自分の身を守るのでいっぱいいっぱいの東尋坊 <第3回>

観光地(Tourist spot)
東尋坊-1

PENTAX K10D+DA 16-45mm f4 / DA 55-300mm f4-5.8



 東尋坊は自殺の名所だから行きたくない、などと考えている人がけっこういるかもしれない。実は私もちょっとそんな気持ちがあった。少なくとも、体調が悪いときに行くのはやめておこうと思っていた。今回行く気になったのは、気力、体力ともに問題ないと判断したからだ。
 実際に行ってみると、東尋坊は拍子抜けするくらいあっけらかんとした陽気な観光地だった。私が鈍いだけというのはあるにしても、まったく陰気さのようなものは感じられなかった。というよりも、高所恐怖症との戦いの方が厳しくて、霊がどうとかこうとかいう気持ちの余裕がなかったとも言える。写真を撮りながらもかなりの及び腰になっていたと思う。
 東尋坊も春になってしまえば荒っぽさは影を潜め、岩に打ちつける波も弱々しい。東映映画のオープニングのような光景を見ることはできない。
 せっかく訪れた東尋坊ではあったけど、真冬に訪れなければその真の姿を見たとは言えないのではないかと思った。冬の夕暮れ時などに行けば、期待以上のおどろおどろしい雰囲気に満ちているのかもしれない。

 今から1200~1300年ほど前に起きた火山活動によって、マグマがぐぐぐっと地中から盛り上がってきて、それが五角形、六角形の形で固まって(柱状節理)、長い年月の間に風や波によって削られて、現在の地形が出来上がった。
 これらの岩は、輝石安山岩と呼ばれるもので、非常に固いという特徴を持っている。溶岩が地表で固まった石というと軽石みたいなのを想像するけど、これはそう簡単に削れそうにない。この固さを削って砕くというのだから、日本海のすごさが知れる。
 こういう光景は世界的にも貴重で、他には北朝鮮の金剛山(クムガンさん)とノルウェーの西海岸にしかないそうだ。
 約1キロに渡って続く断崖絶壁は、国の名勝および天然記念物に指定されている。
 東尋坊の名前の由来はこうだ。
 平泉寺(勝山市)にものすごく暴れん坊の東尋坊という僧がいた。平安時代当時、平泉寺には数千人からの僧侶がいて、その中の誰もがいさめることができず、好き放題にしていた東尋坊をみんなは持て余していた。
 ある日、僧侶たちは相談をして、東尋坊を亡き者にしようと計画を立てる。三国見物と称して東尋坊を誘い出し、この岩場でみんなして酒盛りを始めた。いい頃合いに酔っぱらったところを見計らって、決行犯と決められていた真柄覚念が思い切り東尋坊を海に突き落とした。あーれー、と岩場を落下していく東尋坊。しかし、タダで死んでなるものかと数人を捕まえて道連れとし、海に落ちたあと念力で真柄覚念まで引きずり込んだ。
 それからというもの、四十九日の間、この海は荒れ狂ったという。更に毎年、この時期になると海が荒れて漁ができずに困った漁師が、東光寺の和尚さんに相談して、念仏を唱えてもらってやっと海が静まったのだとか。
 どこまでが事実で、どこから伝説のお話なのかよく分からないけど、1182年の4月5日という日付まで伝わっていることからして、案外事実なのかもしれない。東尋坊と真柄覚念は恋敵で、真柄覚念が一方的に東尋坊を騙して突き落としたという説もある。
 私が東尋坊を訪れたのは、4月9日だった。行ったときはまだこのエピソードを知らない。

東尋坊-2

 中央の細長い岩は、屏風岩と名づけられている。ローソク岩以上に似ていないと思うけど、どうだろう。

東尋坊-3

 奇岩好きにはたまらない光景だ。これまでの人生で自分は奇岩好きだと公言してはばからない人間に出会ったことはないけど、たぶん世の中には私が思う以上に奇岩好きの人がたくさんいるのだと思う。
 私は、うーん、ちょっと、これは萌え要素じゃない。

