
PENTAX K-7 + DA 16-45mm f4
柘植駅を出た草津線の列車は、ほどなく県境を超えて、滋賀県甲賀町に入る。
滋賀県最初の駅が、油日(あぶらひ)駅だ。
油日の名前は、油日神社の主祭神・油日神から来ている。油日岳(693メートル)のいただきに大明神が降臨した際、油を燃やしたような火を発したという伝説から名付けられたのだとか。
駅舎が変わった格好をしている。何のことか、このときはよく分からなかった。帰ってから調べたところ、忍者屋敷をモチーフにしているそうだ。言われてみればそういうことかと思わないでもない。

駅舎の中では、たくさんのサギソウが咲いていた。
駅員さんいわく、ここまで咲かせるのに10年かかったそうだ。
野生でこんなにもサギソウが咲いているところはないと思う。室内で大切に育てられているから、花の状態も見たことがないほどきれいだった。

後退禁止。
なるほど、そうだ。人生の指針としたい。
後退禁止。前進あるのみ。

このあたりの線路風景は、ローカル線の風情が漂っていた。
次の寺庄(てらしょう)駅までは2キロくらいで、線路沿いに道が通っていたので、歩いて移動することにした。

田園風景の中をいく草津線の列車。
とても牧歌的で平和そうな風景だった。

まっすぐ伸びる田んぼの中の農道。
天気のいい日にこんなところをのんびり歩いていると、自分が今どこで何をしているのか分からなくなるようなトリップ感に襲われる。

なんとなく散居村っぽい風景に感じられた。

わざわざ柵の一部を開けて線路際まで導いておきながら、立て札には鉄道用地内には入らないで下さいと注意書きがある。
線路の向こうには民家が並び、左右の踏切までは距離がある。

手作り感の強いキリスト教会らしい建物。

写真を撮ったり列車を待ったりしたので、50分くらいで甲賀駅に辿り着いた。
草津線の駅舎はどこも新しい。ここ10年以内に建て替えられたものばかりといった様子だった。古い駅舎が残る時代に訪れていたら、また違った感想を抱くことになったのだろう。

甲賀といえば、やはり甲賀忍者を推してくる。構内のあちこちに忍者の絵が描かれていた。
壁だけでなくベンチや床までペイントされているのがお洒落だ。

古い時代の名残か。

今度はカフェオレ列車に乗って次の駅を目指すことになった。

先入観のない目で見ると、草津線は緑の113系がよく似合うように思った。
次回は寺庄散策編をお届けします。
つづく。