
伊勢の内宮近くに宇治神社(地図)がある。
宇治橋前に建っている鳥居の正面にある駐車場を少し奥に行った先にあるのだけど、人の流れを見ていてもこちら方面に歩いていく人はほぼいない。
足神さんとして一部では知られているものの、伊勢の神宮を何度も訪れたことがあるという人でもこの神社の存在を知らない人が多いんじゃないだろうか。
地元宇治地区の人たちにとっての氏神様というと、この宇治神社がそれに当たる。
神宮は皇室の神であり、日本人全体の氏神のような位置づけなので、宇治地区の神社ではないということだ。
私もそれまで知らなくて、今回初めて訪れたのだった。

足神さんはわりと高い場所にあって、坂道と階段を登っていかないといけない。本当に足が悪いとお願いする以前にたどり着けない。

伊勢の内宮と外宮は平成25年(2013年)に式年遷宮が行われたのだけど、ここ宇治神社は平成28年(2016年)11月に社殿や鳥居が新調された。
訪れたのはその翌年の12月ということで、まだけっこう新しさが残っていた。

足神さんとして知られている宇治神社ではあるけど、本体は山神社で、大山祇命(オオヤマツミ)を祀っている。
もともとの名前は宇治山神社で、以前はおはらい町の楓神社がある場所(地図)に鎮座していた。
内宮末社の那自賣神社(なじめじんじゃ)の旧地という説と、1660年(万治3年)の洪水で神路山にあった小祠が流れ着いたのでここに祀ったという説がある。
明治になって村社に列格。内宮の門前町の館町・今在家町・中之切町・浦田町の氏神だった。
明治16年(1883)、不動明王院(廃寺)の鎮守だった弓場天神を境内に移す。
明治41年(1908年)に4つの町で祀られていた神社などを合祀し、明治43年(1910年)に中之切町にあったものを現在の今在家町に移した。

現在、本社には以下の神が祀られている。
玉移良比賣神(タマイラヒメ)、御裳須曽姫神(ミモスソヒメ)、豊玉比賣神(トヨタマヒメ)、素戔嗚尊(スサノオノ)、天兒屋根命(アメノコヤネ)、速秋津日子神(ハヤアキツヒコ)、速秋津比女神(ハヤアキツヒメ)、新川比賣神(ニイカワヒメ)、火産霊神(ホムスビ)、水波賣神(ミズハノメ)、神名不詳一座(石津賀神社の祭神)、応神天皇(ホムタワケ)、天見通命(アメノミトオシ)、大職冠鎌足神霊(タイショクカンカマタリ)、和気清麿神霊(ワケノキヨマロ)、菅原道真神霊(スガワラノミチザネ)、楠正成神霊(クスノキマサシゲ)、彌武彦神(ヤタケヒコ)、羽倉東麿神霊(ハクラアズママロ/荷田春満)、岡部真淵神霊(オカベマブチ/賀茂真淵)、本居宣長神霊(モトオリノリナガ)、平田篤胤神霊(ヒラタアツタネ)。
いずれも4つの町にあった無格社の神社の祭神だ。
三重県は明治末の神社合祀政策に積極的に協力して合祀を断行した県で、それまで1万社以上あったものを1千社にまで減らしてしまった。9千社も取りつぶして合祀したため、名のある神社では10柱も20柱も祀るということになっている。
失われた9千社の中には式内社も含まれていて残念ではあるのだけど、一県に1万社はさすがにちょっと多すぎたかもしれない。

足神さんに供えられた絵馬とわらじ。
足が治りますようにという願いと、足が速くなりますようにといった願いが両方ある。
三重県伊勢市出身の野口みずきは2004年のアテネオリンピックの前に足神さんを訪れてわらじを奉納して祈願をしている。金メダルを獲ったときはこの神社もかなり話題になったようだ。
2016年の建て替えのときも再訪してお礼参りをしたそうだ。

足神さんといわれているのは館町にあった足神神社で、祭神として宇麻志阿斯訶備比古遅神(ウマシアシカビヒコヂ)を祀っている。
天地開びゃくの造化三神の次に現れたとされる神で、宇麻志(うまし)はよいもの、阿斯(あし)はすくすくと真っすぐに育つ葦のこと、詞備(かび)はカビのことで芽吹くものという意味があるとされる。
阿斯=葦=足の連想で足の神ということになったのだろう。
上の写真に写っている石が撫で石と呼ばれており、足の悪いところと石を交互に撫でると足がよくなるといわれている。



蓬莱稲荷はもともと蓬莱家の社で、以前は五十鈴川郵便局近くにあったものを明治43年(1910年)に現在地に移した。
足に関する願い事がある方は一度訪れてみてください。内宮に参拝したついででも。
【アクセス】
・JR/近鉄「伊勢市駅」から三交バス「内宮」で下車。そこから徒歩約5分
・駐車場 なし
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