遠くて近い野生の鹿に鹿せんべいを持って会いに行こう - 現身日和 【うつせみびより】

遠くて近い野生の鹿に鹿せんべいを持って会いに行こう

アクシスジカ

Canon EOS 10D+EF75-300mm USM(f4-5.6), f5.0, 1/500s(絞り優先)



 名古屋市内で暮らしていると、日常生活の中で鹿と出会う確立は当然ながらほとんどない。三重の田舎でも鹿はいなかった。だから私の中で鹿はサル以上に縁遠い生き物に感じている。けど、日本に野生の鹿は数少ないかといえばどうやらそうでもないようだ。特に北海道の人は鹿とは馴染み深いだろう。20万頭からのエゾジカがいるというから、少し街から外れれば普通に見かけるのかもしれない。よく事故になっているという話も聞く。私たちの場合、とりあえず見たければ奈良公園は行けということになる。あそこに行けば確実に会えるから。
 鹿はサルや熊のようにあまりニュースにならないから、実態がよく分からない。たぶん、鹿によって迷惑をこうむっている人も少なからずいるのだろうと思う。東京の奥多摩あたりでも数千頭もいて、それが増えすぎて林を枯らしてしまうと問題になっているらしい。私が思っている以上に野生の鹿はたくさんいるようだ。
 見られるものなら見てみたいし、撮ってみたい。名古屋郊外あたりではちょっといそうもないけど、愛知の奥三河あたりまで入って行けば見られそうな気がする。

 写真のこれは、日本産の鹿ではなく、アクシスジカ(アキシスジカ)という外国の鹿だ。インドやネパール、スリランカなどの草原で暮らしている。
 世界一美しい鹿と言われていて、バンビのモデルになったのがこいつらしい。白い斑点と大きな角が特徴だ。これはまだ若いやつだろうか。角がそれほど立派じゃない。大きくなると1メートルにもなるという。もしくは、毎年角は生え替わるというから、これはその途中なのかもしれない。角を持っているのはオスだけだ(トナカイなどをのぞき、基本的に鹿はどれも同じ)。
 こういう白い斑点模様を鹿の子(かのこ)模様と呼ぶ。鹿の子百合などがある。普通の鹿は、冬毛になると白い斑点が消えてしまうのだけど、アクシスジカは年間を通してこの模様を保つ。
 大きさは、体長1メートル20センチ前後で、体重が90キロ前後。とてもおとなしい性格で、大きな群れで行動している。
 エサは、草、木の葉、木の実などで、ハヌマンラングールというサルの後をついて移動して、落とした果物などを拾って食べたりもするそうだ。
 東山動物園では草を拾い食いして、鹿のフンをたくさん出していた。それを見ていたら、吉永小百合の「奈良の春日野」が頭の中で流れ出した。
 ♪奈良の春日野 青芝に 腰を下ろせば 鹿のフン フンフンフン 黒豆よ フンフンフン 黒豆よ フンフンフンフン 黒豆よ~♪
 歌詞もすごいけど、それを歌っていたのが若き日の吉永小百合というのもすごい。

 何年か前、中学の修学旅行以来久しぶりに奈良公園へ行った。相変わらずたくさんの鹿が放し飼いにされている光景を見て、とても安心した。道路を歩いていたり、民家の庭に座っていたり、鹿せんべいを持った人を襲っているのを見て嬉しかった。ああ、ここは変わってないなと。
 ところであの鹿、一体誰が飼っていて誰のものなんだろうと思ったことはないだろうか。実はあれ、誰のものでもなく扱いとしては野生の鹿ということになっているらしい。ちょっと意外。天然記念物だから国のものといえなくはないだろうし、管理してる団体もあるにはあるのだろうけど、野生には間違いないようだ。だから、誰もエサをあげているわけではなく、公園の芝生や山の草などを食べて生きている。鹿せんべいが命綱というわけでは決してない。あれは単なるおやつだ。手に持っているとすごくたかってくるけど飢えてるわけじゃないので、心配する必要はない。
 何故奈良に鹿なのかというと、奈良時代に藤原不比等が茨城の鹿島神宮から氏神を移して春日大社を建てるとき、神様が白い鹿に乗ってやって来た、という故事に由来するそうだ。戦争などで数を減らしたりしながらも、奈良時代からずっとあそこに鹿がいたというのはちょっといい話だ。
 現在1,200頭ほどいるという。逃げ出していかないというのも考えたら不思議な話だけど、生まれ育ったあの場所がけっこう心地いいのだろう。

 奈良公園の鹿について書いていたらまた会いたくなってきた。鹿の季語は秋だから、紅葉の季節がいいだろう。「奥山に 紅葉踏みわけ 鳴く鹿の 声聞くときぞ 秋は悲しき」という「古今和歌集」の有名な歌を思い出す。
「シカトする」のシカトは、漢字で書くと鹿十(しかとう)。花札をやったことがある人は、モミジに鹿が描かれた札を覚えているだろう。あれは「十月の鹿」で、横を向いている様子から、そっぽを向く、無視する、鹿十する、となった。
 秋になったら鹿たちに会いに行こう。鹿せんべいの成分は、米ぬかを小麦粉で固めたものだというの知った。玄米をいつも精米してるから米ぬかはたくさん出る。現地で高い鹿せんべいを買うまでもない。大量の鹿せんべいを家で焼いて、それをマジソン・スクエア・ガーデンのボストンバッグ一杯に詰め込んで持っていってやろう。
 もし、今年の秋頃、奈良公園でボストンバッグを持った男が鹿に囲まれて襲われていたら、それは私かもしれません。見かけたら声をかけてください。そしたら、ボストンバッグを託して私は逃げます。
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