
去年の今日3月14日、東山動物園のオスライオンのライが老衰で死んだ。推定25歳、人間でいうと80歳くらいにあたるというから、まずまず生きた方と言えるだろうか。その前の月に堀に落ちて動けなくなっていたというニュースがあったあとだったけにそれが原因かとも思ったらそうでもなかったらしい。一時は元気になっていたというから。もしかしたら自分の最期を感じて、気持ちが遠い故郷に戻っていって足を踏み外したのかもしれない。
写真はメスのナン10歳。顔がなんとなく森繁久弥に似ている。車いすで人の葬式に必ず現れてしまいそうだ。人間でいうとまだ40前だというのに、なんとなく口元のしまりのなさや腹のたるみが気になる。元気にうろつきまわっていて足取りは軽かったけど。
現在東山動物園にいるライオンは3頭。前からいる14歳メスライオンのオンと、去年旭山動物園からやってきた4歳のオスのサンと、このナンと。ただ、メス同士はどうにも仲が悪くて一緒にできないのと、オスは若すぎてバランスが悪いのとで、みんなが集まっているところは見られなかった。子供ができるといいんだけど。
かつてライオンは地球上の広い範囲に暮らしていた。アフリカ、ヨーロッパ、中近東、インドまで。現在はアフリカとインドの一部にしかない。人間との共存が難しい動物だから仕方がないとはいえ残念だ。
ライオンといってもいくつかの亜種がいる(区別は研究者によっても様々らしいけど)。インド・ライオン、アビシニア・ライオン、セネガル・ライオン、ソマリ・ライオン、マサイ・ライオン、カタンガ・ライオン、カラハリ・ライオン、クルーガー・ライオン、バーバリ・ライオン、ケープ・ライオン。
生息地やたてがみ、頭骨で区別されるらしいけど、一般的には区別は難しいと思う。アフリカライオンとインドライオンの2系統がいるというくらいは知っておいてもいいかもしれない。
中にはエジプトのバーバリ・ライオンのように20世紀に入ってから絶滅したものもいる。
大きさは種によってバラツキがあり、体長1.5~3メートルくらい、体重は150~250キロくらいで、動物園のものはやや肥満気味で400キロを超えてるやつもいる。
野生のライオンは狩りがあまり上手くないから、慢性的におなかをすかせていてあまり肉付きはよくない。めったに獲れない草食獣だけではおなかがもたないから、は虫類や、昆虫なども食べてる。他の動物が残したものも食べる。
狩りをするのはメスの役目で、オスはたまに手伝うくらい。あまり働き者のオスライオンというのもイメージが壊れるので、ゆったり構えていて何もしないくらいでちょうどいい。人間のオスがこんなに弱くなった今だからこそ、ライオンのオスくらいは威張っていて欲しい。食べ残しのゴミ捨てをやらされて、地面に埋めてる様子などはあまり見たくない。
野生のライオンは通常、オス1頭(もしくは2頭)、メス数頭と子供たちという単位で行動している。それはプライドと呼ばれ、その中ではきちんとした秩序と平和が保たれている。
子供は2歳くらいになると群れから追い出される。オスが増えると何かと問題が出てくるから。追い出されたオスはどうするかというと、1匹または兄弟たちと数年間放浪したあと、別の群れの乗っ取りに出る。乗っ取れなかったらまた放浪を続け、乗っ取ることが出来ればその群れの新しいボスとなる。乗っ取られた老いたライオンは、体力気力が残っていれば別の群れに挑みかかり、それが無理なら引退となる。ライオンのオスも強くなければ生きていけないという意味ではとても厳しい。
新しいボスが行う子殺しは有名な話だ。前のオスとの間に生まれた子供を次々に全部殺していくのは残酷な話だけど、子供がいる間はメスが発情せずに自分の子孫を残せないから必然なのだ。
ライオンは百獣の王と呼ばれるだけあって、確かに強い。自然界でトラと決闘するような場面はほとんどなかっただろうけど、人間がやってみたところ、やはりライオンが勝ったという話もある。サーカスなんかでも似たようなことがあったらしい。それなのに何故松島とも子をしとめそこなかったのか? いや、助かってよかったんだけど。
サーカスといえば、かつてはトラとライオンをかけあわせた子供を作る試みも行われていたようだ。何例かは成功したようだけど、確率はかなり低かったらしい。日本ではヒョウとライオンの混血が生まれたことがあったという。
動物園では何を食べているかというと、やはり基本的には肉だ。馬肉や鶏の頭などを一日に10キロくらい食べているという。お歳暮でもらう柔らかいしゃぶしゃぶ用の松阪牛を投げて与えたらどんな反応をするんだろう? 美味しそうに食べてくれるのか、それとも歯ごたえがなさすぎてつまらないと思うんだろうか。
動物園のエピソードでちょっと面白いと思ったのは、人に爪を切ってもらってるということだ。放っておくとどんどん伸びてしまうから、切るというより削っているそうだ。もちろん麻酔をかけて。猫みたいに爪研ぎを与えておいたら自分でガリガリしたりはしないのか。
寿命は思ったより短く16年くらい。動物園では20年以上生きる。このへんは猫より少し長生きくらいだ。
動物園のライオンは、子供たちにも大人にも意外と人気がない。だらけてることが多くて、動きが少ないから迫力もない。でもそれは仕方がないことだ、ライオンは夜行性なのだから。夜の動物園というのは、昼とはまったく違った野生の空気感に包まれているのだろう。見てみたいような怖いようなだ。
夜の動物園に見学者を入れるというのは難しいだろうから、ビデオで撮ってHPで流してくれるといいと思う。なんなら有料でもいい。これだけネットが浸透して通信環境が整ってきたのに、動物園のネット利用はかなり遅れている。動物園とHPを連動して上手く活用すれば人を呼ぶきっかけにもなるし、商売にもなる。ただ、あまりにも野性味満点すぎて子供が泣いてしまうようだと困るだろうけど。