
冬の勢いに負けて出鼻をくじかれる格好となった今年の春も、ここへ来てようやく足取りを早めて遅れを取り戻しつつある。なかなか咲かなかった梅も花を開き始めた。
今日3月6日は二十四節気(にじゅうしせっき)のひとつ啓蟄(けいちつ)にあたる。地面で寒さをしのいでいた虫たちが暖かさに誘われて起き出してくる時期ということでそう呼ばれる。啓は「ひらく」、蟄は「土の中で冬ごもりしている虫」のこと。圭子の夢は夜ひらく。そんな歌があったっけ。 ♪十五、十六、十七と 私の人生暗かった 過去はどんなに暗くとも 夢は夜ひらく♪ どんな歌詞だ。
二十四節気を全部言えるのは相当マニアックな人だと思う。東海道本線の駅名を全部言える人みたいに。でも半分くらいは常識として知っておいてもマニアとは呼ばれないので覚えておいてもいい。立春、春分、立夏、夏至、大暑、立秋、秋分、立冬、大雪、冬至、大寒くらいは(残りは、雨水、啓蟄、清明、穀雨、小満、芒種、小暑、処暑、白露、寒露、霜降、小雪、小寒)。ネプリーグに出題されそうだから、あれに出たときに備えて私も暗記しておこう(いつ出るつもりだ)。
名古屋の梅はこれからだけど、南の方はもう終わりかけてるんだろうか。今年は後ろから迫ってきている桜に譲らなくてはいけないから、咲いたとたんに駆け足になるかもしれない。うかうかしてると盛りを逃してしまいそうだから気をつけよう。
愛知県は残念なことにこれといった梅の名所がない。全国的にそうなのだろうか。どこにでも咲いているけど、名所と呼ばれるような場所は案外少ない気もする。天満宮は別にして、知ってるところといえば、水戸の偕楽園や東京の湯島天神、和歌山県の南部梅林くらいだ。そういえば和歌山県は名所と呼ばれるところが多いけど、何か理由があるんだろうか。名古屋では天白の農業センターのしだれ梅が有名だ。あとは、東海市の佐布里池かそれくらいしか知らない。佐布里池は去年行けなかったから今年は行こうと思っている。
梅といっても、これまたたくさんの種類がある。一般的に私たちが見てるのは観賞用の花梅(はなうめ)と呼ばれるものだ。それとは他に果樹として栽培される実梅(みうめ)もある。登録されてる品種だけでも400種もあるとか。言われてみればたまにかわった梅も見る。色も白や赤だけじゃなくピンク色もある。けど、品種まで分かるようになりたいとは思わないから、梅は梅でいい。
ひとつ覚えておきたい豆知識としては、野生の系統のものを野梅系(ヤバイケイ)と呼ぶことだ。なんて今どきなネーミングなんだ。もし、ギャル系の女子高生が梅を見ながら、「これ、ヤバイケイじゃない?」と言ってるのを耳にしても、うかつに笑ってはいけない。ホントにヤバイケイかもしれないから。
梅の原産地は中国と言われている。それを日本に伝えたのが、いまだに女の人と思い込んでいる人がけっこういる遣唐使の小野妹子だ。なんで男なのに妹子なんだ! と私に言われても困る。たいたい響きからしてどうなんだ、いもこ、って。そんな名前をバネに頑張ったのか、それとも自分では気に入っているんだろうか。
それはともかくとして、今から約1,500年前にやって来た梅を日本人は愛した。かつては「花」といえば桜のことではなく梅を指した。万葉集では桜の3倍も詠われている。今のシンガーはなかなか梅のことを歌にはしない。森山直太朗の「うめ」じゃ売れそうにないものな。う~め~よ~ う~め~よ~♪ では、童謡みたいだし、なんだか、生めよ増やせよ、みたいでもある。梅の復権の日は遠い?
梅干しが一般に食べられるようになったのは江戸時代からで、それまでは薬用だったりおやつだったりしたそうだ。戦国時代には戦場でも食べられていたとか。
江戸時代には冬が近づくと梅干し売りが回ってきて、それが季節の風物詩になっていたという。
明治時代になると病気の予防などの意味合いが強くなり、今に至っている。
私は梅干しを食べるときは、梅干し食べてスッパマンのことをよく思い出す。これは世代的に仕方がない条件反射と言えよう。
啓蟄とはいえ、虫たちが活発に活動するのはもう少し先になる。例年名古屋では3月27日あたりにモンシロチョウが観測されるそうだ。そういえばもう半年くらい蝶の姿を見てなかったんだった。平均10度を超えると虫たちも本格的に活動を再開すると、お天気の寺尾くんがテレビで言っていた。
春は近づいてからがなかなか遠い。すぐそこにある気がして手を伸ばすけど届かない。春には楽しみが多いから、そんなふうに感じるのだろうか。梅に桜に野草に昆虫、これからは撮るものに事欠かない。またたくさんの新たな出会いがあるといいな。