顔中クモの巣だらけにして会いに行ったハッチョウトンボ

虫/生き物(Insect)
今年初めてのハッチョウトンボ

Canon EOS 10D+TAMRON SP 90mm(f2.8), f3.5, 1/125s(絞り優先)



 初夏の風物詩のひとつであるハッチョウトンボを、今年も海上の森に見に行ってきた。生い茂る草をかきわけかきわけ、ぬかるんだ道に足を取られ、顔中クモの巣だらけにしながら。ハッチョウトンボを見る前に必要以上に夏を感じつつ。
 いつもの湿地は、いつものように静まりかえり、誰ひとりいない。遠くからウグイスのさえずりが聞こえるだけだ。最初、姿が見えず、まだ早かったかなと思った。なにしろ小さいのでよくよく目をこらさないと見えない。ずいぶん探してようやく一匹発見。喜びの再会となった。
 その後、あっちにもこっちにもたくさんいることが分かった。基本的にとまってることが多いので、かなり近づくまで分からない。でもいったん見つかれば、あとは次から次へと見えてくる。あ、ここにも、あそこにも、ここには4匹もいる、ってな具合に。ざっと見ただけでも20匹以上はいたから、湿地全体ではその数倍はいただろう。今年もハッチョウトンボが健在だと分かって安心した。

 名前を漢字で書くと八丁蜻蛉で、その由来は、江戸時代の学者、大河内存真が尾張の矢田鉄砲場八丁目で見つけたことから来ている。その場所は、現在の名古屋市千種区の矢田川あたりという説が有力のようだ。他には熱田区ではないかという説もある。
 全国の生息地は、東北から九州にかけてで、生息場所はごく限られる。世界的にみると、中国、朝鮮半島、台湾、東南アジア、オーストラリアにもいるそうだ。
 本来さほど珍しい種ではなかったものが、近年の湿地帯減少に伴い数を減らし、なかなか見られないトンボとなってしまった。生息場所は、背の低い草の生える湿地帯や、休耕田などで、近所の空き地や街中の川などではほとんど目にすることはない。
 日本で一番小さいトンボとして有名で、初めて見るとその小ささに驚く。普通のトンボの半分くらいと言葉で説明してもその小ささは伝わらないと思う。写真でも伝えるのは難しい。こればかりは自分の目で見るしかない。体長は2センチ弱だから、1円玉と同じくらいだ。
 上の写真は成熟したオス。真っ赤な体が特徴だ。下の写真はたぶんメスだと思う。

ハッチョウトンボのメスかな

 成熟したメスは、黒と黄色と茶色のストライプ模様をしている。オスも未成熟のときはこの写真のようにオレンジがかっているので、やや区別が難しい。写真のものは少し黒い色が出始めていてストライプ模様もできかけているのでたぶんメスじゃないかと思う。目の色からしても。
 オスは生まれたときは灰白色で、だんだんオレンジから赤に色が濃くなっていき、約2週間で完成色の鮮やかな赤色になる。翅の付け根や目玉も赤く色づく。

 ハッチョウトンボが他のトンボと違っているのは、その体の小ささだけではない。多くのトンボたちがエサをとるために1キロ以上も移動することがあるのに対して、ハッチョウトンボは生涯に生まれた湿地を離れることがない。行動範囲も半径10メートルほどと極端に狭い。ゆえに生息場所が局地的になり、湿地の環境が変わるとあっけなく絶滅してしまう。
 現在は、その希少性と生息地が限られているということで、指標昆虫10種の中のひとつとなっている。つまり、ハッチョウトンボがたくさんいる地域ほど自然が残されているということになる。地域によっては、市町村指定の天然記念物に指定されている。
 オスは、直径1メートルくらいの縄張りを持っていて、メスが近づくと速攻でくっつき交尾する。その間数秒から十数秒。シオカラトンボのカップルのようにつながったままいつまでもどまでも飛んでいったりしない。
 交尾後、メスは湿地の浅い水面に産卵する。
 ハッチョウトンボの発生は、5月の後半から9月にかけて。中でも6月の中盤から後半くらいにピークを迎える。梅雨が明けて暑くなると、数は少なくなる。見るならこの時期が一番いい。よく晴れた日にたくさん見ることができるはずだ。

