時間の経過が生み出した明治村の静けさ <第二回>

施設/公園(Park)
明治村2-1

PENTAX K10D+PENTAX-M 50mm f1.4



 今日はちょっと時間不足につき、明治村の写真を並べて簡単更新としたい。
 季節感があまり関係ない明治村の写真は、こういうときに役立ってくれる。ネタに困ったときは、明治村か動物園に限る。
 今日の明治村写真のテーマは、時間と静けさ。それと、光と影だ。
 明治村の建物全体に言えることなのだけど、使われていたときからかなり時間が経過して、かつての温もりや生活感みたいなものが希薄なり、眠りについたような静けさをたたえている。観光客が大勢訪れても、そこに温かみのようなものを加えることはできない。
 だから、明治村の写真は静かな雰囲気になりがちだ。撮り手の私も感情を込めずに、ありのままを撮ればいいのだと思う。感傷は必要ない。

明治村2-2

 石川啄木が下宿していた家の床屋の店内。啄木は二階に間借りして、新婚の二年間をこの家で過ごしている。
 この床屋の椅子にも座っただろうか。

明治村2-3

 聖ザビエル天主堂も、建物はもちろん使われていた本物で、内部の雰囲気も悪くないのだけど、現役で使われている教会や大聖堂などとは決定的に空気感が違う。人の祈りが生み出す濃密な空気は、もう抜けてしまって残っていない。
 それは、現役の教会に行ってみるとはっきり分かると思う。名古屋なら布池教会や南山教会は誰でも入れるところなので、一度行ってみることをおすすめしたい。

明治村2-4

 のれんから漏れ入る表の光。
 わずか布きれ一枚のことだけど、これだけで内と外とをはっきり区別している。日本人の知恵が生んだ発明だ。

明治村2-5

 夏目漱石や森鴎外が住んでいた借家の居間。鴎外は明治23年から一年間、漱石は明治36年から3年間、この家を借りて生活していた。
 二人もお茶を飲みながら、庭を眺めたりしたことだろう。
 縁側には猫の置物が置いてある。吾輩は猫であるのモデルとなった猫だ。
 庭には漱石が好きだったボケの木が植わっている。

明治村2-6

 近頃めっきり見なくなった下駄。
 私は車に積んでいるので、履こうと思えばいつでも履ける。
 子供の頃は、店に下駄履きの方入場お断りみたいな貼り紙が貼られていた。気づいたらそういう貼り紙も見なくなっていた。下駄を普段履きしてる人もいない。

明治村2-7

 昔は行燈だったから、室内もずいぶん暗かったことだろう。まともに本も読めない。
 こういう電球色の方が落ち着くことに気づいて、蛍光灯よりも電球で間接照明にする人も増えているようだ。かつて蛍光灯の明るい白さは豊かさや便利さの象徴のようなものだったけど、白すぎて温かみに欠ける。

明治村2-8

 白いレースのカーテンを通す柔らかい光は優しい。
 光の種類によって人の気持ちに及ぼす影響は違ってくる。

明治村2-10

 洋館の廊下。板敷きの床が歩くたびにギシギシきしみ音を発する。
 天井は高く、廊下の大きな窓がたっぷりの光を取り込む。こういう設計思想に明治の日本人は驚いたことだろう。日本家屋にはなかった発想だから。

明治村2-11

 最後に少しだけ季節感のある写真を。
 今となっては季節外れとなったヒガンバナがわずかに咲いていた。波打つガラスを通して見る景色は、時間さえも遡って見せるようだ。

 ネタと時間が足りないときは、明治村シリーズを挟んでいくことにしよう。
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コメント
  • 2009/10/28 22:37
    うわぁ・・詩人ですねぇ。ぐっと沁みてきました。

    >使われていたときからかなり時間が経過して、かつての温もりや生活感
    >みたいなものが希薄なり、眠りについたような静けさをたたえている。

    なるほど、あそこで感ずる落着きと言うか、寺社に通ずる感覚はそうしたことから来ているのですね。
    多くの過去の人々が生活し或いは仕事をした場所でその思い、念は残っているのかもしれないけど、具体的ではない。

    次に明治村に行く時にはそんなことを考えながら歩いてみます、勉強になりました。
  • 沈んだ記憶
    2009/10/29 03:41
    ★moumingさん

     こんにちは。
     住居は、やっぱり人が住んでいるのといないのとでは、空気感が違いますもんね。
     教会でも、現在進行形で使われているところは、どんなに静かでも息づかいを感じるし。
     ただ、明治村の場合、空の器だけってわけではなくて、長い記憶が沈潜していて、それが受け継がれているから、普通の空き家とは違う、独特の感じがあるのも確かですね。
     しかし、明治村もけっこう行って、新鮮味がなくなりました。(^^;
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