ひとり動物園デビューで見えた幸福の連鎖反応

動物園(Zoo)
キリン前のカップル+ちびっこ

FUJIFILM FinePix S1 Pro+TAMRON 28-200mm XR(f3.8-5.6), f5.6, 1/400s(絞り優先)


 ふと思い立って東山動物園へ行ってきた。何年ぶりだろう。併設の東山植物園は去年行ったけど、動物園の方は5年ぶりくらいだろうか。平日の夕方となると、さすがに客層は限られている。小さな子供を連れたお母さん、その祖父母、学生のカップルなどがほどんどだ。ごく少数だけど、ひとりで来てる男の人や女の子もいた。そういえば私も今日がひとり動物園デビューだ。ふたり連れの女の子も意外と多かったのは少し驚いた。
 植物園と両方入れて500円は安い。東山のスカイタワーとのセットでも800円だ。家から車で20分の近さなんだからもっと行きたいという思いはあるのだけど、4時半に閉まってしまうのでなかなか行く機会がない。せめて夏だけでも6時くらいまでやってくれないだろうか。

 東山動物園ができたのは昭和12年。それ以前は鶴舞公園にあった。更にさかのぼると、明治23年に中区前津町で今泉七五郎氏という動物好きで変わり者のおじさん(?)が「浪越教育動物園」というのを作って公開していたのが始まりだ。
 東山動物園は2回の引っ越しを経て今に至っている。その間には戦争の悲しい歴史もあった。終戦のときはゾウ2頭以外すべての動物が姿を消している。戦争の被害者はこんなところにまで及んでいたのだ。
 戦後少しずつ動物の数も増え、昭和20年代終わりには戦前の規模にまで回復し、その後は社会の安定、高度経済成長とともに動物園も成長を続けていくことになる。一番活気があったのは昭和30年代だろう。40年代以降はレジャーの多様化で、動物園そのものが勢いを失っていった。
 これまでに多くのスター動物が生まれた。戦争を生き延びることができた2頭のゾウ、エルドとマカニー。芸をするゴリラのゴン太。初めて日本にコアラがやってきたのもここ東山動物園だった。当時はものすごい人気で長蛇の列ができたものだ。カバの重吉や、雄ライオンのライなど、見たことはなくてもテレビなどで知っている動物も多い。

 そんな歴史やドラマを持つ東山動物園の今はどうかといえば、今日行ってみた印象としては少しさびれてるかなというものだった。何しろ古い。施設もそうだけど、見せ方とか、動物の配置とか、全体に渡って現代的ではない。これは動物園という性格上、そう簡単にいじれるものではなから仕方がないといえばそうなのだろうけど、そろそろ全面的なリニューアルが必要な時期に来ているのは確かだ。大した目玉動物がいない旭川動物園が大成功を収めてるという事実がある以上、古さは言い訳にはならない。今でも上野動物園に続いて第二位の入場者数を誇る全国でもトップクラスの動物園なのだから(旭川動物園に抜かれて三位になったかも)、このままではもったいない。広いし、安いし、コアラや孫悟空のモデルになったキンシコウなどの目玉動物もいる。世界のメダカ館だってある。もっともっと可能性はあるはずだ。実際、リニューアルの話も出てるようなので期待したい。
 改装するときは、ぜひ写真を撮りやすいように工夫して欲しいところだ。網や檻は極力やめてもらって、ガラスにしてももっと透明度の高いものにして欲しい。そういう垣根がなくて済むならそれに越したことはない。今は昔と違ってほとんどの人がなんらかのカメラを持ってる時代だし、若いお母さんだって一眼レフを持っているのだ。珍しい動物をただ見るだけで満足してる時代は終わった。動物園は写真を撮ってなんぼだと個人的には思う。様々な工夫を凝らして、写真撮影に特化した動物園というのを売りにすれば話題にもなるはずだ。

 写真のアミメキリンについても書こうと思ったけど、また長くなったので今度にする。今日はたくさん動物の写真を撮ってきたから、しばらく動物ネタが続くことになる。動物だけでも2ヶ月くらい持ちそうだ。って、それは飽きそうだから、適当に他のことも混ぜないと。
 昔から動物園というのはあまり好きな場所じゃなかった。それは、東山動物園の池のボートにカップルで乗ると別れる、という名古屋の伝説を恐れたわけではない(実際それは当たってしまったのだけど)。狭いところに閉じこめられている動物を見るとかわいそうに思えたからだ。
 でもそれは動物園の一面でしかない。確かにそういう面もあるけど、動物園はそれだけではない。たとえるなら、人が生き物の肉を食べて生きているのに似ているかもしれない。動物園の動物たちが人間に与えてくれるものは小さくない。単純に感動とか楽しさとかだけじゃなく、見て感じて考えるきっかけを与えてくれる場所としての価値がある。動物たちに対してありがたい、ありがとうという気持ちを持つことができれば、動物園というのはとても幸せな空間となる。動物を見て喜ぶ子供、その子供の姿を見て嬉しそうにしてる両親や祖父母、無邪気に感動してる女の子と少し照れている男の子。そんな幸福の連鎖反応があり、そこに悪意はない。
 少し心が疲れたときなんかに行くのもいい。動物たちの目を見て、不幸を共感することで慰められるということもあるかもしれない。

