おせち料理もどきで2007年サンデー料理は開幕

風物詩/行事(Event)
おせちもどきサンデー

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 2007年最初のサンデー料理は、やっぱりカレーだろうと思ったけどやめて、おせちにした。カレーもいいけどおせちもね。
 田舎でひととおり食べてきたのだけど、買ってきたものだったから意外と食べるものがなかった。そもそも、生まれてこの方、心底美味しいと思えるおせち料理を食べたという記憶がない。家が貧乏だったのか、私の舌が貧しかったのか、単におせちとの相性が悪かったのか。それこそ、2日目、3日になってくると、おせちもいいけどカレーもね! と言いたくなるのが常だった。
 けど、今年の私はちょっと違う。おせちそのものに問題があるのではなく、おせちの内容と私の食べたいものが合致してないだけだという大事なことに気づいた。じゃあ、自分が食べたいおせちを作ればいいではないかと思いついた。そうだー、そうだー、まったくだー。
 ノーマルおせちじゃつまらないから、アブノーマルおせちでいってみた。なんとなくおせちかなサンデー。おせちっていえばおせちだけど違うっていえば違う料理が私の目の前に並ぶ頃には、もはや引き返せないところに来ていた。このまま進んで最終的には重箱に詰めればおせちだろうという強引な論理で完成させたのがこれだ。構想2日、総制作時間4時間。今、おせちの歴史が変わる。

 まず四角に重箱に入っているのが、ツルとカメだ。
 かまぼこの飾り切りに1時間かかったぞ。3枚完成させたところで体力の限界、気力もなくなり、ここにかまぼこ職人を引退することを決意した。
 カメは甲羅にシイタケ、頭と手足はかまぼこを使っている。だし汁、しょう油、酒、みりんで煮た。
 その左は、白身と赤身の紅白あぶりカルパッチョ。
 白身と赤身の切り身を叩いて伸ばして、軽くあぶり焼きしたあと、タレにまぶす。タレは、オリーブオイル、レモン汁、マスタード、ハチミツ、黒コショウ、白ワインを混ぜたもの。
 左下は丸い背中のエビの照り焼き。
 殻と背わた、はらわたを取って軽く下茹でしたあと、小麦粉をまぶしてフライパンで焼きながら、しょう油、酒、みりん、カタクリ粉で作ったタレを塗って照りをつける。ちょっと焦がしてしまった。
 真ん中の黄色いのは、ふんわり錦卵と、きんとん茶巾。
 卵3個を固ゆでのゆで卵にして(10分くらい)、白身と黄身を分けてそれぞれ裏ごしする。そこに砂糖20gくらいを半分ずつ混ぜて、塩も加えて、小さいタッパーなどに重ねて入れる。レンジで1分か2分加熱して、取り出したら切り分ける。牛乳パックで型を作ってもいい。
 きんとんは、皮をむいたサツマイモを適当に切り分けてレンジで温めてつぶす(5分くらい)。卵黄1個、みりん、だし汁、塩、コショウを混ぜて、ラップで茶巾状にしてレンジで1-2分。甘栗があればそれを加えると栗きんとんになる。
 お椀は、京風の白みそ雑煮。
 サトイモ、大根、ニンジンを下茹でして、温めただし汁に移して、白みそで味を付ける。モチは丸い形に切って、5分ほど煮てから入れる。京都ではモチは焼かないのが基本となる。

 味の方はどうだったかというと、これはもう大成功と言っていい。自分の食べたいものを食べたい味付けで作ってるから、美味しいと感じるのも当然のことだ。押しつけられたおせちじゃない。
 それにしても、おせち作りはなんだかとっても楽しいではないか。性に合ってるのか、いろんなものを少量ずつ作っていくのが面白い。冷めてもいいものが多いから、ひとつずつ順番に作っていけるのもいい。飾りかまぼこは確かに切って形を整えるのは大変だけど、図画工作みたいで楽しめる。カメの形を作ったりするのも。
 今回、錦卵が一番気に入った。柔らかくて口の中で崩れる食感は独特のものがある。ゆで卵とも卵焼きともまったく違う第三の卵料理としての地位を私の中で確立した。黄色と白のツートンは見た目もきれいだし、これは人に作って出したいとも思った。
 来年の話をするのはいくらなんでも早すぎるけど、もしサンデー料理が続いていたら、今度はもっと本格的に作ってみたい。来年は五重箱に挑戦だ(本気か?)。

