ダチョウに乗ってサラブレッドよりも速く駆け抜けろ 2006年10月2日(月)

動物(Animal)
ダチョウの顔

OLYMPUS E-1+Super Takumar 200mm(f4), f5.6, 1/125s(絞り優先)



 ダチョウの首から上だけ見ると、ガリガリにやせた職人のじじいみたいな頑固さを漂わせていて風情がある。弟子にはめっぽう厳しいが孫には甘い、みたいな。大工のはっぴが似合いそうだ。ダチョウくらい首から上と体つきのバランスが悪い生き物はそういない。アルパカさんもちょっとヘンだったけど、ダチョウはそれ以上のアンバランスさだ。ここから下が突然丸々と太った黒いボディーになるなんて、なかなか想像できない。ダチョウを知らない人にこの写真を見せてこの下を描かせたら、まず正解は出てこないと思う。ぬっくん(温水洋一)の顔を見て筋肉ムキムキの体を描かないであろうのと同じで。

 誰の笑い話だったか、お笑いの大物が行きつけの寿司屋に電話して、「今日、ちょっとダチョウ連れて行くから、大将予約頼むよ」と伝えて行ってみたら、店の床一面にブルーシートが敷かれていた、というのがあった。連れて行ったのはもちろん本物のダチョウではなくダチョウ倶楽部の3人だったのだけど。
 人とダチョウの関わりはとても古く、古代エジプト時代にはすでに家畜となっていたと言われている。家畜の元祖と言って間違いない。クレオパトラもダチョウに乗って砂漠を疾走していた、という記録は残ってないけど、たぶんクレオパトラのところにもいたことだろう。
 もともとはアフリカ大陸とアラビア半島全域に広く生息していたようだ。その後、環境破壊や乱獲などで野生のものは大きく数を減らし、現在では中部と南部の一部に生息するのみとなっているという。
 日本人にとってダチョウは動物園で見る生き物というイメージが強いかもしれないけど、世界では一般的な家畜としてけっこう身近な存在のようだ。牛、豚、ニワトリに次ぐ第四の家畜と言われている。肉、皮、羽、卵、どれをとっても利用価値が高く、飼いやすいということもある。日本ではあまりダチョウの卵や肉を食べたりしない代わりに、オーストリッチのバッグなどの大輸入国となっている。オーストリッチがダチョウのことだと知らずに使っている人もいるかもしれないけど。
 家畜としてのダチョウが世界で見直されることになったのはそれほど昔ではなく、300年くらいだそうだ。日本での歴史はとても浅く、ここ15年ほどのことで、ようやく広まりつつあるところのようだ。うるさくなくて匂いもあまりしないということで近年ダチョウを飼う農家さんが増えているとのことだ。肉はヘルシーで美味しいらしい。卵なんて一個丸ごとなんてとても食べられない。ニワトリの卵20個以上に相当するから、朝からダチョウの卵かけご飯なんて石ちゃんでも食べられないだろう。もちろん、鳥の卵としては世界一だ。生まれてくるダチョウの赤ちゃんはすでにニワトリくらいの大きさがある。
 飼育に適している点として、暑さ寒さに強いというのもある。耐久性がとても高く、ひからびた灼熱の地から極寒まで耐えることができる。日本のように四季があって寒暖の差が激しいところでも平気で、沖縄だろうと北海道だろうとてんでへっちゃらだ。いや、ダチョウ的にはこりゃたまらん暑さだなとか寒くてかなわんぞと思ってるかもしれないけど。飛べないから飛んでいかないというのもいい。民家の庭でも柵で囲えば飼える。

