セントレアの空は焼けず

飛行機(Airplane)
セントレア-1

PENTAX K10D+PENTAX DA 55-300mm f4-5.8 / 16-45mm f4



 名鉄電車フリーパスの旅で最後に訪れたのが、セントレアこと中部国際空港だった。
 この日は乗り放題の券を手に、朝から夕方まで名鉄電車に乗ってあちこちを巡ってきた。そのときの様子は近いうちに紹介するとして、今日はセントレア編をお送りしたいと思う。
 旅のクライマックスとしてセントレアを考えていた。夕焼け時間に合わせて夕方6時過ぎに到着するというのは予定通りだったものの、残念ながら天気は予定通りとはいかず、空は焼けないまま日没を迎えてしまった。そのせいで撮れなかった写真もあり、逆に撮れた写真もあるから、晴れていることが必ずしも天気に恵まれるということではない。上の一枚も、太陽が出ていたらたぶん撮れなかった写真だ。少なくともこういう雰囲気にはなっていない。

 セントレアの開港は2005年、愛・地球博と同じ年の2月17日だった。5年目にしてようやく初めて訪れたといのは、さすがに出遅れの感は否めない。
 当初は愛知の新しい観光スポットとして大人気を博して、一時は万博よりも混んでいるという話だった。押すなおすなの大盛況は、その大部分が観光客で、搭乗客が飛行機に乗り遅れそうになるなんてこともあったとか。愛知らしいエピソードだ。
 あれから5年が過ぎて、今やブームが去った観光地になり果てた。新しいものにはワッと飛びつくけど、そのあと潮が引くように人がいなくなってしまうというのが愛知の県民性というものだ。セントレア関係者がそれをどこまで読んでいたのかどうか。去年あたりからぐっと収益も減って、かなり困っているという話も伝わってくる。利益の半分を飛行機以外の観光収入でまかなおうというつもりらしいけど、それはちょっと愛知県民を読み違えているのではないか。そもそも、空港が観光地になるというあたりが田舎を表しているとも言える。
 少し前までは展望デッキに人が溢れていて、写真を撮るのも大変だったそうだけど、今はもうゆっくり撮ることができる。5年も寝かせればこういうことになるだろうという私の読みは当たった。平日の夕方とはいえ、人が少なすぎて寂しいくらいだった。
 セントレアは、知多半島の真ん中あたり、常滑沖の人工島にある。
 まったく何もないところに作った島なので、基本的には空港しかない。半島とは有料道路と鉄道でつながっている。一般の橋は架かっていないから歩いては渡ることはできない。
 電車は直通の名鉄電車が名古屋駅から出ていて、35分ほどかかる。小牧の名古屋空港と比べて不便になった人もたくさんいることだろう。
 距離よりも問題は、最終電車が23時13分という点だ。交通は鉄道か車しかなく、船便もそんなに遅くまではない。空港自体は24時間営業なのに、23時くらいで電車がなくなってしまうのはまずい。飛行機なんて遅れることはよくあることで、そんなときはあきらめて空港内のホテルに泊まるか、高いお金を払ってタクシーで帰るしかない。空港で働く人たちも困っているという。
 愛称のセントレアは、一般公募で選ばれた。中部を意味するセントラル(central)と、空港のエアポート(airport)を組み合わせた造語だ。地元の人間はけっこう気に入っているのか、セントレアと呼ぶ人が多い。関空みたいに中空なんて言ってる人間はいない。
 美浜町と南知多町が合併して南セントレア市になる一歩寸前までいって、結局は実現しなかったというエピソードを覚えている人もいるだろう。名前に抵抗がある住人が多かったのか、合併自体がなくなってしまったのだった。南セントレア市なんて、あかすか、と怒っていたお年寄りも多かったのだろう。
 空港内の施設はなかなか充実している。地元有名店など100店舗以上が入っていて、名古屋の味を楽しんだり、買い物をしたりするのに不自由はない。免税店も国内最大規模となっている。
 日本初の空港内展望風呂というのもあって、風呂に浸かりながら飛行機の離発着が見られるというのが売りだ。
 結婚式もできるようになっていて、空港内で式を挙げて、レストランで披露宴をして、そのまま泊まって、翌日に新婚旅行に旅立つなんてこともできる。
 観光バスツアーも組まれていて、県外の人だけでなく、名古屋人も訪れる。空港で観光なんて貧乏くさいと思ってる人もいるだろうけど、行ってみると充分観光地として成り立っていることが分かる。電車に乗ってミュースカイなどを撮りつつ、空港で飛行機を撮って、食事をして、お土産を買って帰るというメニューで半日は持つ。常滑の町歩きや知多の海とあわせれば一日観光コースだ。

セントレア-2

 飛行機を撮るためには、スカイデッキに出る必要がある。飛行場に慣れていない私は、まずそこまでの行き方が分からず、半ば迷子状態になった。
 さんざんキョロキョロ見回してスカイデッキと書かれた案内を探すも、まったく見つからない。あまりにもうろうろしすぎて、このままでは不審者に間違われると思ったほどだ。いったんトイレに行って気を鎮めつつ、もう一度探したけどやっぱり発見できない。あきらめて、警備員さんに訊くことにした。
 電車が到着するホームは2階で、スカイデッキは4階にあった。あちらですと指を差された方を見ると、確かにスカイデッキの案内が出ている。けど、分かりづらいっ。電車を降りてすぐのところから案内で誘導して欲しい。
 完全に田舎者のお上りさんと思われたなと落ち込みながらスカイデッキを目指した。

