秋の雨池は生の爆発と静かな死の見えないコントラスト 2006年10月25日(水)

海/川/水辺(Sea/rive/pond)
ウォーターレタス雨池

Canon EOS Kiss Digital N+EF-S 18-55mm(f3.5-5.6), f5.6, 1/30s(絞り優先)



 この写真を見せて、これは池なんですよと言ったら、人は信じるだろうか。でもこれは実際、池なのだ。インディアン嘘つかない。どう見ても畑か、草原か、芝生か、地面に生えた緑にしか見えない。うっかりしてると、この上を歩いて向こうまで行こうとしてしまいそうだ。忍者ハットリくんなら行けるかもしれないけど、常人には無理なのでやらない方がいいと思う。立錐の余地もないとはまさにこのこと。乗車率200パーセント。
 しかしすごい超絶的爆発繁殖だ。初めて見たら、あたなもきっとそのつもりはないのに松田優作のモノマネをしてしまうだろう、なんじゃこりゃ、と。

 和名をボタンウキクサ、英名をウォーターレタスという水草だ。ところどころ紫に見えているのがホテイアオイで、これも害草として厄介者扱いされることが多いのに、それを更に大きく上回る繁殖力。完全にホテイアオイが押されている。
 それにしてもこれは大問題だ。この水草の下では、死の池となっている可能性がある。ウォーターレタスもホテイアオイも、水中の汚れや不純物を吸い取ってくれる性質もあるとはいえ、これだけ水面を覆ってしまうともういけない。水中に日光が届かないから植物プランクトンが死んでしまい、酸素が不足して水中生物も全滅してしまうのだ。水だけは異常にきれないなのに生き物がいない光景は不気味に映る。
 この雨池は、去年も夏場に酸素不足が原因で数百匹のコイやフナが死んでいる。ただし、そのときはこんな水草風景ではなかった。今年に入ってから突然こんなことになってしまった。勝手に外来種の水草が外から入ってくるとは考えられないから、おそらく店で買ってきたやつが増えすぎて誰かがこの池に捨てたのだろう。
 それにしてもこんなふうになるまで放っておいたのは区か市の責任もある。ここまで来てしまうともはや駆除は不可能に近い。これは本当に痛々しい光景だ。

ウォーターレタスに少し近づいて
OLYMPUS E-1+Super Takumar 28mm(f3.5)

 少し近づいてみると、こんな感じ。密集ぶりのすごさが分かってもらえるだろうか。完全に歩けそうな気がする。
 ウォーターレタスは、アフリカ大陸原産の熱帯植物で、日本には昭和初期に観賞用として入ってきた。それがこんなふうに野生化して大繁殖するようになったのはここ10年くらいのことだという。熱帯植物ゆえに9月の終わりくらいには枯れて姿を消していたのだけど、最近の温暖化で10月や11月まで残るようになった。あるいは、日本の気候に馴染んでしまったのかもしれない。沖縄でしか越冬できないと言われたものが最近では本州でも越冬し始めたという話もある。一応耐えられる水温は15度までと言われている。
 ボタンウキクサやウォーターレタスという名前のくせに牡丹のような花が咲くわけでもなく(すごく地味で小さい白い花が咲く)、レタスのように食べられるわけでもない。とにかくやっかいもののこいつをやっつけるには、水から出すより他に方法がない。大繁殖してしまったら、船ですくい上げるのも無理があるし、機械が使えないから人力に頼るしかなく、重さもあるので、本当に大変だ。実際のところ、冬を待つより他にどうしようもないのだろう。何かこいつを食う動物はいないのか。
 とにかく繁殖力が強くて早いのが特徴で、株元から水面に匍匐茎を伸ばして、無性生殖して子株をどんどん増やしていく。ここも、最初は2株とか3株くらいだったかもしれない。
 全国のあちこちで問題になってるところが増えてるようで、環境省も2006年2月に特定外来生物に指定して、販売、栽培、譲渡は基本的に禁止とした。でも、ホームセンターで普通に売ってるようだから、個人宅で育てるのは問題ないのか。

 個人的にこれが大問題だと思うのは、この雨池には全国的にも珍しいミコアイサという冬鳥が毎年訪れる場所だからだ。通称パンダガモというかわいいやつを見られるのは、名古屋では、ここと牧野ヶ池くらいしかない。11月くらいには偵察隊が北から戻ってくるはずだから、この有様を見てビックリ仰天してしまうだろう。ミコアイサまで松田優作のようになってしまうに違いない。なんじゃこりゃぁー、と。
 このままでは水面を泳ぐことはまったくできないし、水中の貝やエビなどのエサもないだろうから、ここでは生きていけない。彼らは毎年だいたい決まった場所に戻ってくるから、これを見て途方に暮れてしまうじゃないだろうか。私も見られなくなると寂しい。名古屋はまだ暖かい日が続いてるから、急に枯れるとも考えにくい。雨池は一体どうなってしまうんだろうか。
 ただ、コサギが1羽いたから、まだ完全に生き物がいなくなったわけではなさそうだ。どうにかミコアイサがやって来るまでに水面の一部でも見えるようになれば大丈夫かもしれない。また近いうちに様子を見に行こう。
 近くの金城学院の女子大生たちに全員ボランティアでかき出し作業をさせたらどうだろう。って、絶対実現しないだろうな、名古屋ではお嬢様大学として通ってるお嬢たちだから。でももし、彼女たちが作業するというのなら、私もぜひ参加したい。キャッキャッと歓声を上げる女子大生に囲まれて、浮かれ気分ではしゃいでウォーターレタスの上をゴロゴロと転がっている男がいたら、それはきっと私です。いやぁ、想像するだけで楽しい作業になりそうだなぁ。
記事タイトルとURLをコピーする
コメント
  • (≧m≦)ぷっ!
    2006/10/26 21:44
    文頭の文章を読んでいて、オオタさんにも昭和の香りがプンプン漂ってました(笑)

    池なんですね・・・・これ。
    写真で見る限りでは、緑も綺麗なので絶景だな~って思いますが、
    実際はどうなんでしょうか。

    >これだけ水面を覆ってしまうともういけない。水中に日光が届かないから植物プランクトンが死んでしまい、酸素が不足して水中生物も全滅してしまうのだ。

    ここまで考えられるオオタさんは地球に優しいお方と見ました。
    “φ( ̄ ̄*) メモメモ
  • 2006/10/26 23:44
    [壁]・m・) プププ
    っこでも乗車率の話が(違)

    いつもより、テンション高い文章になってませんか?w
  • 昭和臭
    2006/10/27 01:40
    ★もこさん

     こんにちは。
     昭和臭がちょっとキツかったでしょうか(笑)。
     でも、いちいち反応できてしまうもこさんも同じですね。はは。

     去年まではまったく普通の池だったんだけど、一年でがらりと様相が変わってしまって私もびっくりなのです。
     完全に緑に覆われてるから、ちょっと見には池に見えないんですよ。
     水中のことが心配。渡り鳥も飛んでくる池なんで、よけいに。
     また変化があったら報告しますね。
     それと、昭和ネタはくれぐれもお見逃しなく(笑)。
  • バナナを食ってテンション上げろ
    2006/10/27 01:42
    ★ただときさん

     こんにちは。
     テンションはなるべく揃えようと思ってるんだけど、やっぱりその日の気分でけっこう変わってしまうんでしょうね。自分で意識してる以上に。
     とりあえずテンション低めのときはバナナを食べてから15分後に書き始めるようにしてます(笑)。
コメント投稿

トラックバック