三度目の藤前干潟は今日も海の底だった

名古屋(Nagoya)
満潮藤前干潟

FUJIFILM FinePix S1 Pro+TAMRON 28-300mm(f3.8-6.3), f6.7, 1/350s(絞り優先)


 満潮の 藤前干潟 ただの海

 今日は川柳から入ってみた。
 藤前干潟(ふじまえひがた)へ行ったのは今回で三度目となる。そのいずれも満潮という運のなさ。毎回どこかへ行ったついでに寄ってるだけだから、そう都合良く干潮時に当たるわけではないにしても、三回行けば一回くらい干潮でもいいじゃないかと思うのが人情だ。おお、藤前干潟よ、どうしておまえは満潮なんだ?
 干潟の定義、それは内湾の河口に広がる遠浅の海のことをいう。干潮になると海底が顔を出し、カニやゴカイがはい出してきてエサを探し、それらを狙って鳥たちがやってくる。そしてその鳥を狙ってカメラを持った人々が集まってくるという自然のサイクル。しかし、満潮時の干潟でカメラを手に持って、ヌーボーとしてる人間は私だけであった。自然のサイクルからはみ出したやつ。

 愛知県民なら記憶に残っているだろう、何年か前、ここはゴミ処理場になる予定だった。しかし、市民の強い反対運動が起こり、国まで巻き込んだ騒動を経て、最終的には埋め立て中止となり、今に至っている。自然を守るという理由だったのだけど、このへんの経緯は万博と海上の森のケースと似ている。
 そんなゴタゴタはあったものの、自然環境を守ることの大切さを考える上でいいきっかけになったと捉えたい。
 現在名古屋市は日本一ゴミ分別が厳しい市となっている。それはこの藤前干潟を守るためだったということを知っている人は案外少ないかもしれない。それまで名古屋(愛知県)はゴミに関してあまりにもルーズすぎて、処理場がパンク寸前だった。それでここにあらたなゴミ処理場建設の計画が持ち上がったわけだけど、作れなくなったからには分別してゴミを減らすしかないということで始められたのが新しい分別システムだった。
 全国的にだんだん厳しくなってきてるようだけど、名古屋がその先駆けだったんじゃないかと思う。出すゴミは13種類に分けなくてはいけない。プラスチック容器包装、紙製容器包装、ペットボトル、空きびん、空き缶、紙パック、新聞・雑誌類、可燃ごみ、不燃ごみ、スプレー缶、粗大ごみ、リサイクル家電製品、リサイクル家庭用パソコン、と。
 始まったのは2000年で、最初は大変だった。どれがどのゴミになるかさっぱり分からず、ゴミ置き場には指導者のような人が見張っていて間違えてると説教を食らったりした。違う日に違うゴミを出すと持っていってくれなかったり。あれから6年経って、確かに面倒ではあるけど、もう慣れた。愛・地球博でもたくさんのゴミ箱が置かれていて分別してたのを覚えてる人もいるだろう。
 おかげで名古屋はピーク時の3分の2くらいまでゴミが減ったというから効果はしっかりと表れている。やればできる。多少面倒でもこうやって干潟を守っていると思えばなんてことはない(と思えない人もいるだろうけど)。

 守られることが決まった藤前干潟は、2002年ラムサール条約登録地になった(水鳥にとって貴重な生息地である湿地を開発から守るための条約で、イランの都市ラムサールで締結されたのでそう呼ばれる)。これでひとまずは安心だ。現在ここは日本最大の渡り鳥飛来地となっている。面積250ヘクタールの干潟には、春と秋にたくさんのシギやチドリたちが立ち寄って、栄養補給をしていく。長い渡りに備えて。一番多かったときは1万羽以上がやって来たという。
 一年を通してもさまざな鳥がここで暮らしている。私が行ったときは、写真のように遠くの方でカモっぽいやつらがプカプカ浮いていた。って、遠っ! あんなところはフィールドスコープでもなければまったく届かない。大声で叫んでも1羽たりとも逃げ出さないほどの距離。満潮のバカヤローと叫びたかった。

 愛知県には海上の森と藤前干潟がある。これは県民として喜ばしいことだし、日頃から積極的に関わって友好関係を築きたいところだ。愛・地球博の記憶とともに、今後とも守っていかなければならない場所でもある。
 ただ、藤前干潟はもう少しまわりの環境を整備してもいいんじゃないかと思う。行ってみると分かるけど、完全な工業地帯で、観光気分で行くと自分がひどく場違いなところに迷い込んでいるように感じられて不安になる。案内看板もないし、歓迎ムードもない。それこそ満潮時なら普通の海辺の工業地帯としか思えず、初めて訪れた人はそのまま帰ってしまう可能性がある。堤防沿いの土地も遊んでるし、公園や駐車場を作ったりするスペースは充分ある。そのへんは環境破壊にはつながらないだろうから、もう少し歓迎ムードを作っていったらどうだろう。学校の野外学習にもいい場所なんだし。
 これから行こうとしている人へ。
 なんといっても潮見表を調べて、干潮のときに行ってください。満潮のときに行っても、楽しくもなんともないです。干潟に入るつもりなら、裸足覚悟で。サンダルは埋まって歩けず、脱げたやつが行方不明になります。
 私も今度こそ干潮のときに行ってみたい。

 カメラ持つ 男がひとり 工業地帯
 字余り……。

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コメント
  • ごみの分別競争?
    2006/03/05 03:31
    鹿児島も結構ゴミの分別は厳しいですよ。
    鹿児島市のごみ出しカレンダーを見てみると…

    もやせるごみ/もやせないごみ/新聞・チラシ/段ボール/紙箱・包装紙等/雑誌類/紙パック/衣類/電球・蛍光灯/乾電池/缶・びん/ペットボトル/プラスチック容器類/粗大ごみ

    全14種類。名古屋に勝った?(笑)
    いつから始めたかは覚えていませんが、年々分別の種類が細分化されてます。
    あ、桜島の噴煙用に降灰袋というのもあるから15種類だ!
  • いつの間にか負けていた!?
    2006/03/05 03:43
    ★K-Hyodoさん

     こんにちは。
     って、こんな深夜だから、こんばんは。(^^;

     鹿児島、いつの間にそんなに分別を!?
     名古屋、知らない間に負けてましたね(笑)。
     電球・蛍光灯や乾電池まで別扱いとは、やりますね、鹿児島。確かに乾電池は昔からリサイクルって言われてたから分かるけど、電球を別にしてどうするんだろう。何かに活用できるのかな。
     だんだん全国的に分別が厳しくなってきたけど、これはけっこういいことだなぁと思ってます。昔なんて、全部一緒くたでしたもんね。(^^;

     それにしても、降灰袋まであるんなんてー。こりゃ完敗だ(笑)。
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