
OLYMPUS E-M5 + Panasonic LEICA 25mm F1.4
名古屋市千種区の清明山交差点近くに愛宕神社(あたごじんじゃ)がある。大通りから少し入ったところにあってあまり目立たない。社殿が東向きなのは創建当時のままだろうか。
江戸時代中期に、尾張藩の火薬庫の守り神として建てられたという。
以前紹介した東区の須佐之男神社(東之切)から見て800メートルほど東へ行ったところだ。このあたりまで尾張藩の武家屋敷が建ち並んでいただろうか。
京都の人たちにとって愛宕神社は馴染み深いようだ。総本社は京都市にあって、火迺要慎(ひのようじん)の札を台所や飲食店などで貼っているところも多いという。地図で見ると鉄道も通ってない山の上といった感じなのに、京都の人たちは登山で参拝するのだろうか。
名古屋では境内社のひとつとして愛宕社を祀っている神社は多いものの、独立した愛宕神社として残っているものは少ない。名古屋市内で数社しかないんじゃないかと思う。全国には900社ほどあるそうだ。
火伏せの神として知られる愛宕神社ではあるけれど、元を辿ると必ずしもそうではない。山城国と丹波国にまたがる愛宕山の神を祀ったのが始まりで、神社というよりも寺だった。
本家の創建は700年頃。修験道の祖とされる役小角と、白山の開祖である泰澄によって朝日峰に神廟(しんびょう)が置かれたことに始まる。その後、781年に和気清麻呂らによって愛宕大権現を祀る白雲寺が建立される。
927年に完成した「延喜式神名帳」に載っている阿多古神社は、亀岡市にある愛宕神社のこととされているようだ。
いずれにしても神仏習合の色合いが濃い神社に違いない。
千種区の愛宕神社では、イザナミ(伊耶那美)とワクムスビ(稚産霊神)が祀られている。創建時からそうだったのかどうかは分からない。
ワクムスビはイザナミの子供で、トヨウケヒメ(豊受比売神)の母に当たる神様だ。
イザナミは火の神であるカグツチ(火之迦具土神)を生んだときに火傷を負ってしまう。その後、水の神ミズハノメ(弥都波能売神)を生み、続いてワクムスビを生んだ。
ワクムスビのワクは若さを表し、ムスビは結び、物事の生成などを意味すると考えられている。娘のトヨウケビメは伊勢の神宮外宮で祀られている食物を司る神だ。
どうして火薬庫の守り神としてワクムスビが選ばれたのかはよく分からない。イザナミも火や水に関係があるといっても火伏せの神というイメージでもない。
本家の愛宕神社ではこのほかに土の神である埴山姫神(ハニヤマヒメ)や天熊人命(アメノクマヒト)などが祀られている。

コンクリート造の社殿は戦後に建て直されたものだろう。


このへんを通りかかるのは午後や夕方が多いので、いつ見ても太陽を背にして日が当たらない神社という印象がある。午前中に見るともっと明るい神社に思えるだろうか。