バッタ野郎への道 ~イナゴライダー編 2006年9月9日(土) - 現身日和 【うつせみびより】

バッタ野郎への道 ~イナゴライダー編 2006年9月9日(土)

コバネイナゴ(推定)と抜け殻

Canon EOS 10D+Super Takumar 135mm(f3.5), f4.0, 1/200s(絞り優先)



 虫関係はここ2、3年でいろいろ写真も撮ったし勉強もしてきた。ただ、相変わらずバッタ関係に関してはどうにも苦手意識が拭いきれない私。地面で跳ねてるものは、カエルとウサギ以外はとりあえず全部バッタに見える。もちろん事実はそうではない。世の中には実にたくさんの跳ねる生き物たちがいるのだ。私だって昔はグランドの周りを跳ねていた(テニス部でウサギ跳びをさせられてただけ)。
 これまで見て見ぬふりを続けていたのだけど、夏の終わりも近いということで、少しだけバッタたちについて勉強してみることにした。その結果、バッタ恐るるに足らず、となったかといえばそんなことはなく、やっぱりバッタの見分けは手強いのだった。でも、これは第一歩だ。私とバッタとの長い戦いはまだ始まったばかり。学校で禁止されてしまったウサギ跳びならぬバッタ跳びで1階と自宅の7階の階段を往復して自らを鍛えるところから出直したい。最終的には、チキチキチキっと言いながら10段くらい飛べるところまでいきたいと思う(それは無理だろう)。
 それにしてもバッタ類の種類は多い。思いつくところでは、トノサマバッタ、ショウリョウバッタ、オンブバッタ、ヒシバッタなどのバッタという名の付くものから、キリギリス、マツムシ、コオロギ、スズムシ、イナゴ、ヤブキリ、ササキリなど、バッタではないものから跳ばないものまで含めると、一夜漬けではとても手に負えない。
 ということで、今日はまずイナゴからいきたいと思う。ちょっと待て、イナゴはバッタじゃないぞ! と速攻でツッコミを入れてしまったあなたは、イナゴライダーと呼ばれてしまうほどイナゴ好きな人に違いない。そう、確かにイナゴはバッタに含まれたり、はっきり別のものとされたりで、ちょっと仲間はずれっぽいところがある。ただ、写真に撮れたのが今回イナゴだけだったということで、今日のところはイナゴでいきたい。本家バッタは写真が撮れてからまたあらためて。

 写真のものは、少し迷うんだけど、たぶん コバネイナゴでいいと思う。現在の日本を代表するイナゴだ。かつて日本のイナゴ界は、コバネイナゴとハネナガイナゴの二大勢力が縄張り争いを繰り広げていた。しかし、昭和に入り、強い農薬が使われるようになると、まず先にハネナガイナゴが激減して、コバネイナゴはゆるやかな減少にとどまった。昭和40年代、50年代には、はっきりとコバネイナゴの天下となる。その後強い農薬はあまり使われなくなると、一時数を減らしていたイナゴがまた田んぼに戻ってきた。けれど何故かハネナガイナゴの数が回復することはなく、現在に至っている。今ではハネナガイナゴが貴重な存在となってしまった。
 コバネイナゴの生息地は、北海道南部から九州(沖縄も?)までと広く、国外では台湾、フィリピン、インドあたりにもいるという。比較的暖かいところが好きらしい。
 卵で越冬して、5月の中頃にチビイナゴとしてふ化する。それから5、6回脱皮を繰り返してだんだん大きくなり、最終的には8月の中旬から下旬にかけて大人になる。写真に写ってる白いやつが抜け殻(脱皮殻)だ。足の形が残ったままどうやって体を抜いたのか不思議。もっとビリビリに破いて出てきた方が楽そうなのに。相当固いんだろうか。
 成虫の寿命は約80日と、意外と長い。2ヶ月半も生きるということは、イナゴは夏ではなく秋の生き物ということになる。
 産みつける卵の数は1,000個というから驚きだ。それは大量発生もするだろう。しかし、逆に言うと、それだけ卵を産んでも激減してしまうほどかつての農薬は強力だったのだ。そう思うとちょっと恐ろしい。
 大きさは3センチから4センチほどで、外観が少し似ているトノサマバッタと見分けるときは、大きさの印象の違いでたぶん分かると思う。目の上から後ろに向かって伸びる濃茶色の筋がチャームポイントだ。写真のやつは脱皮したてということで、まだ色味が全体的に薄い。
 食べ物はイネ科の草。稲ももちろん好きではあるのだけど、米を食べてるわけではなく、食べるのはあくまでも草だ。よほど大量発生しない限り、憎むべき害虫とまでは言えないと思うけど、農家さんにしてみたら草をかじられるだけでも腹立たしいところだろう。

