
名古屋市緑区にある成海神社(地図)。
訪れてみるまであんなに立派な神社だとは想像していなかった。
神社としての姿、由緒、歴史、どれをとっても申し分ない。名古屋を代表する神社のひとつと言っていいと思う。そんな神社にまだ行ったことがなかったことを詫びたい気持ちにもなった。
『延喜式神名帳』にある愛智郡成海神社で間違いない。創建は686年で、祭神はヤマトタケル。元地は現在地から南に500メートルほどのところで、室町時代の1394年に鳴海城を築城することになり、今の場所に移された。
686年は、熱田神宮から盗まれたのち取り戻されて宮中にとどめ置かれていた草薙剣が熱田神宮に戻ってきた年だ。ヤマトタケル東征にゆかりのある鳴海の地にこの神社は創建された。
詳しい歴史などについては、神社サイトの成海神社のページで。

南東の一の鳥居前から入って少し進んだ先を右に折れると二の鳥居がある。
『尾張名所図会』を見ると、江戸時代は今とは逆の南西から入って左に折れて二の鳥居をくぐっていたようだ。

段々上って拝殿を目指すのは、昔も今も変わっていない。境内はけっこう勾配がある。

この神社のよさは、神階の高さもあるのだろうけど、それだけではなく、神社の姿として美しいことが大きい。社殿だけでなく、境内も、植木も、参道も、すべてに手入れが行き届いている。無粋な看板や、雰囲気を壊す車止めのたぐいもほとんどない。
これは代々ここを守り育ててきた人たちの功績と言っていい。どこをとっても好感が持てる神社だ。

まとめられているものの、境内社がずらりと並ぶ。
氷上社・源大夫社合殿、八幡社、八劔社、住吉社、今宮社、愛宕社、風神社、北野社、子安社、神明社、熊野日向社、宝田社、白山社、山神社、道祖祓島社、御井社、日割金刀比羅社。


東宮稲荷もとても立派で、これだけでも独立できるくらいだ。



旧地にあった鳴海城は1590年に廃城となったと伝わる。
その後、御旅社として天神社(あまつかみしゃ)が建てられた(地図)。
この旧地もぜひ訪れておきたい場所だ。


神社が創建された頃、ここは高台にあり、すぐ下は鳴海潟と呼ばれる海だった。
東征を終えたヤマトタケルは、火高で帰りを待つミヤズヒメのことを思って歌を詠んだ。
「鳴海浦を見やれば遠し火高地にこの夕潮に渡らへむかも」
そして、鳴海潟の浜から舟を漕ぎ出し、火高へと向かった。
成海神社がこの地に建てられたのは、その故事にちなんだものだ。
風景は大きく変わってしまったけれど、ヤマトタケルとミヤズヒメの物語は、遠い未来の私たちにも語り継がれている。
【アクセス】
・名鉄名古屋本線「鳴海駅」から徒歩約15分
・駐車場 あり(無料)
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