 このトンボのもうひとつの特殊性、それは逃げないということだ。飛ぶ力が弱いということもあるのだろうけど、あまり人間を恐れない。かなり近づいても飛ばないし、飛んでもすぐにまた戻ってくる。これほど写真を撮りやすいトンボは他にはない。レンズが当たるほど近づいても逃げないくらいだ。ただし、小ささゆえの難しさはある。
 実物のハッチョウトンボの感動をぜひ多くの人に味わってもらいたい。偶然見かけるという機会はほとんどないから、こればかりは自ら出向いていくしかない。海上の森は確実にいるし数も多いのだけど、あそこは一般の人にはまったくオススメできない。何しろ湿地帯にたどり着くまでの道のりが厳しすぎるから。普段森を歩き慣れてる人ならいいけど、散歩気分でサンダルで行ったりすると痛い目に遭う。
 春日井グリーンピア西の築水池湿地にもけっこういる。ただ、あそこもスポットに行くまでにアップダウンのきつい道を10分以上歩かないといけないので、お手軽ではない。
 東山植物園の湿地コーナーでも見られるけど、あそこは有料だ。
 オススメは、豊田市の松平郷か、もしくはフォレスタヒルズ(トヨタの森)だ。どちらも行けばまずは見られると思う。一番楽して見られるのはフォレスタヒルズで、駐車場から徒歩1分で湿地に着く。ただし、ここは完全な野生とは言えないので、やや不満が残るかもしれない。松平郷も。
 やはりこういうものは苦労して見てこそ喜びも大きい。海上の森をさまよい歩きながらようやく辿り着いた先で見るハッチョウトンボ数十匹というのは、感慨もひとしおに違いない。ただし、何の予備知識もなくひとりで行くのは危険です。あの森は、迷ったら深みにはまって洒落にならないので。
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コメント
  • 綺麗なとんぼですね
    2006/06/24 07:11
    松平郷に行けば見れるんですか?私のも見つけられるかな?
  • コワイ!!( ゚∀゚)=3ムッハー
    2006/06/24 11:12
    トンボやバッタやカマキリの顔って・・・・



    怖すぎますw
  • 2006/06/24 12:58
    うぉっ!なんと、恐ろしい、いや・・・カラフルな色・・・。
    凝視できません。
    ハッチョウトンボって初めて聞きました。
    本州など、暖かいところにいるトンボなんですね~。
    ちっこいみたいだから現物みたらカワイイと思えるのかな~。
  • ハッチョウトンボは見る価値ありです
    2006/06/25 03:33
    ★kattyanさん

     こんにちは。
     ハッチョウトンボは、ぜひぜひ一度見てみてください。小さくてかわいいので感動しますよー。
     松平郷ならまず間違いなく見られます。湿地のところか、奥のトンボ池で。
     豊田のフォレスタヒルズも手軽に見られていいかも。
     http://www5b.biglobe.ne.jp/~mo42/pic_194.html
  • 仮面ライダーだって不気味
    2006/06/25 03:36
    ★ただときさん

     この写真で怖がっていてはいけません。もっと超アップの写真があったんですから(笑)。
     仮面ライダーも、よくよく見れば気持ち悪い顔してますもんね。(^^;
     次はカマキリのアップが撮りたい。
     最近、そういえばカマキリを見なくなりました。
  • 後ろから案内します
    2006/06/25 03:41
    ★kuronekoさん

     こんにちは。
     虫が苦手のkuronekoさんとしては、見たいけど見たくない複雑なところでしょうね(笑)。
     でもハッチョウトンボはすごく小さくてかわいいから、虫が苦手のkuronekoさんでも大丈夫じゃないかなぁ。
     大きさは、親指の第一関節くらいです。
     ただ、北海道にはいないんですよねぇ。残念。
     もし名古屋に遊びに来るようなことがあったら湿地に案内しますね。顔中クモの巣だらけになるけど、kuronekoさん先頭でお願いします(笑)。
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