レトロとモダンがナチュラルシェイクされた足助の町で誰か昭和を想わざる - 現身日和 【うつせみびより】

レトロとモダンがナチュラルシェイクされた足助の町で誰か昭和を想わざる

足助の町-1

OLYMPUS E-1+SIGMA 18-50mm(f3.5-5.6 DC), f6.3, 1/30s(絞り優先)



 カタクリを堪能したあとは、足助の町並みを散策した。
 国道153号線は、古くから三河と信州を結ぶ重要な街道だった道で、伊奈街道または三州街道(明治以降は飯田街道)と呼ばれていた。あるいは別名の中馬街道(ちゅうまかいどう)の方が通りがいいかもしれない。
 中馬というのは、江戸時代に馬で荷物の運送をしていた信州の業者のことで、彼らが通る道ということでそう呼ばれるようになった。信州の米や煙草を三河に運ぶ代わりに三河の塩を運ぶ道として中馬街道沿いは発展を遂げることになる。三河でとれた塩は矢作川を上って足助に運ばれ、ここから伊那、飯田の信州に運ばれていった。江戸時代にはここに14軒の塩問屋があったそうだ。
 人馬の往来が多くなるにつれて、足助は街道最大の宿場町となっていくことになる。それ以前の平安時代には足助氏一族がこのあたりにいくつかの城を支配していた。15世紀には鈴木氏が足助城を築き、のちに武田信玄軍に攻められ、徳川家康軍の領地となるなど歴史は古く、必ずしものんびりとした山間の町というわけではない。
 そんな過去に思いを馳せながら、町並みを見ながらゆっくり歩くことにしよう。

 巴川沿いのいわゆる香嵐渓から見て足助の町は北に位置している。駐車場の前の道路を一本渡って細い道を入っていくと、足助川沿いに中馬街道はある。古い町並みが残っているのは約2キロほどで、宿場町の面影を残す旅籠や商店などが点在している。まずは「商工会」に置いてある散策マップを手に入れてから歩き始めるといい。町の入口近くのポストのある建物がそうだ。
 市や町が事業として始めた町並み保存ではなく、町民の自然発生的なものなので、馬籠や妻籠のような観光地とは違う。感じとしては、名古屋市緑区の有松にやや近い。恵那の大正村ほど洗練されてはいない。
 何年か前から始まった「中馬のおひなさん」という古いおひな様を各家庭や店が展示して見てもらおうというイベントも、町民のアイディアから始まったという。こちらの方も年々知名度が上がって、訪れる人も多くなっているようだ。
 江戸時代の宿場町風情と昭和の香りが渾然となり、そこに平成が混ざり込んで、いい意味でのごた混ぜ感がある。本当に古くからの建物もあれば、ただ単にうち捨てられて古びてしまったものや、昔風に改築されたニセモノ風のものもあったりして楽しい。けっこう笑える要素もある。
 上の写真は、築200年の幕末の頃の旅籠「玉田屋」で、現在でも現役の宿屋として営業している。部屋数は6で、一泊8,500円だそうだ。2階の手すりにもたれかかったら下に転げ落ちるかもしれない。
 他にも三島屋、山城屋などの旅館が残っている。

足助の丸ポスト

 古い町並みには丸ポストがよく似合う。見つけただけでも3本残されていた。大きな郵便が入らないという不便さはあるだろうけど、こういうのを見ると嬉しくなる。

マンリン書店

 足助の町並み紹介では必ず登場する有名な「マンリン書店」。マリリンでも、マンドリンでもなく、マンリンなので間違えないようにしたい。店の屋号が萬屋で、当主は林右衛門を代々名乗ったことで萬林、つまりマンリンとなったそうだ。
 古い蔵を改造した建物で、こだわりの外観がいい。冷やかしに入るのはややためらわれるけど、中は基本的に町の本屋さんなので、何か買う目的があればひるむことはない。店主の趣味の本も取り揃えているそうなので、そういう珍しい本を見つける楽しみもある。看板に彫られた「典籍」というのは、書籍などと同じく本を指す言葉で、貴重な書物のことを指すことが多い。そのあたりにもオーナーの姿勢が表れている。

マンリン小路

 マンリン書店のとなりには、足助の町一番の見どころといえるマンリン小路がある。宗恩寺へと続く黒板と白い塀の土蔵に挟まれた小路は、ここだけを切り取ってみるととても平成には見えない。わずかに50メートルほどとはいえ、この坂道を歩くと前時代トリップ感を味わうことができる。
 マンリン書店から蔵が4棟続いていて、ギャラリーや喫茶ルームになっている。ギャラリーは年8回の展示入れ替えで、お茶券付きで500円だそうだ(見学だけなら自由かも)。
 宗恩寺は今回省略してしまったけど、上からは足助の町並みが見渡せるビューポイントだそうだ。

