長者町ゑびす祭りでトリエンナーレどころじゃない <第三回>

トリエンナーレ3-1

PENTAX K-7+PENTAX DA 16-45mm f4



 10月23日の土曜日、長者町ゑびす祭りへ行ってきた。
 長者町はトリエンナーレの主要会場の一つで、祭りを見ながらトリエンナーレも見て回って、一挙両得で自分は冴えてるねと思ったら、想像を超える大盛況によって私の甘い考えは打ち砕かれることになった。
 長者町はかつて日本三大繊維問屋街といわれるほど活況を呈した街だった。それが繊維産業の衰退ともに見る影もなくひなびて、今ではかつての栄光の名残を見つけるのも難しいほど活気を失っている。だから、お祭りといってもそれほどたいしたことはないだろうと甘く見ていた。しかし、この週末ばかりはかつての賑わいを一時的ながら取り戻し、まるで長者町が昔に戻ったかのようだった。
 お祭り目当ての人だけでなく、トリエンナーレに訪れた人も相まって、道を歩くのも大変で、トリエンナーレの会場は行列ができているしで、途方に暮れて立ち尽くしてしまった。はて、この状況をどうしたものかと。

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 長者町ゑびす祭りは、街の活性化をはかるために地域の商店街関係者が立ち上がって、2001年に始まった。今年で10回目となり、だいぶ認知度も上がってきたようで、大勢の人が訪れていた。お目当ては安い服やファッション関係のものだったり、フリマだったり、イベントだったり、そんなところだ。
 長者町の一角を封鎖して、道の両側にたくさんの露店が並んでいた。食べ物屋は少なく、多くが洋服関係というのはちょっと新鮮な光景だった。
 トリエンナーレとしての長者町は、チケットが必要な展示場が3ヶ所ほどあって、そのほか無料のものや壁画などがたくさん点在している。どこも狭いビルの中で展示しているから人の流れが悪く、この日は30分待ち、40分待ちとなっていた。3ヶ所で並んだら2時間もかかってしまうということで、早々にあきらめた。長者町は出直すことにして、とりえず祭りを見物することに気持ちを切り替えた。

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 ビルの間の有料駐車場が特設ステージになっていて、バンドの演奏やパフォーマンスショーなどが行われていた。いかにも地元ローカルの手作りな祭りといった風情だ。
 若い女の子がボーカルのバンド演奏を聴いているのは、ベンチに座ることを目的としているような高齢者の方々だった。TRICKの山田奈緒子のマジックショーを思い出した。

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 見覚えのないゆるキャラたちが集合していた。私が知らないだけで有名なキャラなんだろうか。とりあえず、おもてなし武将隊はいなかった。

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 紙芝居に集まった子供は三人。

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 トリエンナーレ用の山車と、その前でパフォーマンスをする一団。
 山車には自転車が2台乗っていて、人がこぐと山車が進む仕組みになっているような気がする。

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 空いているトリエンナーレの展示場にもちらっと入ってみた。
 作品とは関係ところで、自分の影が巨大になったのが面白くて撮ってみる。

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 これもトリエンナーレの作品の一つ。
 トリエンナーレに訪れている人は、ほぼ例外なく手にマップを持ってキョロキョロしているのですぐにそれと分かる。
 とにかく場所が分かりづらい。オリエンテーリング感覚で場所を探し当てることを楽しむという発想もあるにはあるのだけど。

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 長者町はもっとレトロな雰囲気が色濃く残っていると思っていたけど、それほどでもなかった。近年、再開発が進んで、新しい建物や店も増えているようだ。
 それでも古いビルなどがちょこちょこ残っていて、そういうところを撮るのは楽しい。普段なら入りづらいところも、トリエンナーレ期間中はわりと入っていきやすい。

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 猫が壁に描かれた階段。トリエンナーレどうこうではなく、以前からあったのだと思う。
 ビルなのに階段は木製というレトロ感。

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 古さと新しさが混在して、そこに現代アートが加味されると、渾然一体となった不思議な魅力が出てくる。古い建物そのものがアートのようでもあり、境界線が曖昧になる。
 この壁画も、トリエンナーレのアートなのかどうか、判断がつかなかった。

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 このビルはアートではない。でも、現代アートよりも魅力的だ。

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 冗談なのか、悪ふざけなのか、アートなのか、よく分からない。
 汚れた壁に鮮やかなレモンイエローで何かが描かれている。
 これがアートというのなら、スプレーで描かれた落書きもアートということになる。

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 街角のあちこちに、ピンクの服を着たガイドさんが立っていて、訊ねればいろいろ教えてくれる。
 この日は長者町会場をあきらめて、愛知芸術文化センターへ回ることにした。そのときの様子は前々回で紹介した。
 結局、日を改めて平日に出直した。それでもけっこうな人が訪れていて、場所によっては少し並ぶことになった。トリエンナーレは終盤にかけて盛り上がりを見せている。

 追記(More)として伏見駅地下街を紹介したい。伏見地下街もトリエンナーレ会場の一つとなっているのだけど、それよりも何よりも、これ以上ないほどのレトロ感がすごかった。ある意味、長者町で一番の収穫だったかもしれない。

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 伏見駅地下街へと続く階段は、時間旅行の入り口だ。

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 むき出しの配管とうねるケーブル。
 昭和32年開業から、ゆっくり時を重ねてきた。
 さあ、時間旅行の始まりだ。

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 これは……。
 一瞬にして昭和に戻ったような錯覚に陥る。
 基本色は、くすんだ橙色と抹茶色。床は市松模様。
 昔、こんな感じの地下街の映画館があったような気がする。

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 お店のラインナップもなかなかのものだ。
 古めかしい美術店や高級テーラーの店、高齢者向けの洋品店に昭和の喫茶店。どこも入るのに勇気がいる。

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 この薬屋さんもけっこうなものだ。
 店主は寝ているのかと思ったら、何かを読んでいた。
 棚には隙間も多い。

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 理容ニュー大衆。大人高級整髪1,000円。
 一流技術者のみ大募集という張り紙が貼られている。店内では、お母さんっぽい床屋さんが4人くらい、手持ちぶさたな様子でぼんやり椅子に座っていた。

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 大須の洋服屋もすごいけど、伏見地下街はそれを凌駕している。
 けっこう人が歩いているのは、地下街が賑わっているわけではなく、地下鉄改札への通路だからだ。
 普段から伏見駅を利用している人にとっては見慣れた光景なのだろう、この魅惑のラインナップに目もくれずに前だけを見て足早に歩いていく。
 私は端から端までやられっぱなしだった。

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 壁のケースの中に、往年のハリウッドスターの写真がたくさん貼られている。
 それに埋もれるようにしてスパゲッティなどのメニュー写真がある。
 これは一体、何なんだ。お店のメニューなのかと後ろを振り返っても、それらしい店はなかった。入り口近くにあったレストランの宣伝だろうか。

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 こちらはミュージシャン版だ。ギターもある。
 アイスコーヒーやトースターのメニュー写真があるから、やっぱりお店の紹介なのだろうか。

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 当然のことながら、シャッターが降りているところもけっこうある。
 駅の利用客のためにコンビニでもあればそれなりに利用客がいそうなのに、誰も出していないところを見ると、ここはそういう場所ではないのかもしれない。

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 シャッターにペンキで絵を描いていた。
 なんて昭和チックな。
 この場所の空気感は、デジカメよりもフィルム写真でこそ捉えられるように思う。チャンスがあれば、フィルムカメラを持ってもう一度撮りにいきたい。

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