 おせちは漢字で御節と書く。これは本来、節句のことであり、そこで神様に供え物をして、それを人間もいただくという行事から来ている。今でも残っている端午の節句や桃の節句がそうだ。他にも、人日(1月7日)、七夕(7月7日)、重陽(9月9日)があり、そのときの料理を御節供(おせちく)料理と呼んでいた。ただしこれは平安時代に朝廷で行われていた行事で、おせちが庶民のものとなるのはずっと後の江戸時代になってからだ。その頃には本来の意味から少し離れて、一年の最初の正月に食べる料理のことだけをおせち料理と呼ぶようになっていた。
 五穀豊穣を願うという意味で、5並びがよいとされ、五法、五味、五色をバランスよく供えつつ食べるのが基本となっている。のちに重箱になった際も、おせちといえば五重箱と決まっていた。
 あまり火を使ったり騒がしい料理がないのは、節句の神様は火が苦手という理屈をつけつつ、実際はいつも料理している奥さんたちを正月三が日くらい休ませてあげようという知恵でもあった。だからおせち料理は日持ちのいいものがほとんどだ。
 鎌倉時代以降は、武家がおめでたいときに食べる「祝い膳」とも結びつき、江戸時代には庶民の風習となり、おせちは今のような形になった。重箱となったのは、たった200年ほど前のことで、これは、めでたさを重ねると意味を持っている。
 細かいしきたりを言えば、一の重には黒豆や数の子などの祝い肴、二の重には伊達巻やきんとんのような甘いもの、三の重には魚や海老などの海の幸、与の重(四は死につながるといって避ける)には野菜の煮物などの山の幸というように決められている。
 使われる食材にもそれぞれ意味というか語呂合わせがある。黒豆なら一年中マメに働けるようにとか、昆布巻きは喜ぶとか、エビは腰が曲がるまで長生きできるようにとか、あとは数の子やサトイモなどは子だくさんの象徴だったりする。紅白のものや、きんとんなどの黄金は色から来るめでたさを表している。すべては人の願いがこめられているものばかりなので、ひとつひとつ意味を噛みしめながら食べたい。けど、おせちを食べながらやたらうんちくを語る人になると親戚に煙たがられるので注意が必要だ。

 最近はおせちも百貨店や料亭などのものを買うことが多くなって、地方色が薄れてしまってはいる。本来おせちは土地によっても家庭によってもそれぞれ特色があったものだ。特に関東と関西では入れるものがけっこう違う。西の朝廷文化と東の武家文化の違いというのもあるだろう。家庭によってもそれぞれだから、人のうちのおせち料理というのはなかなか興味深いものがある。同じ料理でも味付けがかなり違っていて驚く。
 まあ、しかし、日常的にごちそうがあふれてる現在の日本では、正月のおせちが特別ごちそうだという家庭も少なくなって、だんだん意義が薄れつつある。今のところ、なんとなく気分で習慣を続けているけど、100年後はどうなっているか分からない。私たちが生きている間は、おせち文化は残り続けるのだろうか。
 こうなったら私も微力ながらおせち伝統を継承する助力をしたいと思う。毎年作り続けて、だんだんグレードアップしていこう。今年も一年、ノーマルサンデー料理を作りつつ、最後はいいおせちを作れるところまで腕を上げたい。自分で納得できるものができたら、田舎に持っていってもいい。
 2008年の私に乞うご期待。
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コメント
  • 2008年もよろしく~♪
    2007/01/08 20:50
    構想2日、総制作時間4時間!!すごいな~。
    かまぼこの飾り切りは超!力作ですね。
    オオタさんは手先が器用なんですね☆

