
東山動物園の動物シリーズ一回目はホッキョクグマにした。
いわゆる白クマさんだ。白クマというわりには毛が薄汚れてるなと思ったら、体調がいいときは毛並みが黄色がかるんだそうだ。何日も風呂に入ってないとかいう理由ではない。
ホッキョクグマの居住ゾーンは庭付き一戸建てのように環境がよかった。庭にはプールもあり、室内は冷房完備。広さは100坪くらいあったかもしれない。ちょっとした豪邸並みだ。
2頭はオスとメスだろうか。さかんに吠えたり、階段を駆け上がったり、追いかけあったりして元気だった。これくらい広々としていると好感が持てる。一畳くらいのスペースでうろつき回ってる動物を見ると、かなり残念な気がする。
東山動物園におけるホッキョクグマは、天下りの会社役員並みの好待遇で迎えられてると言えるだろう。
北極にいるから北極熊。地図の上の方の狭い地域一帯、アラスカやグリーンランド、シベリアなどに現在2万頭ほどが生息している。
陸上に生きる四つ足の生き物の中で一番大きいのがこのホッキョクグマだ。ヒグマよりも大きい。オスは2メートルから2メートル50くらい、体重は300キロから最大800キロにもなる。メスはややスマートで体重がその半分くらい。それでも充分に大きくて重い。人間で対抗しようとしたら、小錦が舞の海を肩車するといい勝負になるかもしれない。でも、それでは動きが鈍すぎてやられてしまう。熊は意外にすばしこい。舞の海の猫だましではクマもびっくりしないだろう。
泳ぎだって得意だ。犬かきならぬ熊かきで時速6キロから10キロくらいで泳ぐ。休まず100キロだって泳げるというから、50メートルしか泳げない私などあっという間にエジキになってしまう。北極圏で泳ぐのはやめておこう(その前に寒さで死んでしまう)。
鼻がいいのも特徴で、1キロ先の匂いまで分かる。
好物はアザラシ。氷の穴から息をするために顔を出すのを氷の上に伏せて待ち伏せして、アザラシが顔を出したところを腹ばいダッシュで近づいて前の手で一撃。モグラ叩きのアザラシ版。アザラシ側から見たら、恐るべきやつだ。
その他、セイウチやときにはクジラなども襲う。ただ、北極圏はそれほどエサが豊富ではないため、魚や貝、海鳥なんかも食べたりする。何もないと海草も食べて飢えをしのぐ。周辺には人間がいないから襲われたというニュースは聞かないけど、人間もいたらエサになると思う。北極にいくときは差し入れを持っていこう。
こんな肉食獣な彼らだけど、好きなのは肉よりも脂身で、食べ物に余裕があるときは、アザラシの脂だけ食べて赤みは残すらしい。体脂肪が多い人は、あまりホッキョクグマに近づかない方がよさそうだ。
動物園では何を食べてるかといえば、さすがにアザラシを与えるわけにはいかず、鶏肉や魚を中心にニンジン、リンゴ、ヨーグルトなどをやっているそうだ。アザラシを襲ってるシーンなんか見せた日には、子供やお母さんの悲鳴が飛び交って大変なことになってしまう。
白クマというからには毛は白いと思いがちだけど、実は筒状の透明で、それが光に当たると白に見えるだけだったりする。地肌は黒というのもちょっと意外だ。
何しろ寒さに耐えなければいけないんで体脂肪率30パーセントで、乾きやすいたっぷりの毛皮を身にまとっている。足の裏にも肉球が隠れるくらい毛が生えていて、おかげで氷の上でも滑らずに歩くことができる。寒さにはめっぽう強い。マイナス40度でも体温が変化しない。
ということは逆に言うと暑さには滅茶苦茶弱い。名古屋の夏をどうやって乗り切ってるのか心配になるほどだ。よくニュースで氷の固まりをもらって抱えてるところを見るけど、あんなものは気休めだ。とてもじゃないけど炎天下では耐えられないんで、夏場は冷房がガンガン効いてる室内で過ごす。すごく電気代を食いそうだ。春になってきてそろそろ彼らにしてみたら暑さの限界が近づいてきてるのかもしれない。
野生のホッキョクグマは、繁殖期以外は単独行動をしている。暮らしてる土地柄なのか、性格なのかは分からない。エサの問題もあるのだろうか。
出産は真冬。一度に産まれるのは1頭から多くても3頭。極寒の地では子だくさんでは困ってしまう。お母さんは雪の中に穴を掘って、そこで子供を抱えるようにして数ヶ月間、絶食状態で子育てをする。この間はおかなも空いてるし、子育ての大変さもあって、メスがもっともイライラしてる時期だ。うかつに近づいたらやられてしまうので注意が必要だ(そんなところに一般人が迷い込む機会はないけど)。2歳から4歳くらいまで母親と一緒に過ごす。
動物園での出産はかなり難しいようで、あまり例がない(円山動物園などでの数例あるらしい)。
寿命は、野生では25年から30年くらい、飼育下での最長は34年だそうだ。長いような短いような。
飼育そのものがやはり難しいようで、国内の動物園のどこにでもいるというわけではない。北海道、東京、神奈川、静岡、愛知、大阪、兵庫、和歌山、徳島、愛媛の14ヶ所だそうだ(変動があるかもしれない)。
旭山動物園に新しくできた「ほっきょくぐま館」は評判がいい。大型水槽の横からガラス越しに泳ぐ姿が見られたりするそうで、迫力満点なんだという。旭川動物園はいつか行きたい。
東山動物園のホッキョクグマは嬉しいのか悲しいのか、うぉーうぉーと盛んに吠えていた。高いところに登ると、少し離れた隣のカリフォルニアアシカが目に入る。のんきに昼寝してるアシカたちを見て、あれ襲いてぇ~、食いてぇ~と吠えているのかもしれない。なんてことを想像した。あの配置は東山動物園側の狙いなんだろうか。
動物園の使命のひとつとして、動物をいかに野生の姿に近づけるかというのがあると思う。旭川動物園が成功したのはその点だったんじゃないか。私と同じように動物園が苦手という人の多くは、元気がない動物を見たくないからというのがあると思う。そういうことでいえば、このホッキョクグマは見ていて気持ちがよかった。
これから暑くなってくるとホッキョクグマの動きがだんだん鈍くなってくるから、暑くならないうちに見に行くことをオススメします。