
OLYMPUS E-M5 + Panasonic LEICA 25mm F1.4
今回は撮影テクニックについて少し書いてみたいと思う。具体的には、テクニカルな撮影方法をいくつか挙げてみる。
まず思いつくのがフィルターワークだ。
様々な種類のフィルターがあるけど、代表的なものとしてはPLフィルターとNDフィルターがある。
PLフィルター(C-PLフィルター)は風景屋さんの専売特許と思っている人が多いかもしれないけど、意外と使い道は広い。ショーウィンドーの映り込みを軽減したり、光の反射をコントロールしたり、シャッタースピードを落とすために使うこともある。PLイコール反射を取るというイメージは使い方の半分でしかない。むしろ光と色味をコントロールするために使うと考えた方がいい。
風景で使う場合は、空や海の色を濃厚にすることができるし、遠景の葉っぱや山の光の反射を抑えてコントラストを高める効果も期待できる。水の反射で使う場合は、効かせ具合が大事で、100パーセントと0パーセントの二者択一ではなく、50パーセントとか80パーセントとか、状況によって効果を使い分ける必要がある。
これからの季節なら紅葉の色を濃くすることにも使える。
NDフィルターはなんといってもスローシャッターだ。長時間露光をやるためにNDフィルターは必要不可欠で、重ね掛けもできるので3種類くらい持っておくといい。2枚ならND8とND400がオススメだ。
どんなシーンで使うかといえば、海の波打ち際とか、川の流れとか、夜の都会風景で車の軌跡を描くとか、道行く群衆をぶれさせるとか、止まっているものと動いているものの対比を描くためにNDフィルターが役に立つ。
流し撮り。
レースの車、列車、飛行機などが流し撮りに向くことは誰しも思いつくことだけど、動いているのなら何でも流し撮りはできる。三輪車の子供でも、街中を走っている普通の車でもいい。なんなら回転寿司でも。
明るい日中では流し撮りができないときもNDフィルターの出番となる。
流し撮りで一番難しいのは、飛行機の離発着だと思う。横の動きに斜めの動きが加わるからそれに合わせるのが難しい。特に夜は周囲の光源がバラバラの線になるので整理できるかどうかが鍵となる。
高速シャッター撮り。
流し撮りの対極で、シャッタースピード1/1000秒以上が高速シャッター相当といっていい。
野球でバットにボールが当たる瞬間とか、カワセミが水中の魚を捕らえた瞬間を撮るときなどは高速シャッターが必要となる。究極的に難しいのはボクシングの試合ではないかと思うのだけど、残念ながら私は経験がない。もし願いが叶うならリングサイドで一度撮ってみたい。
シャッタースピードに関していえば、すべてのシーンにおいてシャッタースピードをコントロールすることが大切だ。
たとえば、水面に落ちる雨を雨らしく撮るには1/60秒くらいがいいとされる。早すぎても遅すぎても雨らしく写らない。雪もそうだ。
水の流れを撮るには何秒で撮るのがもっとも効果的かなどは、経験がものをいう。滝の流れにしても、何秒で撮るかによって表情は全然違ってくる。そのとき、その場で正しい判断をできるかどうか。それもまた、撮影テクニックのひとつだ。
三脚とレリーズケーブル。
三脚は手持ちで撮れないときに仕方なく使うものなどではなく、テクニックとして使うものだということを認識しておく必要がある。三脚を使うことで撮れるようになるものがたくさんある。夜景や打ち上げ花火、渓流の流れ、星空など。
三脚に固執しすぎるとかえって自由度が低くなることもあるから三脚至上主義は嫌いなのだけど、三脚を使うからこそ撮れるものは積極的に撮っていくべきだとは思う。
星と風景を絡めた星景撮りだとか、一枚30秒くらいで撮ったものをコンポジットで重ねて星の軌跡を描くとか、三脚を使うことで広がる世界というものもある。
面倒がらずにレリーズケーブルも使った方がいい。まずブレないというのが一番の利点であり、シャッターチャンスを狙う場合も指でシャッターを押すよりレリーズで押した方が反応が早い。野鳥撮りのときなどもそうだと思う。
フラッシュワーク。
ストロボとか、スピードライトとか、呼び名はいくつかあるけど、とにかくフラッシュだ。これは避けて通れないし、避けてはいけないものだ。
フラッシュは暗いところで光を補うものという考え方は捨てていい。バウンスとワイヤレス発光こそがフラッシュワークだ。暗いところで直接フラッシュを当てることはなるべく避けたい。
室内なら天上バウンスや壁バウンスは必須テクニックだ。結婚式の披露宴だけのものではなく、日常的にフラッシュは使っていいし、使わないといけない。