東尋坊-4

 こんな細く入り組んだ入り江でも、水の透明度は素晴らしい。
 東尋坊は全体として清潔感のあるところで、ゴミとかも落ちていないし、海もきれいだし、フナムシとかもいない。そういう点ではとても好印象だった。

東尋坊-5

 千畳敷と呼ばれる岩場。
 軽い高所恐怖症の私は、これ以上進むのがためらわれた。火曜サスペンスドラマのラストシーンの舞台にもなるところらしい。
 私はここまで追い詰められてしまったら、やっていないことでも白状してしまいそうだ。

東尋坊-6

 遊覧船がひっきりなしに出ていた。スピーカーからも盛んに呼び込みのアナウンスが流れる。
 海面から見上げる奇岩風景もまた違った魅力がありそうだったのだけど、帰りのバスの時間があったので、乗れなかった。30分で1,200円。 

東尋坊-7

 橋でつながった雄島(おしま)が見えている。
 周囲約2キロ、越前海岸では一番大きな島で、昔から地元の人は神の島と呼んでいるそうだ。島には大湊神社がある。
 東尋坊から1キロちょっと離れているということで、あちらも行けずじまいだった。
 半日くらい時間があれば、三国駅でレンタサイクルを借りて、町並みや東尋坊、雄島を巡りつつ、その向こうの越前松島まで足を伸ばしてみるのもよさそうだ。

東尋坊-8

 勇気のある人は、断崖絶壁のぎりぎりまで行って下をのぞき込んでいる。
 写真では高さやスケール感があまり伝わらないかもしれない。海面までは25メートルほどあって、ビルの8階くらいに相当するから、やっぱり怖い。

東尋坊-9

 引いて広く撮るとこんな感じ。

東尋坊-10

 高い断崖と、深い青緑色の海。
 過保護すぎるくらい安全に気を遣う日本の観光地の中で、これほど安全対策をしていないところは珍しいんじゃないだろうか。危険なの重々承知だけど、自分でなんとかしてくださいという放置ぶり。ロープなんか張っていたらすごく白けてしまうから、これが本来の姿なのだろうけど、ここは本気で自分で自分の身を守らないと危ない。死ぬつもりなど一切なくても、足を滑らせたら助からないと思われる。

東尋坊-11

 このあたりの岩場が、東尋坊のクライマックスで、一番の見所だ。
 あらためて写真で見てみると、他にはちょっとない奇岩風景だということを再認識する。現地に立っていると、すぐに見慣れた光景になって、あまり面白みを感じないのだけど。

東尋坊-12

 断崖の先端に立つ男たち。
 海の模様を見ると、流れが複雑に入り組んでいるのが見て取れる。
 深いところでは水深が17メートルにもなるそうだ。

東尋坊-13

 少し離れた海岸に目をやると、東尋坊とはまた違った断崖風景となっていることが分かる。どうして東尋坊だけがこんな景観になったのか、不思議だ。

東尋坊-14

 舞台のようになっている広場。
 ここは西向きだから、沈む夕陽がきれいだろう。

東尋坊-15

 道路沿いの入口から東尋坊までは、典型的なおみやげ物屋ストリートとなっている。昭和の観光地風情が色濃い。ペナントとかキーホルダーがまだ売ってそうだ。金メッキの東尋坊模型とかもあるだろうか。

東尋坊-16

 東尋坊タワーは、時間があっても登らなかった。遠くの海や山はよく見えるにしても、肝心の東尋坊は離れてスケールダウンしてしまうだけだ。

 東尋坊を見たことですっかり満足してしまったのだけど、福井の旅はこれでまだ半分だ。ここから三国に引き返して、そのあと福井の街を見ながら福井城跡へ行くというコースだった。
 ということで、次回の三国湊編につづく。
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