少し料理っていろいろ他にもたくさんあるだろう。
今日は結局、最後は平凡なところに戻ってきてしまった。タケノコがあったので、マグロそぼろタケノコだけは決まったものの、その先が思いつかず、ちょっと新鮮素材のイカと、今日一番食べたかった野菜のかき揚げで落ち着くこととなった。ちょっと詰まらない。冒険心も、遊び心もない。
これまで作ったものの応用と変化だから、味は3品とも安定していた。甘辛そぼろは肉じゃなくてマグロのくずでも充分美味しいし、かき揚げはまずいものを作る方が難しい。ジャガイモ、ニンジン、タマネギ、ナスを細切りにして揚げただけだ。つゆは、天つゆベースに、だし汁、しょう油、みりん、酒、一味唐辛子を加えてひと煮立たせした。
イカは、内臓を取り出したり、皮をむいたりする解体作業がやっかいなわりにはあまり報われない食材かもしれない。丸まらないように筋を入れるのも手間がかかる。わざわざ蒸し器を使って蒸したのに、やっぱり少し固い。刺身用のイカの方がよかったか。ソースは、白味噌、マヨネーズ、辛子しょう油、卵、塩コショウ、だし汁などで作った。
今日のサンデー料理は、全般を通して乗り切れなかった。失敗ではないけど物足りない感じ。メニュー決めの段階からイメージ不足だったこともあって。腰が入ってないバッティングでセカンドフライみたいなサンデーだった。
この現状を打破するためには早出特打ちが必要かもしれない。腰が入った料理を作るために、ヒモ付きのタイヤを腰にくくりつけて、早朝の海岸を走るところから出直せ、私。ウサギ跳びのあとは、中華鍋に砂を入れてひたすら振り続けろ。
ひとつには、新しいレシピ本が欲しい。最近は思いつきで作ることが多くなって、イマジネーションがわいてこない。ネットのレシピ検索は案外使えないというか、漠然と何か作りたくなるようなものはないかと探し回っても、時間がかかるばかりで成果が上がらない。基本ができてない私としては、レシピ本を参考した方が作りたいものが見えてくる。
それから、なんといっても新素材だ。3品作る中で、どうしてもパターンが決まってきて、使える食材もおのずと限られてしまう。メインは魚にするなら赤身か白身で、あとはエビとか豆腐とか野菜とかになって、広がりがない。たまにはズワイガニとか明太子とか伊勢エビとかアワビとかフカヒレとか燕の巣とか使ってみたい。白トリュフやキャビアやフォアグラだった与えてくれたら料理できるはずだ。ギブミー高級食材。
世の中には数限りない食材と料理があるのに、その中で自分が作れるものはごく限られている。それはまるで人生の象徴のようだ。出会える人は大勢の中のわずかで、行ける場所は数えるほどだし、縁のあるものもまた多くない。みんながみんな世界一周の旅に出られるわけではないように、料理も世界一周というわけにはいかない。きっと私は、モザンビーク料理も、パラグアイ料理も、ラトビア料理も知らないまま一生を終えることになるだろう。それを悲しむべきことなのかどうか、少し迷うところだけど。
料理は冒険であり、出会いであるとするならば、美味しさは二の次で常にチャレンジ精神を持って関わっていくべきだろう。作るのも食べるのも。美味しいものを食べるのは、たまにでいい。それよりもまだ食べたことがないものを優先的に食べていく方が、精神的な糧になる。いつも行く喫茶店で別のものを注文してみるとか、ファーストフードの新商品を試してみるとか、コンビニでまだ食べたことがないカップ麺を買うとか、チャレンジの可能性は日常の中にたくさん潜んでいる。サンデー料理もその精神を忘れないようにしたいと思う。
以下は、私のケーキ作りチャレンジの記録と失敗の変遷だ。料理に関しては小さくまとまりつつ私も、ことケーキとなるとド素人以下の無惨なものとなる。これまで作ること約10回。いまだに一度も成功したことがない。いつも違うパターンの失敗になる。同じものを作ろうにも再現性がないので作れない。ケーキ職人のハルウララ状態。引退の日は近いか!?

