今でもホオズキは鳴らせないけどやり方は知っている - 現身日和 【うつせみびより】

今でもホオズキは鳴らせないけどやり方は知っている

なつかしのホオズキ

Canon EOS 10D+SMC TAKUMAR 55mm(f1.8), f2.8, 1/25s(絞り優先)



 私が小さくてまだ可愛かった頃、夏休みに母方の祖父母の家に行くと、庭にホオズキがなっていた。物珍しくてあれは何だと訊ねるとホオズキだという。こうやって遊ぶんだよと親戚のお姉ちゃんが中身をくり抜いてビュービュー鳴らしてみせてくれた。コツは実をしつこいくらいにもみほぐしてから種を抜き取ることだという。私も何度か挑戦してみたのだけど、ついに成功することはなかった。どうしても皮が破れてしまうのだ。田舎の人間ってある意味すごいなと子供心に感心したのを覚えている。母親もやっぱり上手だった。
 あれから時は流れ、もはや誰も可愛いと言ってくれなくなった私は、久しぶりにホオズキを手にすることになった。子供の頃の記憶がふいによみがえる。たぶん、もう一度挑戦しても上手く鳴らすことはできないだろうから、眺めて写真を撮るだけにしておいた。親戚のお姉ちゃんもおばちゃんとなったけど、今でもホオズキを上手く鳴らすことができるのだろうか。子供たちにやり方を伝えているのかな。

 かつてホオズキは日本中で当たり前にあったものだった。民家の庭には普通に植わっていたし、畑の隅っこなどでもよく見かけたものだ。この袋の中に先祖の霊が入ってお盆に還ってくると信じられていて、仏前やお墓に供えるのが一般的な風習だった。今はそういう光景はあまり見られない。ホオズキそのものを見たのもずいぶん久しぶりな気がする。
 日本にあるホオズキの原産地は東アジアだそうだ。ずっと古い時代に渡ってきたと言われている。世界には80種類ほどあって、東南アジアや南北アメリカにほとんどあるそうだ。
 最初に登場したのは『古事記』で、八岐大蛇(ヤマタノオロチ)の目はアカカガチのようだったと書かれている。ホオズキは昔、カガチと呼ばれていたらしい。
 漢字では一般に酸漿と書く。それ以外にも、見た目から鬼灯という字を使うこともある。これは中国語から来ているようで、赤い提灯のことだそうだ。英名もそのままChinese lantern plantとなっている。
 ホオズキという言葉の由来は、実を頬に含んで鳴らすところから頬突きが転じたものだとか、カメムシを昔ホオと呼び、カメムシが好きな植物だからホオ好きだとか、ホは火を表しツキは染まるという意味の著でホホツキと呼ばれたなどの説がある。

 日本におけるホオズキは観賞用だったり、お盆用だったりして食べるという発想はない。実際、日本にあるホオズキはひどくまずい。鳴らすために皮を口に含むとなんといえず酸っぱい。それがヨーロッパなどでは普通にフルーツとして食べられているんだそうだ。もちろん、種類の違う食用のホオズキなのだが。見た目もちょっとミニトマトっぽいし、ビタミン、ミネラルも豊富で、味も甘くて美味しいというから、近い将来日本でも流行るかもしれない。みのもんたが紹介すれば一発でブームになるに違いない。マチャアキのところに送ると、またお中元かとうるさがられて捨てられる恐れがあるのでやめておいた方がいいだろう。
 江戸時代に始まった浅草の浅草寺のほおずき市は特に有名で、毎年60万人も訪れるというから大した賑わいだ。全国でも各地で行われているというから、ホオズキそのものは私の知らないところでもしっかり受け継がれているようだ。
 最近は栽培用としてアメリカ原産のセンナリホオズキという品種がよく売られているという。
 実ばかりが有名だけど、ちゃんと花も咲く。6月から7月にかけて淡い黄色の花をつけ、花が終わると萼(がく)の部分が成長して実を包み、最初緑色をしていたものがだんだん赤く色づいてきて、中身も赤く熟す。実を取らずにそのままにしておくと、ガクの部分が網目に枯れてきて中の赤い実が透けて見えるという面白い造形になる。

 私たちの世代は、古い時代からの風習を受け継ぐことができた最後の世代かもしれないと思うことがある。ホオズキ鳴らしに限らず、メンコ、凧揚げ、カルタ、ビー玉なんかの遊びにしても、一通りはやってきた。竹とんぼも作ったし、竹馬にも乗って遊んだ。古い時代を懐かしむ懐古趣味はないけど、子供時代の素朴な遊びを思い出に持てたことは幸せなことだと思う。ホオズキは上手く鳴らすことができなかったけど、素敵な記憶は残った。
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