
ちっちゃくて落ち着きがないエナガを撮るのは難しい。これまで何度も挑戦したけど、一度としてまともに写せなかった。慌てすぎてブレてたり、ピントがはずれてたり、場所が遠すぎたりで。このときはたまたま近くで少しの間動かずにいてくれた。それでもオートフォーカスではまったく動きについけいけず、マニュアルフォーカスで連写しまくってやっと一枚まともに撮れた。デジだからいいけど、これがフィルムだったらと思うとぞっとする。36枚撮りでも、へたしたら一枚もまとも撮れてない可能性がある。エナガは銀塩使いの鳥好き泣かせと言えるだろう。
尾が柄杓(ひしゃく)の柄(え)に似ていて、それが長いから柄長。尾が長いオナガ(尾長)というのもいるからまぎらわしい。ただし、姿はけっこう違うから、一度覚えれば見分けは簡単だ。オナガは頭に黒いヘルメットをかぶっている。
エナガはその姿格好から、「スプーン」とか「しゃもじ」なんていう愛称で呼ばれることもあるらしい。英名もLong-tailed Tit、長い尾の小鳥とそのままだ。
体の横と目の上に入った黒い筋、白い腹、脇の薄いワイン色が特徴で、オスメス同じ色なので私には見分けはつかない。
更にエナガにはふたつの大きな特徴がある。ひとつは体がとても軽いということだ。大きさも14cmくらいとスズメよりひとまわり小さく、体重はスズメの半分以下のの9g程度しかない。これは10円玉2枚の重さに相当する。めったなことではエナガなんか手に持つ機会はないだろうけど、もし持つことができたらちょっと驚くほど軽く感じるんじゃないかと思う。この身軽さゆえに、枝に斜めにつかまったり、木の横に垂直に張り付いたり、逆さになったりできる。足なんてこんなにも細いのに。
もうひとつは、鳥の中でもっともクチバシが小さいことだ。とってもおちょぼ口。だから鳴き声も大きくない。ジュルジュルとかチュルルチュルルとか細い声で鳴く。
生息地は、ユーラシア大陸の中ほど、暑くもなく寒くもないところが好みで、あまり高い山にはいない。日本では留鳥(渡りをしない鳥)で全国にいる。沖縄にはいないようだけど、佐渡島や対馬あたりにもいる。北海道には亜種のシマエナガというのがいて、こいつは頭が白色をしている。一度見てみたい。亜種は他に、チョウセンエナガ(対馬)、キュウシュウエナガ(四国、九州、隠岐)がいる。
春から秋にかけては、低い山や樹林にいることが多いのであまり見かけない。冬場は街の方に下りてくるので目撃する回数が増える。この時期はエサが少ないのと、縄張りを作ってないこともあって、シジュウカラ、ヤマガラ、コゲラ、メジロなんかと群れを作って行動してることが多い。だから、冬にこの中のどれかを見かけると近くに他のやつらがいる可能性が高いと言える。
エサは、樹木にいる昆虫やクモなどで、虫の幼虫なども食べる。たまに樹液なども飲むようだ。
繁殖期は4~6月で、一夫一妻。巣作りが凝っていて、蜘蛛の糸と苔で袋状の巣を作り、外に苔を貼り付けてカモフラージュしたり、内側に他の鳥の羽を敷いて居心地よくしたりする。外観は木のコブのようで、探してもなかなか見つからないという。
巣作りもオスメス共同で、卵を温めるのも一緒にやる。更にペアになれなかった他のエナガまでもが子育てを手伝ったりする、仲良しファミリーなのだ。
卵は一回に7~12個とけっこう多い。そのわりに巣は小さくて、子供が生まれた巣の中は大混雑になっていると予想される。いろんな意味でエナガは家庭的な鳥だ。
子供が育って子育てが終わると、またエナガ同士で寄り集まって、群れで過ごす。
自分たちの仲間とも仲良しで、他の鳥たちとも仲良くできるエナガさん、次に生まれ変わって社宅暮らしになってもうまくやっていけそうだ。仲良し一家が、日曜日に庭でご近所さんと楽しそうにバーベキューをやってる姿が目に浮かぶ。
私としては、そんなエナガから生まれ変わって人間になったご近所さんは歓迎したいとは思うけど、だからといって毎週ホームパーティーとかに招かれても困る。自分自身、エナガに生まれ変わったとしたら、うまくやっていけるかどうか自信が持てない。エナガは、なるもんじゃなく、見て写真を撮ってる方がいい。