セントレア-3

 日没20分前の空はこんな感じ。わずかに焼けている程度で、夕焼け空には遠く、空も暗い。太陽もとうとう顔を出さなかった。
 スカイデッキから見て滑走路は西向きにある。夕陽や夕焼け空を絡めつつ離発着する飛行機を撮るという計画は崩れ去った。これだけ暗いと撮影の難易度は一気に上がってしまう。
 フェンスは伸びるワイヤー製で、いいような悪いような微妙なところだ。極太の超望遠レンズは入らないかもしれないけど、普通の望遠程度ならワイヤーの間に差し込むようにすれば、ワイヤーは写らない。ただ、その状態で動く飛行機を追いかけるのは難しく、あまり振り回すとレンズに傷がつきそうだ。
 当初はフェンスなしということだったのに、国土交通省がそれでは駄目だと言い出して、ワイヤーのフェンスがつけられることになったようだ。このワイヤーフェンスさえなければ、飛行機撮りには申し分なかったのに。つけるにしても、もう少し飛行機撮りの人の意見を聞くべきだった。もっと手前にして、垂直にすればよかったのだ。そうすれば楽な姿勢でレンズを出して撮影できた。

セントレア-4

 一人で空港を訪れている女の人にはドラマ性がある。何か物語めいたものを想像する。
 同じ一人でも、カメラをぶら下げた男にドラマはない。ただの飛行機好きだ。自分はそうじゃないんだという言い訳は通用しない。

セントレア-5

 なんか見覚えのある乗り物に乗っている人がいた。これは愛・地球博で見たやつではないか。どうやら空港の警備員さんがこれに乗ってぐるぐる周りながら巡回をしているようだ。ちょっと近未来的な光景に映った。
 帰ってから調べたところ、愛地球博に出品されたのはi-unitというやつで、これは4代目に当たるi-REALというマシンだ。
 基本のi-REALをセントレア用に改造したもので、2009年の6月から導入されたとのことだ。
 空港内での最高時速は6キロということで、早足くらいのスピードでゆっくり流していた。
 性能としては時速30キロまで出せるということで、一般向けに実用化される日もそう遠くないかもしれない。

セントレア-6

 見慣れない飛行機がいた。エティハド航空のA330というやつで、アラブ首長国連邦の飛行機会社のものらしい。
 今年の2月に日本で初めてセントレアに来て、3月からは成田とも結んでいる。
 中東の路線では、それまであったエミレーツがなくなってしまって、セントレアでは一年ぶりの中東路線となった。
 週4便、UAEの首都アブダビと結んでいる。
 オイルマネーがギンギンの航空会社で、なかなか評判もいいようだ。

セントレア-7

 近くにとまっている飛行機は、望遠を使えばコックピットの中まで写せる。

セントレア-8

 スカイデッキと滑走路との距離は、近いといえば近いし、遠いといえば遠い。
 300mmの望遠ズームでも届くけど、できれば500mmの望遠ズームが欲しい。単焦点は使いづらいと思う。
 空港での撮影は羽田に続いて二回目なのだけど、今ひとつ勝手が分からず、戸惑うことが多い。ワイヤーも、ええい、邪魔くさい。

セントレア-9

 飛行機撮りの醍醐味といえば、やはり離陸と着陸の瞬間だ。
 暗すぎて普通に撮るのは不可能になったため、流し撮りをする。けれど、流し撮りで止めるのは難しい。連写して、その中の一枚でも当たればいい方だ。

セントレア-10

 これは着陸の流し撮り。着陸のシーンは一度しかチャンスがなくて、その中ではまずまず成功した方だ。
 飛行機撮り初心者としては、このときの条件は難しすぎた。もう少し明るい条件のときに撮りたい。

セントレア-11

 空が焼けないまま日没時間を過ぎて、もうこれ以上粘っても撮れないと判断して帰ることにした。
 初夏とはいえ、海上の吹きさらしなので、寒いっ。

セントレア-12

 猫の目視点で見るスカイデッキ。手持ちでは撮れないので、下に置いて撮ってみる。もちろん、空港内に猫はないけど、猫が見る世界はこんな風に見えているんじゃないだろうか。

セントレア-13

 夕暮れの空港内。こういう雰囲気もなかなかいい。

セントレア-14

 ターミナルの中を撮ったら不思議な写りになった。光の加減だろう。何か特殊な光を使っているのかもしれない。
 スカイタウンと名づけられたエリアにはたくさんの店が並んでいる。商業ビルの中のような雰囲気だ。
 左に写っている赤いのが、セントレアのマスコットキャラクター「フー」だ。謎の旅人という設定らしい。一般認知度がどれくらいあるのか知らないけど、いろいろとキャラクターグッズなどが売られている。

 去年の夏に、普段は立ち入ることができない特別撮影会が行われたらしい。今年はやらないのだろうか。もしやったら行ってみたい。
 一つ思ったのは、船に乗って海上から撮るというアイディアだ。しかし、名古屋港と結ぶ船を運航していたセラヴィ観光汽船が、親会社のセラヴィホールディングスの自己破産によって、イタリア村とともにつぶれ去ってしまい、船便が運休中のままになっている。名鉄は後を引き継ぐ気がないようだ。
 どうしても船から撮りたければ、三重県の津や松阪から出ている船便に乗るしかない。向こうに遊びに行った帰りに、船で帰って来つつ海上から飛行機を撮るというのはアリかもしれない。夕焼け時間に合わせて乗り込めば、空港や知多の海岸からは撮れない写真が撮れそうだ。
 なんにしても、もう一度行って、再挑戦したい。だいぶ勝手は分かったし、今度は警備員さんに訪ねなくても自力でスカイデッキに行ける。
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