世の中では抹茶ブームということで(?)、抹茶ケーキに挑戦してみた。一見上手くいっているように見えるかもしれないけど、しっかり失敗している。ベーキングパウダーを入れて、まずまずふくらんだものの、レンジの中で膨らみすぎて小爆発を起こした。上部がカリカリになって、中身に火が通らずに半生状態になってしまったのだ。見た目がよかっただけに残念な失敗だ。ただ、このときまでは次にもう一度作れば今度こそ成功しそうな気はしていたのだった。

イメージの中では、クレープとホットケーキの中間くらいのやつに、生クリームを挟んだら美味しいんじゃないかと思って作った、名前のないケーキ。愛知県知立市に「大あん巻」という銘菓があって、それを頭に入れて臨んだものの、無惨な結果に終わった。
一番の敗因は、焼きたてのホットケーキに生クリームを挟んで巻いたところだ。ちょっと考えれば分かることだけど、暖かいケーキに生クリームを巻いたら溶けるのは当たり前の話だ。巻いてるそばからドロドロになって、真夏のソフトクリームのようにタチの悪い食べ物になってしまったのだった。あと、ケーキを巻いて上から生クリームを入れるのが筋というものだ。ケーキにクリームを載せて、溶け始めた状態でのり巻きのように巻けると思うのが大間違いだった。
ケーキ自体も、中途半端な厚みがある分パサついた感じで、これはまずかった。ホットケーキの素はあまり膨らまないから、こんなに厚く焼いたら固いのは当然だ。このあたりから私のケーキ作り職人としての地位は大きく失墜を始めることになる。

このときは生クリームをやめて、スポンジケーキだけで勝負することにした。しかし、黒豆ココアを入れすぎたのか、他の原因があったのか、とにかく膨らまなかった。パサパサのガチガチ筋肉質のココアケーキに仕上がって、なんだこりゃと作った本人もびっくり。持久走を走り切ったランナーに差し入れしたら、こんなもの飲み込めるかと腹立ち紛れに地面にたたきつけられるに違いない。
良く言えば中身がギュッと詰まっているケーキという言い方もできるけど、私が目指してるのはもっとふわっとした柔らかい食感のものだ。こんな筋肉ムキムキのケーキを生んだ覚えはありません、と突き放したくなる。
とにかく失敗の原因さえも見失って、先の展望が見えなくなった。レンジの熱の問題なのか、手動のかき混ぜでは泡立てが充分ではないのか、粉の混ぜ方がよくないのか、たぶん、その全部なのだろう。ふんわりケーキが食べたい。

普通の小麦粉じゃダメなのかと、半分インチキするつもりで買ったスポンジケーキの素で作ったケーキは、今まで見たことがない失敗ケーキとなった。なんでー?
説明書通りにやったのに、まったく膨らまない。ケーキの素が膨らまないまま型の中でがっちり焼き上がった。そして、分離した。なんなんだ、この分離は。上の方が黄色くてやや柔らかく、下半分が超絶固い。伊達巻き卵のガチガチ決定版みたいな固さを誇った。ものすごい密度だ。これぞ、スポンジケーキ。このまま食器も洗えそうだ。上半分はぐちゃっとして変に柔らかいのも気になった。
もはやこれはスポンジケーキの域を超えた何かだった。上の黒豆ココアケーキが喫茶店で出てきたら怒っただろうけど、これが出てきたらあまりの不思議食感にしばし考え込んで、逆に納得してしまいそうだ。こういうものなのかな、と。とにかくこれは、私が今まで口にしたことがないケーキだったことは間違いない。もう一度作っても、たぶんこんなふうにはならないだろう。何がどういけなかったんだろう。
長く生きていると、その途中で自分の思いがけない才能に気づくことがある。自分ってこんなことが得意だったんだ、知らなかったなと。逆に、思っても見なかった欠点を発見して愕然とすることもある。私の場合、それがケーキ作りだった。人類の中で私のケーキ作りの才能は明らかに下から数えた方が早い。ちょっとびっくりだ。スポーツは得意なのに、高校の修学旅行でスキーがまったく滑れるようにならなかったとき以来の衝撃かも。
今後の私のケーキ作りはどこへ向かうのだろう。出来はケーキに聞いてくれ状態のノーコンケーキ職人でいいのだろうか。突然知り合いからケーキ屋を譲られることになったとしたら、そのケーキ店はひと月でつぶれる。今のところ光は見えない。
それでもケーキをまだまだ作りたいと思うというのは、実は私はかなりケーキ作りが気に入っているということだろう。下手の横好きってこういうことだったのかと初めて納得した。
このまま続けていけば、3年後くらいには小5の女の子くらいにはなれるだろうか。どれだけ作っても、ケーキ作りが趣味という主婦の人には勝てそうな気がしない。でも、人生何が起こるか分からない。大学に入るまでは文章を書く才能がカケラもなくて、読書感想文が大嫌いだった私が、今ではこうして毎日長々と文章を書いている。それも日記を10年以上毎日書き続けたおかげだ。何事も続けていさえすれば、いつかはなんとか格好がつくものだ。もしかしたら、10年後の私はケーキ屋のオヤジになってるかもしれない。
料理もケーキも、まだこれからだ。もっと上手くなりたいという気持ちが続くうちは作り続けていこうと思っている。ケーキ安打製造機と呼ばれる日は遠くて近いか!?