
東山動物園で見つけたヒメオドリコソウ。動物園には飼育されている動物だけじゃなく、野鳥もいるし野草も咲いている。動物園にわざわざ野鳥や野草を撮りにいく人もあまりいないだろうけど、けっこうねらい目ではある。
ようやく姫が踊ってるところを見られてすっきりした。これで初春の野草3点セットが完成して、いよいよ春本番だ。春一番は最近見かけないけど、元気だろうか。長州小力に取って代わられたな。
明治時代に日本に入ってきたヒメオドリコソウの原産地はヨーロッパ。明治26年に東京の駒場で最初に見つかったと言われている。最初は本州のみで咲いていたものが四国、九州へも広がっていった。北海道や沖縄はどうなんだろう? たぶんあっちまで広がってるんだとは思うけど、本州の私たちが思うほどポピュラーな野草ではないのかもしれない。アジアや北アメリカでも普通に咲いているようだ。
元々日本にはオドリコソウがあった。花や葉っぱの形は似てるけど、オドリコソウはややピンクがかった上品な感じで、花の形が笠をかぶって踊っているように見えるところから名前が付けられた。そのオドリコソウに似ていて、あちらよりも小さいということでヒメオドリコソウと呼ばれるようになったというのが流れだ。
ヒメオドリコソウって言われても踊ってるように見えないぞ、と思っていた人もけっこういるかもしれない。それはこういうわけだったのだ。私もヒメオドリコソウを見ても踊ってるようには見えない。
このへんはイヌノフグリとオオイヌノフグリとの関係に少し似ている。ただ違うのは、オドリコソウとヒメオドリコソウは好む場所が違うので、ヒメオドリコソウがオドリコソウを駆逐したという図式ではないという点だ。繁殖力はヒメの方が強く、もともとのオドリコソウを見ることは少ない。
似ているといえば、花の様子はホトケノザに似ている。ホトケノザが花をびよ~んと伸びているのに対して、ヒメオドリコソウは姫のように恥ずかしそうに少しだけ顔を出しているという違いがある。葉っぱを見ても区別がつく。ヒメオドリコソウの葉っぱはギザギザのハート型をしている。30代以上の人なら、ギザギザハートの子守唄で姫が踊ってる、と覚えれば間違いなし!
ホトケノザとの共通点でいうと、花の下唇のようなところがハナアブたちの足場になっていて、上にあるおしべがハチたちの背中について花粉を運んでもらうという仕組みも共通だ。
あと、アリに種子を運んでもらうという方法も一緒で、アリが好きなエライオソームが付いていて、アリはそれを運ばずにいられないようになっている。エライオソームだけ食べたり取れたりしてしまった種はその場で放り出されてしまい、条件がいいとそこで咲く。ときに思いがけないような場所で咲いてるのはそのためだ。
白いヒメオドリコソウもあるらしいけど、私は見たことがない。
ヒメオドリコソウの変異またはホトケノザとの雑種ではないかといわれるモミジバヒメオドリコソウというのもある。別名キレハヒメオドリコソウ。これも私は見たことがない。区別はなかなか難しく、キレハの別名通り、葉の切れ込みが強くてギザギザになってるとか、葉が菱形っぽいとか、葉っぱが赤紫にならないとかの特徴があるようだ。これまで見ていて見落としてたかもしれないから、今度から気をつけておこう。
これからもっと春が深まっていくと、ヒメの集団が出現する。ときどきびっくりするくらい群生してることもある。離れたところから見ても赤紫のじゅうたんのようでよく目立つ。その様子はきれいというよりやや毒々しい感じがしないでもない。オオイヌノフグリとは仲良しで、一緒に咲いていることが多い。そのときのブルーとピンクのコントラスが私は気に入っている。
ホトケ、オオイヌ、ヒメと3点撮り終えたところで、これから春の野草シーズン本番が始まる。ここまではオープン戦のようなものだ。開幕はこれから。いったん咲き始めたら春の野草は次々に咲いてくる。一週間、二週間でガラッと顔ぶれが入れ替わることがあるから、こちらも油断できない。
山はカタクリ、湿地はハルリンドウ、野はスミレ。そのあたりがそれぞれのトップバッターと言えるだろう。
これからますます地面をキョロキョロしながら歩くことになる。あんまり下ばかり見て歩いていると、そのうち1億円でも拾ってしまうかもしれない。もし拾ったら、写真とともにこのブログで紹介します。