名古屋牛乳

「名古屋牛乳」の店がこんなところに。しかも、すごく古い店舗だ。名古屋牛乳ってこんな歴史あったっけ。確か、小学校の給食のときに出た瓶牛乳が名古屋牛乳だったんじゃないだろうか。どういうわけか当時のちびっこは牛乳のふたを集めていた。そんなもの集めて何が楽しいんだと今では思うけど、少年というのは何かを集めずにはいられない生き物らしい。
 それにしても名古屋牛乳というのは最近まったく見かけない。まだ営業してたんだ。今でも近所のスーパーに売ってるんだろうか。さすがにコンビニには置いてないだろう。
 瓶の牛乳のというのは何故か美味しかったような記憶がある。今飲むと味はどうなんだろう。紙パックのものと変わらないのか、それともやっぱり違った味がするんだろうか。今さらながら、このとき飲んでおけばよかったと思う。次に行ったときは必ず飲んでみよう。もちろん、姿勢はお決まりの肩幅に足を開いて左手を腰に当てて一気に飲み干す正しいスタイルで。そんな私を見ても、鼻から牛乳を吹き出さないでください。

足助の赤鳥居

 唐突な赤鳥居と昭和の建物。前を横切る昭和のおじさん。
 鳥居の向こうは駐車場しか見えていなかったのだけど、この先を進むと「お釜稲荷」というのがあるようだ。
 右はいかにも昭和モダンという風情で懐かしい。タイル張りの壁というのを久しぶりに見た。そういえば昔こういうのがけっこうあった。今はまったく見かけない。タイル張り自体はあるのだろうけど、今のはもっと洗練されている。昭和の時代はこれがモダンだったのだ。古いアパートの流しとかもこんな感じだった。
 足助の町並み散策はこのあたりで終点となる。ぷらぷらと店を見たり写真を撮りながら歩いて1時間くらいだろうか。なかなか楽しめてよかった。カタクリとセットで見てちょうどいい。

 足助を楽しむ年間スケジュールはこうだ。2月から3月の中馬のおひな様から始まって、3月終わりのカタクリ、4月の春祭りの桜、夏は足助川や巴川で水遊びや鮎釣りをして、10月は足助祭り、秋は香嵐渓の紅葉を昼と夜楽しんで締めくくる。散策スポットとしては、中馬街道、足助の町並みの他、香積寺、三州足助屋敷(明治時代の足助の農家を復元した民族博物館500円)、足助城、飯盛山、足助八幡宮などがある。
 季節の野草や野鳥、虫なども豊富で、足助は香嵐渓の紅葉だけはなく、多くの楽しみがあるから、近場の人はぜひシーズンオフにも訪れてみて欲しい。ついでに香嵐渓ヘビセンターも寄るといいだろう。って、そんなものとっくになくなってるぞ。は虫類専門のテーマパークとしてかつては賑わっていたのだけど、1993年に閉鎖されてしまった。お客が減ったというだけではなく、は虫類の補充ができなくなったというのがちょっと悲しい。コブラ対マングースの決闘が呼び物のひとつだったのを思い出す。行ってきた知り合いから財布に入れておくとお金持ちになるというヘビの抜け殻のお守りをもらったのに、あれはどこへいってしまったんだろう。
 それにしても、やはり一生に一度は香嵐渓の紅葉を見ないといけないだろう。ものすごい渋滞に怖じ気づいていまだに一度も見に行ったことがない。自転車で行くには遠すぎる。スクーターのレンタルってどこか近所でしてるところないだろうか。今年こそ、決死の覚悟で挑戦してみようか。ツレを誘えば渋滞も乗り切れるだろう。
 今年の秋、香嵐渓で私を見かけたら、気軽に声をかけてください。あの状況では、まず、見つけられないと思うけど、合い言葉は「コブラ」といえば「マングース」で。
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コメント
非公開コメント

こういう町並みが凄い好きなんですよねぇ・・
「玉田屋」は絶対に泊まりたい。あの二回の手すりに座りながら
日本酒や焼酎を飲む・・って呑めないんですけど・・
じゃあ長いキセルでタバコをふかす・・・ってタバコもダメなんですけどね。
花の慶次のイメージなんですけどね。

2007-04-03 14:06 | from ビアンキ

かぶいて候スタイルで

★ビアンキさん

 古い江戸の町並みが好きなんですか。
 じゃあ、足助は気に入ると思います。
 もっとオススメは、岐阜県の妻籠(つまご)です。ここは江戸の宿場町の面影が色濃くて素晴らしいですよ。
 近くの馬籠はあまりにも観光地化されてしまってるけど、妻籠の方は人も少なめで、江戸時代にタイムスリップ気分です。

 花の慶次なら、傾奇者スタイルで町を歩かないといけないですね。
 かなり注目の的になるけど(笑)。

2007-04-04 03:46 | from オオタ | Edit

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