
OLYMPUS E-M5 + Panasonic LEICA 25mm F1.4 / OLYMPUS 9-18mm
名古屋市中区松原一丁目に、クスノキさんと呼ばれる楠の巨木がある。樹齢は千年を超えると言われ、弘法大師お手植えという伝承がある他、織田信長がこの木に戦勝祈願をしたなどのエピソードを持つ。
楠は寿命が長く、巨木になりやすいことから熱田神宮などにも大楠が何本かある。とはいえ、こんな住宅地に残っているのは珍しい。
このあたりは熱田台地の縁(へり)にあたり、古くから人が暮らしていた土地だったとされている。かつては海岸線に近い場所だった。
平安時代になると荘園が作られ、戦国時代には日置城が置かれた。築城者はよく分かっていないようだけど、織田家の土地だったことは確かなようだ。
このあたりの松原という地名は、信長が植えた松林から来ているという。どうして信長がここに松を植えなければならなかったのかはよく分からないけど、明治時代にすべて枯れてしまったとのことで現在は松の木は残っていない。
千年前のこの地について上手く想像ができない。ただ、自然にクスノキが生えてくるようなところではないから誰かが植えたのだろう。この場所に古墳があったという説もあるくらいだから、何か特別な場所だったのかもしれない。
クスノキさんは第二次大戦の名古屋空襲で焼けて、木の幹が空洞になってしまった。それでも、そのまま枯れてしまわず生き残り、現在もまだ枝を伸ばし葉を茂らせている。
かつてここには雲龍神社があった。クスノキさんをご神木として、空洞の中に社を入れて祀っていたという。今は土台だけが残っている。
2002年に名古屋市が一方的にこの木を切って区画整理すると言い出した。しかし、住民の強い反対でクスノキさんは守られることになる。ただし、雲龍神社は廃止になってしまい、今は松原緑地と名前を変えている。
幹周り約9メートル、高さ約6メートル。
幹は空洞で枝を支柱で支えられているものの、まだ立派に立って生きている。クスノキさんは残った。

隣にあるクスノキの方がだいぶ若そうだけど、こちらは元気いっぱいでクスノキさんを守るように葉を茂らせている。


現在は柵で囲われていて中に入ることができない。神社があった頃は近くまで行くことができたようだ。遠巻きにしか眺められないのがもどかしい。もっと近づいて撮りたかった。


少し引いてみると神社があった名残が見て取れる。
古い写真を見ると入り口にはちゃんと鳥居もある。
2002年というと、散策のお供としてコンパクトデジを買って間もない頃だったろうか。この木のことを知ったのが今年に入ってからだから、どのみちチャンスはなかった。

堀川を挟んで西側から見たところ。
ちょうどコメダ日置橋店の裏手に当たる。
このあたりの裏道は一方通行だらけなので、車で行くと現地に辿り着くのにちょっと苦労するかもしれない。
最寄り駅は、地下鉄伏見線の大須観音駅か、名鉄名古屋本線の山王駅になる。
近くには松重閘門もあるので、あわせておすすめしたい。
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