PENTAX K-7 + TAMRON 90mm f2.8 / 50mm f1.4
夏が終わってしまう前に、もう一度海上の森へ行きたくなった。
ある8月の午後、自転車を走らせて森へ向かった。
長久手の田んぼでは、稲が黄金色に色づいていた。今頃はもう収穫が終わって、新米が食べられていることだろう。
昔はこんな風景を見てもなんとも思わなかった。今はとても美しいと感じる。日本らしい風景の一つだ。
夏を撮りに行って、思いがけず秋の始まりを思い知ることになった。
廃屋なのかそうでないのか微妙な外観の家屋に前に、雑草の一山と共にタイワンユリが咲いていた。
タカサゴユリの方が一般的なのだろうけど、なんとなくタイワンユリと呼びたくなる。
ユリは初夏の花という印象が強い中、このユリは夏の中盤以降に咲く。
ササユリの可憐さも、ヤマユリの豪華さも、ない。
廃工場と夏の雲。
季節は巡り、時は流れる、
瀬戸の田んぼはまだ青々としていた。
その中を愛知環状鉄道の列車が走っていく。愛環はローカル線の風情がない鉄道なのだけど、このあたりの風景は好きだ。
森の細道。
人が通る最小限の場所だけ、自然が譲ってくれている。
人が歩かなくなれば、この道は数年で姿を消す。
ハグロトンボは、夏の暑い盛りよりも、少し涼しくなってからたくさん飛び回るようになる。
街中にはまったくいなくなったこのトンボも、森の中ではありふれたトンボのひとつだ。
その姿を見て、少し安心する。
キイトトンボはいつがピークなんだろう。これも海上の森ではよく見かけるトンボだ。イトトンボ自体、昔に比べるとめっきり少なくなった。
ハッチョウトンボの生き残りがまだ何匹がいた。
でも、やっぱりオスしか見なかった。今年は本当にメスを見なかった。
この日一番の目的はこれ、サギソウだった。
今年も再会できたことを喜ぶ。
植物園などでも見られるけど、やはり天然ものの方が嬉しい。
名前のように白いサギが飛んでいるように撮りたい。でも、なかなか上手くいかない。
飛ぶんだ、サギソウ。飛んでくれ。
かなり粘って枚数も撮ったものの、頭の中で思い描くようには飛んでくれなかった。
最後は無理やり飛ばしてみた。
天然ものゆえに、必ずしも撮りやすい場所には咲いていなくて、思うようにいかなかった。
サギソウはどこか他でももう一度くらい撮る機会があるだろうだから、次はもっと飛ばしたい。背景と茎の部分の処理がポイントだ。
次の海上の森行きは9月の終わりか、10月になるか。もう秋の気配が漂っていることだろう。それはそれで楽しみにしたい。
記事タイトルとURLをコピーする