アリゾナ生まれの弁慶柱は三本締めの待ち構え中 2006年11月27日(月)

花/植物(Flower/plant)
巨大サボテン全景

OLYMPUS E-1+ZD 14-45mm(f3.5-5.6), f5.0, 1/30s(絞り優先)



 東山植物園の温室にある巨大サボテンを見ながら、これはどういうポーズだろうとしばし物思いにふける。ウルフルズ「バンザイ」を歌ってるところというには手が短すぎるし、もうお手上げさっていうのとはちょっと角度が違う。なんかこんな手の構えをすることあるよなぁと考えて、そうか、あれだ、と気づいた。みなさん、お手を拝借! よ~っお、チャチャチャッ、チャチャチャッ、チャチャチャッチャッ、はいっ! のときの構えじゃないか。そう思ったら笑えてきた。でもひとりで巨大サボテンを見ながらニヤついてる人は自分でもイヤなので、笑いはこらえた。それにしても、アリゾナ育ちのくせに日本の三本締めの構えをマスターしてるとは、やるな、弁慶柱(べんけいちゅう)。

 アメリカの西部劇などでお馴染みのサボテンである弁慶柱のふるさとは、アリゾナ州からメキシコにまたがるソノラ砂漠だ。世界最大級のサボテンで、大きなものは12メートルを超えるという。東山にあるものも相当大きい。8メートルくらいはあるんじゃないだろうか。1987年にやって来たということは、日本での暮らしもそろそろ20年になる。倒れるといけないというので、背中をポールに支えられて、後ろから輪っかで羽交い締めにされている。ちょっと苦しそうだ。離せってば、と短い手を必死に伸ばして抵抗してるようにも見える。
 とにかく成長が遅く、毎年ちょびっとずつしか伸びない。手が出てくるまで70年以上、こんなに大きくなるには100年もかかってしまう。寿命は200年というから、誰も最初から最後まで成長を見守ることはできない。子供が産まれたときに、弁慶柱の種を庭にまくといいかもしれない。その子が100歳になる頃には立派なサボテンになっているだろう。
 英名はSaguaro。初夏になると枝先に白っぽい小さな花を咲かせる。咲くのは夜ということで受粉はコウモリが担当するんだとか。果実は食用になり、茎の芯は固いために昔はネイティブアメリカンがテントの材料に使ったそうだ。
 今でもアリゾナ州あたりの自然公園では野生のこいつが乱立してる姿を見ることができるという。やはり、こいつらには砂漠の砂と空と乾いた空気がよく似合う。

親子連れと弁慶柱

 比較対象として親子連れに入ってもらった。やっぱりデカいぞ、弁慶柱。そしてあらためて思うのは、こいつのチャームポイントは短い手だということだ。もしこれがなかったら、ずいぶん愛想のないサボテンになっていたと思う。ただ、人が見てないときはこっそりこの手を下ろしていそうではある。あー、手が疲れた、とか言いながら、ブルブル振ってるかもしれない。

 一般的なサボテンの原産地は、北米大陸と中米から南米にかけてだ。北はカナダ南部から南はチリまで、アメリカ大陸の広い地域に自生している。もちろん、コロンブスが新大陸発見するはるか以前から、サボテンはネイティブたちと共にそこにあった。世界に知られるようになったのは、やはり大航海時代の16世紀以降だ。過酷な環境に生きながらも、けっこう耐性が高かったサボテンたちは世界中に広まっていった。暑さだけでなく寒さにも強い。日本には江戸時代にオランダ船が持ち込んだと言われている。その前から入っていた可能性もある。
 いつ頃地球上に誕生したのか、はっきりしたことは分かってない。一番古い化石がユタ州で見つかった6,500万年前のもので、それ以外ではアリゾナ州の200万年前くらいしかなく、手がかりが掴めないようだ。恐竜時代にはおそらくあったのだろうけど。
 サボテンの種類は、8,000とも1万とも言う。生き延びるための必死の姿勢が様々な変化を生み出していったのだろう。形によって、木の葉、ウチワ、柱、球のなどに大別される。
 サボテンの特徴はなんといってもトゲトゲだ。ほとんど雨の降らない砂漠で生きるために、水分が逃げていきやすい葉っぱをトゲに変えた。外敵から身を守るためとかそういうことではない。刺座(アレオーレ)と呼ばれるものをサボテン、ないものを多肉植物として区別している。アロエなどがそうだ。刺座(とげざ)がなくても毛疣(けいぼ)が残っているサボテンもある。
 たいていのサボテンは花を咲かせる。サボテンの花なんて見たことないぞという人が多いかもしれない。それは、花が咲くのが数日から一週間くらいと短いのと、大量生産で作り出されたものは発育不良で花が咲く年齢になる前に枯れてしまうものが多いからというのがある。それゆえ、サボテン好きにとってみれば、花を咲かせることの喜びはひとしおなのだろう。奥さんが一所懸命育てたサボテンの花が咲いて、あなた見に来て! と大きな声で呼ばれたなら、面倒がらずにちゃんと見に行って一緒に喜んであげないといけない。
 サボテンが種から育つと聞いて意外に思った人も多いかもしれない。なんとなく分裂して増えていくようなイメージが私にもあった。サボテン農家が種から5年くらいかけて育てたものが店に並ぶことが多いそうだ。サボテンの苗生産の全国80パーセントが愛知の春日井というから驚く。隣町の春日井市がサボテン王国だなんて、まったく知らなかった。春日井の街にサボテンがあふれているというような印象は一切ないのだけど。
 サボテンは、日本に入ってきた当初は覇王樹という字が使われていたようだ。現在は仙人掌という字を当てることが多い。
 サボテンの語源にはいくつかの説があって、昔は茎で服の汚れを拭き取ったりしていたところから、ポルトガルの石けんを意味するシャボンに手を付けてシャボンテ、それがなまってサボテンになったというのがある。確かにサボテンはシャボテンとも言うから、この説はあり得るかもしれない。

 サボテンは観賞用だけでなく、昔からいろいろと利用されてきた。ネイティブアメリカンは食べられるサボテンを知っていて食べていただろうし、今でもサボテンステーキやサボテンサラダなんかがある。もしかしたら、私の知らないところでみんなこっそり食べているんだろうか。「ステーキハウスあさくま」(東海ローカル)のメニューにも入っているかもしれない。果実は美味しいものもあるようなので、それはちょっと食べてみたい気もする。
 これまでサボテンというのは見た目の変化が小さすぎて面白くない植物だと思っていた。もう少しなんか変わってみろよと指でつつくと痛い思いをするからイヤだとか。けど、勉強してみたら、なかなか興味深い植物だということが分かってきた。ここはやはり、実際に育ててみるのがサボテンと親しくなる最善の方法だろう。
 なんでも、電磁波を吸い取るサボテンがあるという。その名もセレウス・ペルヴィアナス。今ちょっとしたブームになってるようで、私も買いましたという報告がネットでたくさんなされている。むむむ、出遅れたか。電磁波といえば私もPCやテレビなんかで日常的にかなり浴びているから、実は心配していたところだ。NASAの研究でもその効果は実証済みなんだとか。そう聞くとかえって怪しいような気もしてくるけど、ちょっと本気で欲しくなってきた。近いうちに買いに行こう。
 よかったら、キミも買ってみないかい? そして私とサボテン・ブラザーズになろうではないか!
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