    我が家のお雑煮は、お醤油味でホウレンソウは必ず入れて丸いお餅を焼いて入れます。名古屋は?
    白味噌仕立ての京風のお雑煮も食べてみたいな~♪

    おせちを食べながらうんちく?語らずにはいられない私です(笑)
    栗きんとん食べると、金運アップだよ~!って(^^;;
    こんな私ですが、煙たがらずに、今年もよろしく・・
  • 自家製おせちを持ってうんちくを聞きに
    2007/01/08 23:33
    ★miyuさん

     こんにちは。
     おせち料理って、本格的に作るとすごーく時間がかかりますね。
     miyuさんのやつも相当かかったんじゃないですか?
     私のおせちもどきでは全然かなわなーいです(笑)。
     品が多くて、作る量は少なくても、手間は同じですもんね。
     私も来年は正統派を作ってみようかな。オーソドックスなものを美味しく作るのは難しそう。
     それにしても、miyuさんがおせちうんちく女王だとは知りませんでした(笑)。
     自分で作ったおせちを持参してうんちくを聞きに行きたいくらいです。

     雑煮も地方によってかなり特色がありますね。
     うちは三重県なんだけど、すまし汁で餅は焼き餅かな。具はダイコンとかまぼことほうれん草って感じで。
     京風の白みそ、丸餅を煮たものってのは初めて作って食べました。これも美味しいもんですね。元々白味噌好きだし。
     名古屋の雑煮はどうなんだろう。考えたら名古屋の本格雑煮って食べたことないかも。まさか赤味噌じゃないと思うけど。(^^;
  • 2007/01/09 16:31
    これは素晴らしい・・
    正直、自分のしたいことをことごとく体現されているのでうらやましい限り。
    あーじっくり料理をする時間が、寺や神社めぐりをする時間が欲しい!

    おせち料理は正直、子供の頃からあまり好きなものがなく
    おまけに最近、おせち料理とは無縁な私です。

    去年は二日から友人の家でおせち料理を頂き
    今年は一日にお邪魔して雑煮を頂きました。
    しかし雑煮は地方だけでなく家ごとによっても味が違いますよね。
    その家の特色が出ています。来年は、思いっきり休みを取って
    いろんな人の雑煮を食べ歩きたいと思います。
  • あんこ餅雑煮?
    2007/01/09 22:21
    ★ビアンキさん

     おせちは、作るのが面倒な割に食べるものがなくて、きっと世の中の奥さん、お母さんは力尽きるんでしょうね(笑)。
     最近は形だけ食べておけばいいっていう感じで、よくて三重なのかな。
     私も、田舎へ行ったときに、親戚が買ってきたものをいただくだけというのがここ最近です。だんだん親戚一同も高齢化が進んで、自分たちで作る気力を失いました(笑)。
     思えば、15年くらい前までは、臼と杵で餅もついてたなぁ。(^^;

     おせちおよばれツアーは楽しそうですね。
     各家庭に小皿と箸を持って回りたいです(笑)。
     雑煮は、いろいろあるんだけど、ハズレが少ないのがいいですよね。
     ただ、どの地方だったかなぁ、中国地方だったか、あんこの餅が入った雑煮があるそうですね。もしかして、ビアンキさんのところもそうだったりしますか? あれはどうなんだろう。(^^;
  • 2007/01/10 13:07
    私のところはすまし汁がベースのいたって普通の雑煮です。
    あんこもちは確か香川県の友人が話して作ってくれました。
    ちなみに汁は白味噌でした。私はあんこ餅が好きなので案外イケます。
  • いつか香川へ行ったときに
    2007/01/11 03:18
    ★ビアンキ

     こんにちは。
     全国的にしょう油ベースのすまし汁ってのが雑煮の定番みたいですね。
     赤みそ文化の名古屋でさえそうなのだから。(^^;
     関西の白味噌確率はどれくらいなんだろう?

     あんこはそうそう、香川県でしたね。他にもあるのかなぁ。(^^;
     でも、白味噌のあんこ餅、美味しかったんですかー。一度食べてみたいな。自分で独自の作り方をするととんでもないのができそうだから(笑)、いつか香川へ行ったときの楽しみにしよう。
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