昭和区の藤成神明社と塩付街道のこと

神社仏閣(Shrines and temples)
藤成神明社入り口

OLYMPUS E-M5 + Panasonic LEICA 25mm F1.4



 名古屋市昭和区は個人的にあまりイメージがない区なのだけど、鶴舞公園も、八事興正寺も考えてみると昭和区で、まんざら無縁の土地というわけではない。桜名所の山崎川も昭和区を縦断しているし、御器所八幡宮尾陽神社も去年訪ねた。
 今日紹介する塩付通にある神明社は、この辺りの地名から藤成神明社と呼ばれている。藤成という地名は、尾張藩の附家老だった成瀬家から来ている。
 犬山藩初代藩主で犬山城主だったのが成瀬正成で、その長男の正虎がこの地で新田開発を行い、その際に藤成新田と名付けた。成瀬家は藤原氏の出ということで、藤と成と一字ずつ取って藤成としたという。
 1625年、父の死によって家督を継ぐことになった正虎は従五位下の隼人正に任じられる。近くにある隼人池は1646年に正虎が作った溜め池だ。隼人町の地名の由来もここからきている。
 藤成神明社の創建はよく分からない。藤成新田の鎮守として建てられたようで、五軒家にある五軒家神明社の創建が1632年というから、その前後ではないかと思う。
 祭神はアマテラスというけど、藤成神社とも呼ばれていたというから、もともとはアマテラスを祀る神明社ではなかった可能性もある。同じ昭和区にある川原神社から勧請したという話がある。川原神社は「延喜式」に載っている古い神社で、日の神、土の神(埴山姫神)、水の神(罔象女神)を祀っている。江戸時代中期以降に神明社が流行ったとき、うちも神明社にしてしまおうということになったのではないかと想像するけどどうだろう。

 神社から1本西に入った通りは、塩付街道と呼ばれる通りだった。塩を馬の背中に乗せて運ぶ道で、いつしかそう呼ばれるようになったという。
 藤成神社は現在、東を走る新道の塩付通に面している。社殿はちょっと珍しく東向きだ。ただ、塩付街道が通っていた時代は、そちらの通りに面していたはずで、そのときの社殿は南向きだったのではないか。境内を削ったとき、敷地が東西に細長くなったので社殿を東向きに変えたというのは充分考えられる。創建時から塩付街道に対して背を向けていたとは考えにくい。
 塩付街道が整備されたのは1596年頃とされている。江戸に幕府が開かれる少し前だ。
 この時代の名古屋は海岸線が今よりもずっと北の方にあって、鳴海や星崎あたりにはたくさんの塩浜があったという。そこでとれた塩を運ぶために整備されたのが塩付街道だった。北上して飯田街道を経由して信州方面へ。あるいは出来町から矢田を通って瀬戸方面、矢田から坂下、美濃方面へと塩は運ばれていった。
 鎌倉時代初期の山田荘の地頭だった山田重忠がどうして星崎あたりに城を築いたのだろうと疑問に思ったのだけど、その理由のひとつに塩の存在があったとすれば納得がいく。星崎はのちに東海道として整備される道沿いにあり、熱田湊と有松の中間あたりに位置している。交通の要衝でもあり、塩の流通を押さえるためだとしたら、城を築くのには最適の場所だったのだろう。

 名古屋城築城以降、名古屋城下に多くの新田が作られることになった。14ヘクタールあったとされる藤成新田もそのひとつだったわけだけど、現在その面影はほとんど残っていない。田畑の姿はなく、完全な住宅地になっている。
 塩付街道も往事の面影をとどめるところは少ない。ところどころに細い道が残っているだけだ。



神明社参道と鳥居

 東鳥居からの参道がカクカクしている。狭くなった敷地の中に鳥居や社殿を無理に詰め込んだようになっている。



神明社拝殿

 この神社に関する情報が少ないため、社殿などについても詳しいことは分からない。
 すごく新しいわけではなく古めかしくもない。戦後すぐくらいの再建だろうか。



神明社本殿の屋根




神明社境内社

 鬼王神社というのがあるらしいのだけど、これのことだろうか。
 それともこれは、山神社、八劔社、津島社、天神社などが集められた境内社だろうか。
 その他、龍神社、八百万社、月讀社などが合祀されているそうだ。
 鬼の字が入る神社はあまり多くない。名古屋では珍しいんじゃないだろうか。土地の神様を祀っていて、地元の人々は「おきよさま」と呼んでいるという。



神明社稲荷社

 稲荷社。



弘法堂と観音堂

 東鳥居から入ってすぐ左手に、弘法堂と観音堂がある。かつての神宮寺だろうか。
 普段は中には入れないようになっている。



仏像ミニチュア




鳥居と空




神明社鳥居の外

 機会を見つけて昭和区の神社めぐりの続きをやりつつ、塩付街道も少し行ってみることにしたい。
 
【アクセス】
 ・地下鉄桜通線「桜山駅」から徒歩約10分。
 ・無料駐車場 なし
 ・拝観時間 終日
 
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