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コメント
  • 2006/03/10 09:43
    お久しぶりです
    ときどき名古屋のほうに遊びに行きます。東山動物園は大きくていいとは聞きながら行ったことはまだありません。僕が小さかったころは、週末になると動物園に連れて行ってもらったものです。でも、現在の事もたちは行くところも遊ぶものもたくさんあって、動物園には行かなくなってきているようですね。悲しいものです。ぼくは、学生のとき生物学科だったためたくさんの動物や生き物に触れてきました。アメリカでは、動物園で飼育のボランティアもしていたくらい動物好きです。だから、今の動物園の環境にはちょっと不満があります。もっとがんばって旭川の動物園のように入場者数を増やしていって、もっと子供たちに動物と触れ合う機会を与えてあげたいです。
  • 旭川ができるなら東山も
    2006/03/11 02:53
    ★tosummer11さん

     こんにちは。
     名古屋にも遊びに来るんだったら、東山動物園はオススメですよ。いや、あまり手放しでオススメはできなんだけど。(^^;
     tosummer11さんが、そんなに動物に関わりが深いとは思いませんでした。生物学科というのも意外ですー。デザイン関係かと勝手に思ってました。

     動物園は近年さびれる一方で、改装もままならないところが多いんでしょうね。飼育員や関係者の人たちも、きっと動物たちのことを思って心痛めてるんだろうなぁ。
     そんな中、旭川動物園の成功には勇気づけられたでしょうね。見せ方を工夫さえすれば人はちゃんと見に行くってのことが証明されましたからね。あんなところに全国から人が行くんだから、話題性だけじゃなく、実際に見て楽しいんだろうなぁ。私も行きたい。
     今でも子供たちは遠足や社会見学でたくさん動物園を訪れてるんだろうし、せっかく行くなら楽しい方がいいに決まってますもんね。
     東山動物園にも期待したいところです。
  • オリの中
    2006/03/13 00:37
    動物園って、子供のころからなんとなく
    狭くてかわいそうなところだなぁと思っていました。
    草原で暮らしていたらもっと幸せなんだろうなとか、そんなことばかり
    考えて暮らしていた、大人じみた自分は幸せだったのかと聞かれると微妙です^^;

    飼育係のひとに手厚くまもられて、
    園に生きる動物達が幸せでありますように☆
  • 痛みは優しさ
    2006/03/13 03:43
    ★睡蓮さん

     こんにちは。
     檻の中の動物たちをかわしそうと思うのは、私も睡蓮さんと同じでしたー。心優しき私たち?(笑)
     でも、それだけじゃないよさが動物園にはあるのかもと思うようになってからは、気の毒な気持ちはありつつも、動物園が好きになったのです。
     見せ物っていうとマイナスな印象になるけど、保護、研究ってのも動物園の使命だし、生きてることが誰かの役に立つなら、あそこの動物たちにとっても思うほど悪いことじゃないのかもしれない。
     動物の絶対的な本能は種の保存ですしね。
     とはいえ、それならおまえ入っておけって言われたやっぱりイヤです(笑)。
     動物園の動物を見て、まったくかわいそうと思わないとしたら、むしろそっちの方がよくないことなのかもとも思うのでした。
  • 檻もガラスもない
    2008/05/30 04:50
    > 網や檻は極力やめてもらって、ガラスにしてももっと透明度の高いものにして

    v-14 硝子は保守管理がたいへんそうですから、難しいのでしょうね。
    何か投げつけられれば割れたり、硬い硝子でも、傷がつけばすべて交換するほかなさそうですし、汚れれば掃除が必要になりますから。

    ところで、新聞報道によると、今年 2008 年の秋に、群馬県の桐生が岡動物園 (無料) で、檻もガラスもないクモザルの新展示舎がつくられるそうです。
    北海道の旭山動物園で好評の 「行動展示」 にならったもので、極端に水を怖がるクモザルの習性を利用して、周囲を堀で囲むそうです。
  • 理想の動物園
    2008/05/31 03:29
    ★てつさん

     こんにちは。

     動物園のガラス張りは、工事費だけでも大変だから、なかなか実現しないでしょうね。
     水族館とはまた事情も違うし。
     東山動物園では、ライオンを近くから見るためにワーオチューブという強化ガラスの通路ができたんですが、あれなどはいい試みだと思います。
     理想は動物が生活する場がまずあって、その中に人間が訪問客として入らせてもらうという動物園かもしれないですね。
     犬山のモンキーパークは、ややそれに近いものがあるし、サファリパークがそうですね。
     動物じゃなく鳥では、花鳥園がそのスタイルです。

     旭山のマネをすればいいってもんじゃないと思うけど、あれで全国の動物園が考え始めたってのはいいことですね。
     やっぱり、見ていて動物がかわいそうに感じない動物園がいいなぁ。
  • 変なおじさん、今泉七五郎(笑)
    2012/06/30 12:30
    こんにちは!
    母親から聞いて今泉七五郎について調べていましたらここにお邪魔しました。
    母方のおばあちゃんのお父さんが今泉七五郎だったそうで…
    半信半疑で調べたら…本当居てビックリしました(゚o゚;
  • 東山動物園の前身
    2012/06/30 20:33
    >レイさん

     こんにちは。
     コメントありがとうございます。
     今泉七五郎氏のお身内の方とお話することになるとは思いませんでした。
     東山動物園のサイトにもちょっと詳しく歴史が載ってます。↓
     http://www.higashiyama.city.nagoya.jp/01_annai/01_04gaiyo/01_04-01history/01_04-01_01/01_04-01_01_01.html
     東山動物園は、近所なので、しょっちゅう行ってます。
     最近いろいろリニューアルして良くなりました。
     また写真を載せますので、遊びに来てくださいね。
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