草津線の旅 <その1>

鉄道(Railroad)
草津線-1

PENTAX K-7 + FA 50mm f1.4 / 16-45mm f4



 かれこれひと月半も前のことになるのだけど、草津線の旅をしてきた。9月はじめのことだった。
 長期シリーズになりそうだったので、まとまった間が空いたらやろうと思っていたら、イベントや季節ものでどんどん先送りになって、結局今になってしまった。たぶん、5回くらいのシリーズになると思う。
 天浜線でローカル線の魅力をあたらめて知り、またそんな旅に出たいと考えていた。そして、目をつけたのがJR草津線だった。
 しかし、思っていたのとはずいぶん趣が違っていた。いわゆるローカル線的な情緒はあまりなく、駅舎やホームに魅力を見いだすことはできなかった。その代わり、国鉄色が強い車両に特徴があって、天浜線とはまた違ったローカル線の旅になった。
 草津線といってもどこのことかピンと来ない人も多いかもしれない。草津といえば温泉で有名な草津町を思い浮かべる人が多いだろうか。あれは群馬県で、草津線は滋賀県を走るJRの路線だ。終点の草津には、かつて東海道と中山道が交わる草津宿があった。
 三重県にある関西本線の柘植(つげ)と、滋賀県にある東海道本線の草津とを結ぶ36キロの線で、私はこんな機会でもなければ一生乗ることはなかったであろうと思う。
 名古屋から草津へ行く場合でも、米原経由で東海道本線を使う。あえて草津線を経由する理由はない。途中の甲賀あたりへ観光へ行くとしても、東海道本線から行った方が早いと思う。だから、この線のことに関しては、ほとんど存在さえ意識したことがなかった。だからこそ、あえて草津線に乗るというのが旅の理由になり得たのだった。
 亀山で関西本線の加茂行きに乗り換え、柘植まで行く。草津線の旅は柘植駅から始まる。


草津線-2

 亀山から柘植までは非電化で、かわいいディーゼルカーが運んでくれる。
 柘植で関西本線と草津線とに別れ、ディーゼルカーはそのままトコトコ加茂に向けて走り去っていった。
 加茂(かも)といっても関東や他の地域の人には馴染みが薄い地名かもしれない。京都の南部、木津川市(きづがわし)にある町で、奈良時代には恭仁京があったところだ。


草津線-3

 柘植から貴生川(きぶかわ)までは、1時間に1本、貴生川から草津までは1時間に2本というのが、この路線の列車本数だ。
 駅やホームにローカル線の風情を探しても見つかりそうにないことが分かり、草津線の旅は、各駅停車で駅周辺を1時間散策するというスタイルになった。


草津線-4

 柘植駅の駅舎。
 1時間に1本というのが示す通り、駅前はいたってのんびりしたムードが漂っている。
 基本的に観光路線でもないので、駅に降り立って、どっちへ向かって歩いて行ったらいいものか、しばし佇むことになる。これといった目的地はない。
 それでも、1時間ほど歩いていると、その町の空気に触れることはできるわけで、その感じがとても心地よかった。一度でも降り立った駅は、多少なりとも馴染みのある駅ということになる。
 どこへともなく適当に歩き出してみればいい。何かしら心惹かれる風景というものがあるものだ。


草津線-5

 柘植駅の南には、かつて大和街道が通っていて、今でも古い建物が少し残っている。
 黒板張りと白漆喰の土蔵なども建っていた。


草津線-6

 このあたりにも旧街道の雰囲気が残っている。


草津線-7

 古い看板が落ちてひっくり返っているのかと思ったら、家屋の補修材として使われていた。


草津線-8

 柘植駅のある柘植町は、滋賀県との県境に近いながらも、まだ三重県だ。三重生まれの私でも、柘植にはまったく縁もゆかりもなかった。訪れたのはこのときが初めてだった。


草津線-9

 第一町人発見。
 風景がとても夏っぽい。今とは光と影の強さが違う。


草津線-10

 草津線の旅全般で感じたのだけど、このあたりまで来ると、文化圏が関西に属していて、中部圏では見ないような光景をあれこれ目にすることになった。
 こんな赤色灯付きの標識のようなものも初めて見た。これが関西特有のものかどうかは知らないのだけど。


草津線-11

 柘植は伊賀市の北東部にある。マンホール蓋には伊賀忍者が描かれている。
 甲賀忍者で知られる甲賀は、一山越えた北にあって、伊賀と甲賀はお隣同士のような関係ということをあらためて知った。


草津線-12

 柘植駅に戻ってみると、ホームには国鉄113系が待っていた。緑のやつだ。
 車両自体は国鉄時代の古いものながら、塗装は去年2010年に塗り替えられた新しいものだそうだ。
 それまではカフェオレと呼ばれる茶系統のツートンや、湘南色と呼ばれるオレンジと緑のツートンだった。
 今後は地域ごとにイメージカラーを決めて一色にしていくらしい。京都エリアは緑となったようで、今後はこの色に統一されていくんだそうだ。
 よそ者からするとどの色も新鮮に映るのだけど、この地域の人たちは初めて緑を見たときはかなり驚いたという。
 時代の流れでシルバー車両が増えていく中、あえて緑一色というのは斬新に感じられる。時代を逆行しているようにさえ思える。渋谷の駅前に置かれている青蛙みたいだ。

草津線-13

 窓が上に開く、古いタイプだ。懐かしい。子供の頃に見て以来かもしれない。

 こうして草津線の旅は始まった。
 途中の駅は9つ。時間の都合で一駅だけ飛ばしてしまったのだけど、それぞれの駅で降りて歩いた。
 次の停車駅は油日。
 つづく。
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コメント
  • 緑の電車は衝撃!
    2011/10/27 23:39
    京都へいくときはよく使いますが、
    駅はここ数年でどんどん新しくなって、
    古い駅舎のほうが少なくなってますね。

    わたしが高校生のころは、関西線は加茂行きではなく、
    すべて奈良行きでした。

    柘植駅では時間によって草津止めと、
    草津線なんだけどそれより以遠の京都行きの電車があり、
    京都行きのが止まっていると、ずっと座っていけると喜んだものです。
    (逆に、京都から草津線経由柘植行きも喜ぶ)

    オオタさん曰く、
    「一生乗ることがないであろう」草津線の旅、楽しみに拝見します。

  • 2011/10/28 21:53
    >ごきげんさん

     こんにちは。
     やっぱり、緑を最初に見たときは驚いたみたいですね。
     私は何も知らなくて、もともとあの色だったのだと思ったのでした。
     しかし、茶色や湘南色が、ある日突然緑色になったら、そりゃあびっくりしますね。(^^;

     三重からだと、京都方面に行くときは草津線の方が早いんですね。
     奈良行きもあったんですか。
     名古屋と奈良を結ぶ便も昔はあったんですけどねぇ。
     私の草津線の旅は、どこか盛り上がるポイントがあるわけでもなく、フラットな感じで最後までいきます。(^^;
     草津が想像以上に都会で、軽い衝撃を受けました。
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