 イナゴの漢字は文字通り稲子だ。これは分かりやすい。ただし、もうひとつ「蝗」という字を当てることがあって、これが少し分かりづらい。バッタは「飛蝗」で、跳ばないから蝗かといえばそう簡単な話でもない。
 もともと漢語の「蝗」はトノサマバッタなどを指す言葉で、バッタ類が大量発生して群れとなったときの現象を「飛蝗」と表現していた。しかし、日本において大量発生するものといえばイナゴしかおらず、いつの間にかイナゴのことを「蝗」と混同するようになったのだという。やっぱりイナゴは稲子の方が分かりやすい。
 その他のイナゴとしては、イナゴ亜科のツチイナゴや、ヒナバッタ亜科に属すツマグロイナゴ、ナキイナゴ、ヒナバッタなどがいる。イナゴライダーはメロディック・ハードコアに属すらしい(それはまた別の種類の生き物)。

 イナゴといえば食うもんだと思っている世代はどこから上なんだろう? 戦後すぐは食べるものがなくて、貴重なタンパク源として食べられていたというのは聞いているけど、団塊の世代の人たちも子供の頃は普通に食べていたものなんだろうか。少なくとも私たちの世代は食べたことがない人がほとんどだろうし、もちろん給食に出たりもしなかった。あるいは地域による差もあるかもしれない。
 日本では平安時代くらいから食べられていたようで、現在でもスーパーなどに普通に並ぶ唯一の虫だといわれている。甘露煮や佃煮がけっこう売れてるというから驚く。隠れイナゴファンは私の知らないところでたくさんいるらしい。
 一番たくさんとられているのは仙台平野だそうだ。もしかしたら今でも仙台の小中学生は田んぼでイナゴを集めさせられているんだろうか。一日10トンも集めるというからすごい。それでもまだ足りず、韓国や中国から輸入もされてるとか。どんだけイナゴ好きなんだ、日本人。食べられている量は、日本人全員が年間数匹食べているのに相当するんだとか。そんなデータを聞いたら、私は食べてないですー、って人が続出だろうから、食べてる人はものすごく偏って食べまくっているのだろう。とりあえず私の身近にそういう人はない。
 食感はちょっとエビちゃんみたいというんだけど、私のサンデー料理に登場する予定は金輪際ない。できればイナゴを食べずに済む人生を選択したいと思う。

 近年、日本でイナゴの大量発生という話は聞かない。昔はかなりあったそうだ。外国では今でもたまに起こっている。最近では、2004年にエジプトで大発生があったし、2005年には中国の山東省などで大きな被害を出した。ちょっと笑えたのが、中国ではイナゴ対策としてニワトリを日頃から訓練してるというのだ。イナゴ撃退プロジェクトとして3万羽のニワトリが日夜訓練に励んでいるという。残念ながら訓練の内容までは伝わってきていない。もしかして極秘プロジェクトだろうか。中国ではそのうち、マクドナルドでイナゴバーガーが新発売になるかもしれない。日本におけるエビちゃんのようなイナゴちゃんが登場して、イナゴバーガーが話題をさらうことになるなんてこともなくはない。
 映画『北の零年』でイナゴに作物を根こそぎ食べられてしまうシーンがあったけど、ああなると本当にもうどうしようもない。大量発生のメカニズムはその都度違って、原因もはっきりしてないから対策を立てることができないようなのだ。

 バッタのことならなんでも知ってるバッタもんオオタと呼ばれるその日まで、今後もバッタの勉強は続けていきたいと思っている。イナゴに関しては少し分かったから、次は王道のトノサマバッタあたりを攻めてみたい。地面で飛び跳ねてるやつを見ても、これまではあまり写真を撮ろうと思わなかったけど、これからは跳ねものにビビビッと反応して写真を撮っていこう。
 地面にしゃがんで跳ねてるバッタを追いかけながら自分もバッタ跳びをして写真を撮っている男を見つけたら、すかさず背中に飛び乗ってこう言ってみてください。
 オンブバッタ! と。
 私だったら怒らないけど、そうじゃないと怒られる可能性があるので、よく見極めてから。
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コメント
非公開コメント

区別がつかない_alt_str_e_259.gif_

昆虫採取して標本にしたものの、ショウリョウなのかオンブなのか区別かつかないです。調べた感じではオンブのようで、幼虫みたいで体長3センチ程。何か決定的な違いはないですか?

2008-08-25 14:54 | from のんこぞー

ショウリョウバッタもどきもいる

★のんこぞーさん

 はじめまして、こんにちは。
 ショウリョウバッタとオンブバッタは、大きくなると分かるのだけど、小さいうちは区別が難しいですよね。
 このページ↓が参考になると思うので、一度見てみてください。
 http://www.hirahaku.jp/web_yomimono/tantei/batonbu.html
 写真だけだと手がかりが少なくて難しいかもしれないけど、実物があれば区別がつくんじゃないかなぁと思います。

2008-08-26 05:50 | from オオタ | Edit

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