カモだってフラミンゴだって生きているんだ友達なんだ

動物園(Zoo)
混在カモたち

FUJIFILM FinePix S1 Pro+TAMRON 28-200mm XR(f3.8-5.6), f5.6, 1/100s(絞り優先)


 動物園にいるのは、飼育されている動物だけじゃない。呼ばれてもいないのに勝手にやって来ている野鳥もいる。わりと大きな顔をして、エサなんかも横取りしたりしてる。ハシビロガモくんも、ホシハジロさんも、カルガモっちも、みんな呼んでないですヨ。と、チリーフラミンゴはちょっと不満に思ってるかもしれない。すると、なんでおまえは逃げないんだ、ガァーガァーとハシビロくんは言うだろう。ホント、なんで逃げないんだろうと私も思う。網も囲いもないのに。たぶん、フラミンゴにとってここは暮らしやすいところなのだろう。オレのうちに無断で入ってくるんじゃねえ、おめえに食わせるタンメンはねえ、などという小競り合いが日々繰り返されているのかもしれない。見たところモメてる様子はなかったけど。
 しかし、自然界では絶対見られない光景だな、これ。

 首が深緑なのがハシビロガモ。一見マガモに似てるけど、体のサイズに似合わない広くて大きなクチバシで見分けがつく。名前はそこから来ている。英名もショベラー(shoveler)だ。
 メスは他のカモ同様、地味な褐色だけど、やはりクチバシが広くて大きいので分かる。
 夏場は繁殖のためにユーラシア大陸や北アメリカ大陸のやや北よりのところで過ごし、秋になると南に下ってくる。そのときはオスもメスそっくりの地味な体をしているのだけど、目だけが黄色いので見分けがつきやすい。メスは黒い目をしている。
 そんなに珍しいカモではないとはいえ、どこにでもここにでもいるというわけでもない。数もさほど多くない。
 くるくる円を描いてるカモがいたら、それはハシビロガモだ。好物のプランクトンを集めるために水面に渦を作って集めてから一気に水ごと飲み込む。クチバシの合わせ目にギザギザの歯のようなものがついていて、そこでろ過して動物性のプランクトンをいただく。他のカモが食べないようなものを狙うためのあのクチバシというわけだ。昆虫や草の種なんかを食べることもあるけど、あまり好きではないらしい。あくまでも狙いはプランクトン。

 カルガモについては前に書いたので飛ばして、奥の頭の赤茶色いのがホシハジロ。漢字で書くと星羽白。羽白は分かるけど星はなんだろう? 背中の黒い斑が星みたい、と図鑑には書いてあるけど、それらしいものは見当たらない。
 同じように頭が赤茶色のヒドリガモ(これも前に書いた)とよく似てるから間違うことがある。ヒドリは頭の中央にモヒカンのように白い線が入ってるので区別できる。あと、このホシハジロは目玉が赤色をしてるのでそこを見たら分かる。秋にメスと区別するときもそこを見る。メスは褐色の目玉をしてる。
 こいつらはヨーロッパの真ん中から北あたりで繁殖して、秋になると日本などの南に飛んできて冬を過ごす。本来は海ガモに分類されるもので潜水が得意なのでこんな浅い池なんかには来ないはずだけど、動物園はメシがあるから来てるのだろう。ただし、海ガモでありながら海に行くことはあまりないらしい。キンクロハジロとよく一緒にいる。
 潜水が得意で最大3メートルくらい潜れる。顔を突っ込んで尻だけ半分出して逆立ちしてるオナガガモなどは淡水系のカモに分類される。
 メシは雑食。植物の葉や根や種から、水生昆虫、小魚、軟体動物、甲殻類、両生類等など、そこらにあるものは何でも食べる。
 歩きは苦手なので、あまり水からあがってるところは見かけない。

 最後はフラミンゴについて。フラミンゴと聞いてつい反射的に、背番号1のすごい奴が相手~♪と歌い出してしまったあなたは、きっと30代以上。アイドル歌手の歌詞に登場してしまうプロ野球選手って、考えたらすごいな。なんのことか分からない若手の人は、お父さん、お母さんに訊いてください。
 フラミンゴというのは、フラミンゴ目に属する鳥の総称で、一種類の鳥を指すわけじゃない。ベニイロフラミンゴ、ヨーロッパフラミンゴの2亜種からなるオオフラミンゴや、コフラミンゴ、チリーフラミンゴなどがいる。写真のこいつはチリーフラミンゴだ。灰色の足とピンクの関節が目印。チリ、ペルー、アルゼンチンなどの塩水湖やラグーンで暮らしている。
 とにかく集団行動が大好きな彼ら。ときに数百万匹の群れになるという。孤独が大好きなサギとは大違いだ。運動部向きの性格と言えよう。
 クチバシが、KOされて鼻の骨が折れたボクサーのように曲がっている。一体どうしたんだ!? と驚くかもしれないけどこれで正常な状態だ。たぶん、こうなっている方が水中のプランクトンを食べるのに都合がいいんだろう。
 フラミンゴがピンク色をしてるのは、生活してる湖が塩水で、そこの海草類にカロチンが大量に含まれているからだ。元々ピンクの羽をしてるわけではない。だから、動物園で普通のエサを与えていると体は白くなっていく。でもそれじゃあフラミンゴらしくないので、エサに着色料を混ぜてピンクを保っているようだ。ある意味カラーヒヨコ的?
 野生では、子育てをするとき、ヒナにフラミンゴミルクと呼ばれる赤色の母乳のような液体を口から出して育てる。すると、だんだん体が白くなっていくという。ちょっと感動的な話だけど、人間のお母さんが白い母乳を赤ちゃんにあげているとだんだん黒くなっていたら、それはイヤだなと思う。
 卵は通常1個。ストップ・ザ・少子化! と心配するなかれ。寿命は40年から50年! 長生き! 元々数が多い上に、これといった天敵もいないのに、子だくさんでは困ってしまうから、1個で充分。

 ひとくちに鳥といっても世界には実にいろんな鳥がいるわけで、この無駄こそ地球の一番いいところだと私は思う。花も、動物も、昆虫も、魚も。そして、人間も。どう考えてもこんなに種類はいらないと思うけど、現にいるから面白い。
 動物園というのは、そういうことをあらためて思い起こさせてくれる場所でもある。見るべきものは檻の中の珍しい動物に限らない。野生の鳥もいるし、いろんな人間模様も垣間見える。
 遠い将来、動物の鳴き声翻訳機というものが開発されるかもしれない。犬用、猫用の出来はもうひとつだったみたいだけど、まったく不可能な技術ではない気がする。動物園の動物たちは何を思い、何を言ってるんだろう。そんな翻訳機が発明されるまで長生きしたいと思う。
 でも、チキショー、ここから出しやがれ! もっと旨いメシ食わせ! などの罵詈雑言ばかりだということが分かって翻訳機の持ち込み禁止、なんてことになったりして。

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