白髭の乙女に会うため明智の森を訪ねる

森/山(Forest/Mountain)
明智の森-1

PENTAX K10D+TAMRON SP 90mm f2.8



 明智の森に咲いているというシラヒゲソウを一度見てみたいとずっと思っていた。
 明智といえば、岐阜県の恵那市で、大正村があるところの近くだ。うちからはなかなかに遠く、気軽にちょっと行きたくなるような距離ではない。いつかついでがあればと考えていて、この間、そのついでの機会が巡ってきた。恵那の農村景観日本一と坂折の棚田を見に行った日だ。あれは9月14日だから、もう2週間近く前のことになる。
 ややタイムリー性を欠いた野草情報になってしまったけど、北陸シリーズが終わったところで、ようやく紹介できる日が来た。
 明智の森は、明智鉄道の明智駅の北西約1キロほどのところにある。yahoo!地図などには載っていないようなところだから、場所が少し分かりづらいかもしれない。
 名古屋方面から行った場合、363号線を東に向かい、明智の手前の大栗という交差点を左に入り、道なりにしばらく進むと右手に案内が出ている。大正村の方から行こうとすると、かえって分かりづらい。

明智の森-2

 シラヒゲソウは漢字で書くと白髭草で、文字通り白い髭のような姿から名づけられている。
 しかし、名前に似合わず、繊細で可憐な白い妖精のような花だ。
 一度見たら忘れがたい印象を残すと多くの人が言うのも納得できる。
 大きさは2センチくらいだろうか。バラ目ユキノシタ科に属していて、特別珍しい種類の植物でもない。
 ただ、シラヒゲソウが咲いている場所はかなり限られている。基本的には山に近い湿地帯に咲いている。数はあまり多くない。
 海上の森にはたぶん咲いていないと思う。他の場所でも、私は今まで一度も見たことがない。明智の森で見たのが初めてだ。
 明智の森では確実に咲いていることが分かっているから、明智の森といえばシラヒゲソウというように、明智の森の代名詞のようにもなっている。

明智の森-3

 明智の森では、なんだかありふれた野草のようにどさっと咲いている。あまりにも咲いているからありがたみが薄れるくらいだ。
 どうしてここだけこんなに咲いているのかは知らない。よほどシラヒゲソウの生育に適していたのだろうか。
 森の南側の川沿いや、池の周囲が群生ポイントだ。
 8月から9月にかけての花だから、今はもうシーズン終盤だろうと思う。今年見るなら急いだ方がよさそうだ。

明智の森-4

 サワギキョウは何度も見ているから特に嬉しいということもないのだけど、これも日常の中で出会うような花ではないから、一般的な基準では珍しい花に入るだろう。
 あるいは、今はもう、秋の七草のキキョウの方が珍しい花となってしまったかもしれない。キキョウを撮ろうとなったとき、どこへ行けば見られるだろうと考えて、確実に見られる場所が思い浮かばない。

明智の森-5

 ウメバチソウかと思って、何の気なしに撮っておいた一枚だったのだけど、帰ってきて写真を見たらゲンノショウコだった。間違えた。ウメバチソウも咲いていたはずだから、ちゃんと確認して撮ればよかった。
 花の隣のとんがり帽子で気づかないといけない。これはゲンノショウコの実の部分だ。
 ウメバチソウもユキノシタ科の花で、シラヒゲソウのヒゲがないやつと言えなくもない。

明智の森-6

 ツルリンドウも初めて見た。
 鮮やかなブルーのハルリンドウなんかに比べると、ぐっと地味だ。ツルで伸びて巻き付いているから、湿地のリンドウとは違う種類の花に見える。花の形自体は確かにリンドウだ。

明智の森-7

 見たことがあるようなないような。
 木に咲く花は、知らないものが多い。

明智の森-8

 何かの実。かじっても美味しそうじゃない。
 木の実は木の花以上に分からない。

明智の森-9

 あちこちでススキの穂が目につくようになってきた。
 これを見ると秋を思うけど、まだモワモワの綿が出てきていないから、秋本番じゃない。

明智の森-10

 自然界というのは不思議なものを作り出すもので、これは一体何なんだと思わせた。
 コケではなくシダ類だろうか。海草にも似ている。

明智の森-11

 派手なピンクの葉っぱから、オンブバッタが顔を出す。
 居心地のいい部屋を見つけたようだ。

明智の森-12

 至近距離でカマキリと目が合った。
 私がトンボとかだったら、捕まって食べられているところだ。
 人間やレンズを相手にしても、まるでひるむ様子を見せず、挑戦的な態度だった。

明智の森-13

 たいして広くもない森の中で道に迷った。シラヒゲソウを見るだけなら、こんな高台に出たりはしない。
 道を一本間違えて、南側へ行きすぎていたようだ。このあと森から出てしまい、そこにはお寺や民家があった。

明智の森-14

 森から出たところで、森とはまるで関係のない写真を撮る。
 コケの道と歴史を感じさせる石像が渋くて惹かれた。
 けど、こんなところをうろついている場合ではなかった。元来た道を引き返して、なんとか正しい道に復帰した。
 明智の森をあとにして、農村景観日本一と坂折の棚田風景を見に行った話は以前にもうした。
 ということで、恵那シリーズはこれで完結ということになる。
 時間があれば、恵那峡とか、岩村城とか、大正村も行きたかったのだけど、一日でそこまで回るのは無理がある。恵那方面は他にもいろいろ見所があるから、機会があればまた行ってみたいと思う。
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