
毎年、イチョウが黄葉する季節になると、中日新聞の一面に黄色く染まる祖父江町の空撮写真が掲載される。それはなかなかに感動的な光景で、いつか一度行かなくてはいけないと思いつつ、歳月が流れた。
そもそも、祖父江ってどこだっけ? というくらいこれまで祖父江とは無縁で過ごしてきた。今回行くことになって初めて稲沢市だということを知ることになった。かつてあった中島郡祖父江町は、2005年に平和町とともに稲沢市に編入された。
最寄り駅は、名鉄の山崎駅になる。尾西線はのんびりしたローカル線の風景だ。線路沿いからイチョウが出迎えてくれる。
今年はイチョウの黄葉も遅く、いまだ黄色く染まりきらないという情報は得ていた。今年はこんなパターンがずっと続いている。祖父江のイチョウも、なるほど、見頃にはまだ一週間くらい早い感じだった。
モミジならグラデーションもきれいだけど、イチョウは緑色が残っているとあまりきれいではない。

駅から西へ歩き出してすぐのところに、祐専寺というお寺がある。ここは有名で、祖父江のイチョウといえばこのお寺が紹介されることが多い。
染まり具合としては、あと一歩といったところだった。
手前の空き地が黄葉まつりの会場になっていて、ギンナンなどが売られていた。

祐専寺がイチョウのスポットだということは予習していたものの、それ以外にどこへ行けばいいのかがよく分からなかった。町中がイチョウだらけという話だったのだけど、歩いてみた感想としては、想像したほどイチョウづくしというほどでもなかった。もっと黄葉が進めば、イチョウの存在感も増すのだろうけど。
とりあえず適当にそこらを歩き回ってみることにした。最終的には木曽川沿いのワイルドネイチャープラザまで歩いていくことを予定していた。

菜の花だろうか。

祖父江はギンナンの生産日本一ということで、イチョウ畑があちこちに点在している。街路樹として植えられているのとは違う。あくまでもギンナンを生産することが目的だ。
ギンナンは勝手に落ちてくるから拾おうと思えば拾える。それを道ばたなどでも500円とかで売っていることが、ちょっと面白く感じられた。落ちているものを買うというのもやや釈然としない気もするけど、「落ちているギンナンを拾うな」と注意書きがあったりする。畑に落ちているものを拾えばそれはいけないのは分かるけど、たとえば道ばたに転がっているギンナンは誰のものなんだろう。

今週末でもまだちょっと早いくらいかもしれない。

これまで人が言うほどギンナンの臭いは気にならなかったのだけど、あれだけギンナンまみれとなると話は別で、初めてギンナンの臭いにまいったと思った。かなり強烈で、あの臭いが苦手な人にはけっこう厳しいかもしれない。

犬の嗅覚でギンナンは大丈夫なんだろうかと心配になった。祖父江の犬は慣れっこで平気になっているのだろうか。臭いに関する感覚が人間と犬では違うということか。

民家の庭にも、イチョウがあるところが多い。

川沿いは、桜並木の代わりにイチョウ並木になっている。

空撮はできないからせめて高いところから祖父江の町を俯瞰したいと思ったのだけど、祖父江には公共の高い建物がない。
少しだけ見えたのは、木曽川の堤防の上からだった。
これだけイチョウを売りにしている町なのだから、どこか見晴らしのいい場所に観光用の展望台を作って欲しい。本格的なタワーなどでなくても、10メートルくらいのものでも、観光客にとっては嬉しい。

結局、これといったイチョウポイントを見つけることができず、ほどなくして町撮りに興味が移っていった。さびれ具合に惹かれるものがあって、私としてはそちらを撮る方が楽しくなってしまった。
イチョウについては、ちょっと保留ということにしたい。来年以降、しっかり染まって落葉が始まった時期に再訪したいと思う。