もうひとつ、ワイヤレス発光もやるとやらないのとでは大違いで、カメラ本体から外付けフラッシュを離してワイヤレス発光させることでフラッシュの使用用途は大きく広がる。意図的にサイド光や斜光を作り出すのも簡単だし、トップやアンダーからの光も効果的に使えることがある。
使用は室内だけに限らないし、夜だけでもない。夜景と人物の両方に露出を合わせるスローシンクロや、逆光の光に対して直接フラッシュを当てる日中シンクロもある。昼間の逆光で昆虫を撮るときなどはハイスピードシンクロもよく使われる。
フラッシュを使わない方が雰囲気のある写真が撮れますなどというのはまやかしだ。フラッシュによって光と影をコントロールできれば、フラッシュを使わないより使う方がいい写真が撮れる場面は多い。人物撮影やブツ撮りなどは特にそうだ。
フラッシュを使いこなすのは確かに難しい。ライティングの専門知識も必要となる。ただ、ここはちょっと頑張らないといけないところだ。逃げてしまうと使いこなせないままで終わってしまう。それは自分の可能性を狭めることになる。最終的にはフラッシュを2つ以上使った多灯ライティングで光と影を自在にコントロールできるところまでいくのが目標だ。
レフ板を使った撮影。
これはフラッシュとの兼ね合いもあるのだけど、レフ板もできれば使いこなせるようになりたいテクニックのひとつだ。
レフ板というとモデル撮影が定番で、一般的に使っている人はあまり多くない。ただ、レフ板はブツ撮りや花の撮影などでも使えるから、一通りは勉強しておいて損はない。
光を当てる方向と光の強さをコントロールするのがレフ板の役割で、それはフラッシュの役割でもあって、状況によって使い分けるのがベストなやり方となる。両方使わないという選択をするなら、使わない方がいい明確な理由を説明できなくてはならない。
多重露光。
フィルム時代に好んで使われた手法だけど、デジタルになっていっそう手軽に使えるようになった。いくらでも試せるし、結果もすぐに見ることができる。
レタッチソフトでも同じようなことはできるとはいえ、カメラ内でやることで生まれる効果もある。はっきりしたイメージを頭の中で描けていないとできないことなので、イメージを作る訓練にもなる。
玉ボケと前ボケ。
細かいテクニックながら実践的に役に立つ。玉ボケは背景に木々の葉っぱなどがあると簡単に作り出せる。水面の場合は、できるときとできないときがある。
前ボケはやること自体は簡単なのだけど、本当に効果的に使うことができるかどうかがポイントだ。単にテクニックをひけらかすためだけの前ボケはいらない。上手く使えば画面をふんわりやわらかくする効果がある。
ボケの使いこなしも身につけたいテクニックだ。
飛びもの、落ちもの。
飛んでいるトンボやチョウなどを撮るのが飛びもの。落ちてくる紅葉のモミジの葉を撮ったりするものが落ちもの。私が勝手にそう呼んでいるだけなのだけど。
いずれも難易度は高い。トンボは慣れればまあまあ撮れるようになる。3年くらいやれば。落ちものは運次第ということもあって、更に難度が上がる。たとえばモミジの木の下で葉っぱが落ちてくるのを3時間待って2、3回当たるといった程度だ。
これまでやった中で一番難しかったのは、飛んでいるセミを正面から撮ることだ。一度だけ70パーセントくらいの当たりがあったけど、後にも先にもそれ一回しか当たってない。飛びゼミをジャスピンで当てられる人がいたら神がかっている。
なかなか自分の写真から脱却できないとか、万年中級者から抜け出せないと嘆いている人は、まだ全然いろいろな撮影に挑戦していないだけなんじゃないか。世の中にはたくさんの被写体があるし、上に紹介した撮影テクニックなどもある。思いつく限り一通り試してみてからでも遅くはない。まだ自分の被写体に出会っていないだけかもしれない。
テクニックがあって被写体があるのではない。被写体があってテクニックがある。撮りたいものを一番効果的に撮るにはどんなテクニックが必要なのか。先人たちの創意工夫の末にテクニックというのは編み出されてきた。あとに続く私たちは、ありがたくそれらを使わせてもらえばいい。
勉強をして実践して、写真を持ち帰って反省、点検をする。何が足りないのかを考え、次はどうやって撮ろうかと策を練る。足りない知識は更に勉強して補う。そうしてまたフィールドに出て試行錯誤をする。写真はそういう積み重ねだ。実践を積み上げて経験値となる。本を読んだだけでは分からないこともたくさんある。
テクニックを身につけるのは、自分の写真の可能性を広げるためだ。テクニカルな写真を撮って人に見せびらかすためではない。テクニックはないよりあった方がいい。少ないより多い方がいい。だけど、テクニックに溺れないように。すべてはいい写真を撮るために。