 ダチョウはとにかく思ってるよりすごいやつで、いろんな世界一の冠を持っている。世界一大きな鳥でもあり、世界一大きな鳥の卵であり、世界一足が速い鳥でもある。本気を出すと時速80キロまでは出せるというから、ディープインパクトよりずっと速い。高速道路だって走れる速さだ。最高速度でも5分は走り続け、時速70キロくらいの高速クルージングなら30分はスタミナが持つらしい。ちょっとした自家用車代わりになるんじゃないか。信号のある一般道なら楽勝だろう。ガソリンが高い今、夢の燃料は水素でも太陽光でもなくダチョウかもしれない。今世紀の終わり頃には、みんな車を捨ててダチョウに乗ってる可能性もまったくないとは言えない。ダチョウ暴走族とか怖そうだ。
 こうなってくると、ちょっと本気で飼ってみようかと思い始めた人もいるんじゃないだろうか。そういう人は何を食うんだと気になるところだろう。基本的には草食性で、花や葉っぱなどを食べる。その他、昆虫なども拾い食いする。農家さんならそのへんの草でも食わせておけば大丈夫かもしれない。一応アルファルファというもやしみたいなものが好物らしいので、これをやっておけば大喜びだ。いずれにしても、豚やニワトリなんかの穀物に比べたらエサ代はずっと安く済む。
 メスを飼えば、年間50個前後の卵を産んでくれる。それで商売が成り立つかどうかは微妙なところだけど、実用的なペットとしてなら充分だ。50個をニワトリ換算で20倍にすると年間1,000個の卵に相当する。これは大家族でもちょっと食べきれない量だ。もう卵を店で買う必要はない。やっぱりダチョウ、いけるぞ。子供の遊び相手にもなるし。
 ただ、ダチョウを飼うにはひとつ大きな欠点というか問題点がある。それは寿命がとても長いということだ。平均でも50年、へたすると80年も生きるというから、半端な気持ちでは飼い始めることはできない。ある日お父さんが気まぐれにダチョウのチビを買ってきたとしよう。それは子供の成長を超えて、孫の代まで受け継がれ、ある種、負の遺産となりかねない。家族の一員としてかわいがるにしても、80年間面倒を見続けるというのはなかなかに大変なことだ。

 知るほどに興味深いダチョウという生き物。世界一大きな飛べない鳥は、いろんな意味ですごいやつなのだった。もっと日本でも身近な生き物になるといいと思う。家畜としてだけでなくペットとしても飼う人が出てきて欲しい。日本で実際に飼ってる人はいるんだろうか。近所の河原で首にヒモをつけてダチョウを散歩してる人を見たら、それはなかなかに心温まる風景だ。ふいに本気で走り出したら飼い主は引きずられて大変なことになるだろうけど。
 私としてはいろいろ考えた結果、ダチョウを飼うことは断念しようと思う(本気だったのか?)。受け継いでくれる子供もいないし、私がいなくなってダチョウが路頭に迷ったらかわいそうだ。どなたか、もし自宅で飼うことになったら教えてください。そして、一般道をダチョウに乗って走ってもいいのかどうか実験して確かめてください。スピード違反で捕まるんだろうか。
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コメント
  • こんばんわ
    2006/10/08 01:37
    写真のダチョウかわいいですね。 ;->

    ダチョウが長生きって初めて知りました!
    馬よりも足が速いんですね!!
    テレビで公道で馬に乗る人は見たことがありますけど、
    ダチョウに乗っていればスターですね!!! :-D
    ダチョウの卵のダシ巻きたまご食べてみたいです。
  • ダチョウの卵で卵焼きいつく作れるかな
    2006/10/08 04:29
    ★Cha Ya LabのFuangさん

     こんにちは。はじめまして、。
     ようこそいらっしゃいませ。いつでも歓迎しますので、気軽に立ち寄ってくださいね。
     でも、文章が長いんで、気軽には読めないかも。(>_<)

     生き物は基本的に大きい方が心拍数が少なくなって長生きなんだけど、それにしてもダチョウの80年は生きすぎですよね。(^^;
     親から子へ、そして孫へと続く家のローンみたい。
     うかつにペットとしては飼えません。河原に置いてきても、目立ってしょうがないし。
     でも、あの速さは憧れます。サラブレッドよりも20キロも速いとなると、ぶっちぎりですね。ただ、人間が乗るとどの程度性能が落ちるのかが不安材料ではあるけど。そもそも乗れるのか!?
     ダチョウの卵の白身は、温めてもどろっとした透明なままで固まらないんですって。ちょっと気持ち悪い。(^^;
     卵黄だけでもだし巻き卵はイヤってほど作れますね。(^^)
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