松阪は生まれた町なのにストレンジャー<前編>

観光地(Tourist spot)
松阪散策-1

PENTAX K10D+PENTAX DA 16-45mm f4



 もう一度、松阪の町を歩き直さなくてはいけないと、ずっと前から思っていた。
 松阪は、私が生まれた町だ。もう少し正確に言うと、父親の生家が松阪の奥の多気郡勢和村に、母親の生家が三瀬谷にあって、私は松阪の病院で生まれている。
 しばらく三瀬谷で過ごしたあと、一家で名古屋に引っ越したので、松阪で育ったわけではないのだけど、小さい頃から、毎年夏と冬は勢和村の祖父母の家に行っていたから、自分の故郷は松阪だという思いが強い。
 小学校に入る前から、一人で近鉄電車に乗って、松阪まで来て、三交百貨店を少し見て回ってから三重交通のバスで勢和村へ行っていた。松阪駅前は、心の原風景といったものに近い。あれから長い年月が経ったけど、駅前はあまり変わっていないように見えた。
 鈴もそのままだ。鈴の上にある提灯は見慣れないもので、見ると三社まつりや祇園まつりの文字が書かれている。この日はちょうど、祭りの日で、そのことは知らなかった。あとになって知ることになる。
 大学に入ってからは、車で勢和村まで行くようになったから、駅前は長い間訪れることがなかった。
 松阪の町を歩いたのはいつ以来なのか、ちょっと思い出せないほどだ。子供の頃、両親に連れられて、松阪城跡まで歩いたことがあった。かなり小さいときだったので、ぼんやりとした記憶しかない。今回の松阪町歩きは、実にそれ以来のことだった。自分の中の距離感が近すぎて、あらためて歩いてみようという発想自体がなかった。
 伊勢奥津行きのバスの時間に合わせると、松阪での待ち時間が30分になってしまう。それならいっそのこと、もっと早く松阪に行って、名松線の時間まで町を歩こうと思いついた。いい具合に2時間確保できたので、町歩きにはちょうどいい時間だった。
 そろそろ歩いておいた方がいいという、巡り合わせだったのだろう。物事にはタイミングというのがあって、実現しないときはしないし、するときはあっさりするものだ。

松阪散策-2

 駅前の屋根付き商店街。
 私が知っている頃も、華やかだった頃は終わっていて、ややさびれた感はあったけど、あれから時代が進んで、だいぶシャッターの店も増えていた。
 しかし、この日ばかりは昼前から様相が一変した。松阪祇園まつりで、商店街にずらりと出店が並び、大勢の人が訪れていた。祭りは午後からで、見ることができなかったのだけど、帰りに準備をしているところに行き会って、賑わいの一端を見ることができた。

松阪散策-3

 好きな雰囲気の路地。
 あまり寄り道をしている暇はなかったので、とりあえず先を急ぐ。

松阪散策-4

 駅前の大きな交差点。雰囲気は変わらないものの、店の顔ぶれはだいぶ変わっているような気がする。
 もう少し進んだところにあった本屋は、まだ営業しているだろうか。何度か入って、本を買った。

松阪散策-5

 少し裏に入ると、こんな蔵も残っている。松阪は商人の町で、かつては大いに繁栄した歴史を持っている。

松阪散策-6

 塗料屋さんというのは、他ではあまり見ない。ここはけっこう古そうだ。
 このあたりはホームセンターがなさそうだから、それでこういう商売も成り立っているのだろう。

松阪散策-7

 すごく松阪らしさを感じさせたワンシーンだった。どこがどう、よその土地と違うのかは分からないのだけど、うちの田舎っぽいと思った。
 松阪のおじいちゃんは、だいたいこんな感じと言えなくもない。

松阪散策-8

 駅から離れると、まったく土地勘がないので、自分がどこへ向かってどこを歩いているのか分からなくて、迷ってしまった。
 この町の生まれなのに、地図を見ながら、しばし立ち尽くす。完全なストレンジャーだ。
 松阪の町は、東西南北の軸が傾いていて、方向感覚を掴みづらい。今更ながら、そのことを知る。

松阪散策-9

 シャッターが降りたさびれた通り。
 昔の姿を知らないので、比較しようがない。

松阪散策-10

 目指していたのは、旧伊勢街道と、魚町の通りだった。そのエリアに古い家並みが残っているという。
 近づくと、だんだんそれっぽい雰囲気になった。ここは昔ながらの食品店で、今も営業を続けていた。

松阪散策-11

 昭和の佇まいを残す古い家。アパートのようでもあり、下宿屋の二階といった感じもある。

松阪散策-12

 三井財閥の基礎を作った三井高利が生まれ育った家が残されている。残念ながら、一般公開はされておらず、鉄の柵でがっちりガードしてある。
 松阪で生まれた三井高利は、江戸へ出て呉服屋を出店した。三越の前身、越後屋だ。その後、京都でも両替商をやり、財を築く。
 高利の死後、遺産は長男の高平らが継ぎ、三井十一家へとつながっていく。

松阪散策-13

 丸ポストのある風景。古い町並みによく似合っている。

松阪散策-14

 昔は何かのお店だったのだろう。駄菓子屋さんだったとしたら、ぴったりだ。

松阪散策-15

 オーミヤの文字はあるものの、それだけでどんな店かは想像できない。
 肉屋さんとか、魚屋さんとかという感じはする。

松阪散策-16

 古い看板が残る、油寅商店。荒物、雑貨とある。

松阪散策-17

 参宮道と書かれている。旧伊勢街道は、伊勢神宮へ向かう道で、各地に参宮道というのがあった。この道は、今でも参宮道という呼び名が残っているのかもしれない。

 松阪町歩きは、まだ続く。
 後編へ。
記事タイトルとURLをコピーする
コメント
コメント投稿

トラックバック